目次

  1. 「不適切な買手による悪質なM&A」呼びかけの背景
    1. クロージング後に個人保証が解除されなかった
    2. 譲渡対価の分割払い・退職慰労金の後払いが履行されなかった
  2. M&A仲介をめぐる課題、営業手法やDMも
  3. 中小企業庁、中小M&Aガイドラインを改訂
    1. 仲介者・FAの手数料・提供業務に関する事項
    2. 広告・営業の禁止事項の明記
    3. 利益相反に係る禁止事項の具体化
    4. 最終契約後の当事者間のリスク事項について
    5. 譲り渡し側の経営者保証の扱いについて
    6. 不適切な事業者の排除について
  4. 中小M&Aガイドラインの限界も
  5. M&A仲介協会も「特定事業者リスト」運用へ
  6. 中小企業のM&Aトラブル相談先

 中小企業庁が注意を呼びかけるきっかけとなったのは、都内の投資会社による一連の悪質なM&A事例です。約30社の中小企業に対して不適切なM&Aを行ったとされており、朝日新聞デジタルの連載「M&A仲介の罠」では、2021年10月以降、10社を超えるM&A仲介業者を通じて約30社と買収などの契約を結び、一部の買収先は多額の現預金を持ち出され、資金繰りの悪化で給与や取引先代金の遅延、融資返済の延滞、税金や年金の未納が多発。少なくとも11社が営業を停止し、5社が倒産した様子を報じています。

 こうした事態に対し、中小企業庁の公式サイトは2024年8月30日、「M&Aにおける不適切な買手にご注意ください」と注意を呼び掛けました。

 とくに注意が必要なケースとして以下の2つがあるといいます。

  • 売手の財務状況が厳しく経営者保証の扱いが重要になる場合
  • クロージング時点では低額の譲渡対価でクロージングから一定期間後に相当程度の譲渡対価を支払うという条件を提示されている場合

 どういった事態に注意が必要かは以下で詳しく紹介します。

 クロージング後、売手経営者の個人保証について、売手から買手に何度依頼しても契約に基づいた移行がなされなかったといいます。その上で、買手が売手の現預金等の資産を回収したが、必要な事業資金の送金がなされず、売手は倒産。この結果、経営者保証が残っていた売手経営者が債務を負うこととなり、個人破産に至ってしまっています。

 M&Aの成立時点での譲渡対価は低額でしたが、成立後一定期間後に相当程度の退職慰労金が支払われる契約を結びました。しかし、契約に定める期日が訪れても退職慰労金が一向に支払われないといいます。

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