JR貨物のデータ改ざんで配送に遅延 順次運転再開も物流に影響
杉本崇
(最終更新:)
2024年9月11日、JR貨物の列車248本が運休し、物流各社で配送の遅延が起きました。7月に山陽線・新山口駅で起きた貨物列車の脱線事故を機に、JR貨物の貨物列車の車軸を取り付ける作業で少なくとも10年前から検査データの改ざんが行われていたことが発覚。JR貨物が検査結果データが基準値を超過していた輪軸を搭載した車両の運用を停止したためです。JR貨物は「安全が確認された列車から順次運転を再開」していると発表しましたが、遅配への影響はしばらく残りそうです。
JR貨物の検査データの改ざんの概要
国交省のプレスリリースによると、車両の車軸組立時に車輪や歯車等を車軸にはめるための圧力を管理・記録することとなっているにも関わらず、JR貨物では、輪軸組立時の大歯車圧入力値が基準値を超過し、また、当該歯車圧入力値に係る記録簿の差し替えが行われていたといいます。
JR貨物の社内調査で、複数の車両で基準値超過や改ざんが確認されたため、安全確認がとられるまで使用を停止することとなりました。
- 北海道支社輪西車両所の貨車309両
- 関東支社川崎車両所の貨車218両
- 関西支社広島車両所の機関車4両・貨車33両
JR貨物によると、上記3車両所に加え、新たに確認が必要となった車両が発生したため、貨物列車 248 本の運行を取りやめたといいます。安全が確認された列車から順次運転を再開しているといいます。
JR貨物はSNSで「順次ダイヤは正常化する見込みです。一部貨車の運用停止に伴い、今後編成両数を減らして運転する場合がございますが、通常通りの運転本数を予定しております」とのコメントを出しています。
国土交通省は11日に特別保安監査
国交省は、9月9日にJR貨物に対し、報告対象となる輪軸を備えた車両について、安全に運転することができる状態であることが確認されるまで、使用を停止することなどを指示しました。そのうえで、11日から特別保安監査を実施し、安全管理体制を確認していました。
そのうえで、国交省は13日、全国の鉄道や路面電車の事業者に対し、現在運用している全車両の緊急点検を指示しました。30日までの報告を求めています。
物流各社の配送に影響続く
JR貨物の運休の影響で、物流各社は12日朝時点でも引き続き遅配のお知らせを案内しています。佐川急便の公式サイトによると、9月9日以降に発送された 関東・中部・近畿→北海道・九州、九州→関東向けの荷物に遅延する可能性があると公表したうえで「代替の輸送手段への切り替えを検討し、遅延を最小限に抑えるために最善を尽くしてまいります」と説明しています。
ヤマト運輸の公式サイトも、以下の地域で9月10日、11日に発送された荷物について1日以上の遅れが生じる見込みだと案内しています。
- 東京、関東地域(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県)から九州地域、北海道あての荷物
- 九州地域(福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本県、宮崎県、鹿児島県)、北海道から東京、関東地域あての荷物
福山通運の公式サイトでも、貨物列車運休の影響を受け、全国から北海道・東北・関東・中四国・九州宛ての荷物で配送に遅れが出る可能性があると説明しています。
遅延の影響が出ている西濃運輸の公式サイトは、商品の配送状況を案内しています。
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この記事を書いた人
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杉本崇
ツギノジダイ編集長
1980年、大阪府東大阪市生まれ。2004年朝日新聞社に記者として入社。医療や災害、科学技術・AI、環境分野、エネルギーを中心に取材。町工場の工場長を父に持ち、ライフワークとして数々の中小企業も取材を続けてきた。
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