目次

  1. アルバイトの無断欠勤 企業側がまずやるべきこと
    1. まず確認をおこなう
    2. 本人と連絡がとれない場合は緊急連絡先に連絡
    3. 緊急連絡先にも連絡がつかない場合は自宅訪問も視野に
  2. アルバイトの無断欠勤後 しばらく連絡がつかないときの対処法
    1. 就業規則や雇用契約書の内容を確認
    2. アルバイトの社会保険加入状況を確認する
    3. 記録をとっておく
  3. アルバイトの無断欠勤後 企業側が検討できる措置
    1. 退職手続きの通知を送付する
    2. 一方的な解雇は法律違反の可能性がある
    3. 解雇せざるを得ないときは予告する
  4. アルバイトの無断欠勤 企業が気を付けたいポイント
    1. 連絡がとれなくとも給与は支払う
    2. 就業規則に無断欠勤についてのルールを定めておく
    3. 信頼関係が構築されるまでは有期雇用契約で契約する
  5. アルバイトの無断欠勤を防止するために

 「アルバイトが時間になっても来ない」「電話をかけたが、つながらない」  このような状況で、どう対応すべきなのでしょうか。

 無断欠勤の理由は「寝坊」「シフトの勘違い」「出勤中の事故」など多岐にわたります。そのため、まずはその理由を確認することが必要です。 

 電話やメール、メッセージアプリなどで連絡を試み、連絡がとれたら理由の確認をしましょう。緊急事態の可能性もありますので、理由次第で今後の対応を検討します。

 会社から連絡をしても応答がない場合、協力が得られれば他のアルバイト従業員から連絡を試みる方法もあります。

 本人と連絡がとれない場合は、アルバイト契約時に提出されている緊急連絡先(家族や親族など)に連絡を試みます。本人が何らかの理由で連絡できない状況にある可能性が考えられるため、緊急連絡先に事情を説明し、確認を依頼します。

 万が一、事故や事件に巻き込まれている可能性もありますので、安否確認を行ってください。家族などに連絡がとれ、無事であることが確認できたら、本人から会社へ連絡するように伝えましょう。

 緊急連絡先にも連絡がつかない場合、次に検討するのは自宅訪問です。しかし、アルバイトの無断欠勤に対して、一般的には自宅訪問は行いません。ただし、以下のポイントに当てはまる場合は、自宅訪問も検討されるとよいでしょう。

アルバイトの無断欠勤で自宅訪問を検討する場合
緊急性がある アルバイト従業員の健康や安全が心配されるケース。特に、長期間連絡が取れなかったり、何らかの事故や病気が疑われたりする場合
過去の信頼性や状況 アルバイト従業員がこれまでに遅刻や欠勤もなく真面目に働いていており、何か重大な事情があるかもしれない場合

 自宅訪問は個人のプライバシーに深く関わるため、訪問の時間帯への配慮、メールで訪問の事前予告をおこなう、2名以上で訪問をおこなうなど、対応には注意してください。

 アルバイトの無断欠勤への対応として、自宅訪問は最終手段となります。本人や緊急連絡先への連絡を試みた結果、連絡手段は尽き、なおかつ必要な状況である場合に限っておこないましょう。

 無断欠勤をしたアルバイトに全く連絡がとれず、緊急連絡先も把握していないなど連絡手段が尽きた場合、会社はどのような対応をしたらよいのでしょうか。

 まず、会社のルールブックである就業規則や雇用契約書(又は労働条件通知書)の内容を確認します。なぜ確認が必要なのか?それは、ルールに則った対応をしなければ、法的なトラブルに発展して後々会社が不利な立場になる可能性があるからです。

 就業規則や雇用契約書で確認するのは「契約期間」や「退職」のルールです。

契約は有期契約か無期契約か 有期契約であれば、契約満了日が近い場合、無断欠勤をするアルバイトとの契約関係を無理に続けることなく、契約終了時に自然に契約を終了させることを検討できます
就業規則の退職ルールはどうなっているか 「無断で欠勤をし、〇日以上連絡がとれない時は退職とする」などの規定があれば、そのルールに基づいて対応することを検討できます

 アルバイトも働く時間や日数によっては、社会保険の被保険者になることがあります。健康保険・厚生年金保険・雇用保険の加入状況を確認してください。

 まず、雇用保険は支払う給与額に保険料率を乗じて計算した保険料を支払う給与から控除する仕組みのため、無断欠勤が続き支払う給与がなければ保険料の負担は発生しません。

 一方、健康保険・厚生年金保険は、アルバイトと連絡が取れず、無断欠勤が続いている場合も保険料の負担は発生します。通常であれば給与から保険料を控除しますが、支払う給与がなければ保険料をどのように扱うかの問題が生じます。

 健康保険料・厚生年金保険料はアルバイトと会社が折半して負担しますので、健康保険・厚生年金保険に加入しているアルバイトの無断欠勤が長引くと会社の負担は大きくなります。アルバイトが負担すべき保険料を本人から回収できなければ、保険料の全額を会社が負担せざるを得ない状況となるかもしれません。

 会社側がアルバイトに連絡を取ろうとした履歴や、無断欠勤の事実を記録してください。電話やメールなどで連絡を試みた記録を保管しておくことは、将来的なトラブルを防ぐためにも重要です。

 無断欠勤の日数、連絡状況(連絡日時・連絡手段・その内容を含めて)、アルバイトの応答の有無(連絡が取れたのであればその内容も含めて)を記録しておくことで、最終的に解雇せざるを得ない状況となり解雇をし、その後アルバイトが不当解雇を訴えてきた場合の証拠となります。

 無断欠勤をするアルバイトへ、会社はどのような対応をとれるのでしょうか。検討できる措置として、大きく2つが挙げられます。

アルバイトの無断欠勤後 企業側が検討できる措置
アルバイトの無断欠勤後 企業側が検討できる措置(デザイン:中村里歩)

 無断欠勤が続き連絡がつかないまま、就業規則のルールに則り自然退職扱いにする場合、正式に退職の手続きを進めます。

 ただし、就業規則や雇用契約書に「無断で欠勤をし、〇日以上連絡がとれないときは退職とする」などのルールが定められていなければ、自然退職扱いとすることはできないためご注意ください。

 退職の手続きについては、書面で通知することで、後々のトラブルを避けることができます。その際は、以下の内容を通知するようにしてください。

退職手続きの通知に記載する内容
・無断欠勤の経緯と会社の対応
・退職の理由
・退職日
・必要な返却物(社員証、制服、保険証など)があれば、その返却依頼、返却期日
・社会保険や雇用保険の加入者であれば、手続きの詳細

 この書面は、後で「通知を受け取っていない」と主張されないように、内容証明郵便を使って送付されることをおすすめします。

 退職扱いではなく、解雇にしたいと考える経営者の方もいらっしゃるかもしれません。しかし、労働契約法第16条によれば、合理的な理由がなく、社会通念上相当であると認められない解雇は無効です。

 適正な手続きを経ずに解雇をした場合、アルバイトから民事訴訟される可能性があります。裁判で解雇が無効とみなされれば、解雇されなければ受け取れたはずの給料をアルバイトに支払う必要が出てくるでしょう。また、不法行為によりアルバイトから損害賠償を請求される可能性もあります(民法709条)。

 そのため、無断欠勤をしたアルバイトに対しては、できるだけ就業規則や雇用契約書に定めているルールに則り“解雇”ではない解決方法を取るようにしましょう。 

 前述のとおり、解雇は最終的な手段です。しかし、就業規則や雇用契約書に「無断で欠勤をし、〇日以上連絡がとれないときは退職とする」といったルールが定められておらず、かつ、有期契約ではなく無期契約で雇用契約を締結している場合は、連絡がとれない状態が続くと、解雇せざるを得ないこともあるかと思います。

 従業員を解雇するときには予告が必要です。30日前までに解雇の予告をするか、予告を行わずに解雇する場合は、最低30日分の平均賃金を支払う必要があります(労働基準法第20条)。

 予告は口頭でも有効ですが、連絡がとれないアルバイトを解雇するのであれば、解雇する日や具体的な解雇理由を明記した「解雇予告通知書」を作成して本人に内容証明郵便で送ることが確実な方法です(参照:しっかりマスタ 労働基準法 ―解雇編ー|東京労働局)。

 また、解雇に関しては、アルバイトから不当解雇で訴えられるリスクがあります。事前に専門家に相談し、解雇の手続きを進めることが望ましいです。

 無断欠勤が続くアルバイト従業員には、雇止めや自然退職の処理で対応することがほとんどですが、いくつか注意点があります。

アルバイトの無断欠勤で企業が気を付けたいポイント
・連絡がとれなくても給与は支払う
・就業規則に無断欠勤についてのルールを定めておく
・信頼関係が構築されるまでは有期雇用契約で契約する

 無断欠勤をするアルバイトに給与を支払いたくない、と思われる経営者の方もいるでしょう。しかし、会社には従業員が働いたぶんの給与を支払う義務があります。

 労働基準法第24条において、(1)通貨で(2)直接労働者に(3)全額を(4)毎月1回以上(5)一定の期日を定めて支払わなければならないと規定されています。これを、賃金支払の五原則をいいます(参照:労働基準法|e-GOV 法令検索)。

 「払いたくない」というお気持ちは理解できますが、働いたぶんの給与は、会社で決めている給与支給日に支払うようにしてください。

 既に述べていますが、就業規則に「一定期間の無断欠勤が続き連絡がとれない場合は退職扱いとする」という規定があれば、その内容に従い処理を進めることができます。

 社会保険に加入しているアルバイトであれば、長引くと保険料の負担が大きくなります。就業規則にルールとして整備しておくことで、早期解決を図ることが可能となります。

 信頼関係ができるまでは、有期契約でアルバイトと契約を結ぶことをおすすめします。有期契約であれば、無断欠勤が続き連絡がとれない場合でも、契約期間満了のタイミングで契約更新をせず雇止めをすることが可能です。

 健康保険・厚生年金保険の被保険者ではないアルバイトであれば、連絡がとれず無断欠勤が続くのであれば、契約期間の終了を待つという方法が得策です。

 ただし、雇止めの予告が必要となるケースがあるので、ご注意ください。3回以上契約が更新されている、または1年を超えて継続勤務しているアルバイトについては、契約を更新しない場合、会社は30日前までに予告しなければならないとされています(参照:有期労働契約の締結、更新、雇止め等に関する基準について|厚生労働省)。

 会社にとって重要なことは、「アルバイトの無断欠勤を防ぐ仕組みづくり」です。

 経営者や管理職の方は、普段からアルバイトとのコミュニケーションが取れているでしょうか。無断欠勤が起きる背景には、コミュニケーション不足がある可能性もあります。アルバイトと会社の間で定期的なコミュニケーションを取り、トラブルが発生する前に問題を解決する姿勢が大切です。

 また、就業規則や雇用契約書に定めている欠勤に関するルールを、アルバイトに説明・周知をしておくことも重要です。無断欠勤をすると、どのような処分の対象となるのかをアルバイトに説明しておくことは、無断欠勤の発生率低下につながります。