目次

  1. 育児介護休業法とは 改正でチェックしたい8つのポイント
  2. 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
  3. 育児のためのテレワーク等の導入の努力義務化
  4. 子の看護休暇の取得事由・対象となる子の範囲の拡大等
  5. 育児休業取得状況の公表義務の拡大
  6. 介護離職防止のための個別の周知・意向確認等
  7. 育児休業取得等に関する状況把握・数値目標設定の義務付け
  8. 柔軟な働き方を実現するための措置等の義務付け
  9. 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務付け

 厚労省の公式サイトによると、育児・介護休業法とは、労働者が子育てや家族の介護を行うための休業などを保障する法律です。

 一方、次世代育成支援対策推進法は、少子化対策の一環として、こども一人ひとりの育ちを社会全体で応援するための時限法です。2025年3月31日までとなっていた法律の有効期限が、2035年3月31日までに延長されました。延長により、くるみん認定制度も継続されますが、今後、認定基準の一部が見直される予定です。

 両法律の改正による変更点は、以下の8つがあります。

  1. 所定外労働の制限(残業免除)の対象拡大
  2. 育児のためのテレワーク等の導入の努力義務化
  3. 子の看護休暇の取得事由及び対象となる子の範囲の拡大等
  4. 育児休業取得状況の公表義務を300人超の企業に拡大
  5. 介護離職防止のための個別の周知・意向確認、雇用環境整備等の措置の義務付け
  6. 育児休業取得等に関する状況把握・数値目標設定の義務付け
  7. 柔軟な働き方を実現するための措置等の義務付け
  8. 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務付け

 このうち、7. 柔軟な働き方を実現するための措置等の義務付けと、8. 仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務付けは2025年10月1日から、そのほかの項目は2025年4月1日から施行されます。

 それぞれの項目について、具体的な変更点を紹介します。

改正内容 改正前 改正後
請求可能となる労働者 3歳未満の子を養育する労働者 小学校就学前の子を養育する労働者

 所定外労働の制限(残業免除)について、改正前は、3歳に満たない子を養育する労働者が、請求すれば所定外労働の制限(残業免除)を利用することができました。

 2025年4月の改正後は、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者も請求すれば利用できるようになります。

子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充(以降の画像は厚労省の公式サイトから https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130583.html)
改正内容 改正前 改正後
代替措置 <代替措置>
①フレックスタイム制
②時差出勤
③保育施設の設置運営等
<代替措置>
①フレックスタイム制
②時差出勤
③保育施設の設置運営等
④テレワーク

 3歳になるまでの子を養育する労働者向けの短時間勤務制度について、業務の性質または業務の実施体制からみて実施困難な場合、労使協定により対象外にできますが、その場合、代替措置をとる必要があります。

 これまで代替措置は、フレックスタイム制、時差出勤、保育施設の設置運営等でしたが、2025年4月からは、代替措置の1つにテレワークが加わります。

 ただし、事業所内でテレワークができない業種・職種がある場合は対象者を限定することは可能だといいます。

改正内容 改正前 改正後
対象となる子の範囲 小学校就学の始期に達するまで 小学校3年生修了まで
取得事由 ①病気・けが
②予防接種・健康診断
①病気・けが
②予防接種・健康診断
③感染症による学級閉鎖
④入園(入学)式、卒園式
除外規定 <除外できる労働者>
①週の所定労働日数が2日以下
②継続雇用期間6ヵ月未満
<除外できる労働者>
①週の所定労働日数が2日以下
※②を撤廃
名称 子の看護休暇 子の看護等休暇

 2025年4月からは、看護休暇の対象となる子の範囲を小学校3年生修了(現行は小学校就学前)まで拡大し、現行の取得事由である子の病気、けが、予防接種、健康診断に加えて、新たに感染症に伴う学級閉鎖や入園(入学)式及び卒園式でも取得できるようになります。

 授業参観や運動会に参加する場合は対象外ですが、法を上回る措置として事業主が独自の判断で取得事由に含めることができます。

 また、これまでは、継続して雇用された期間が6ヵ月未満の労働者を労使協定によって子の看護休暇や介護休暇の対象から除外することが可能とされていました。しかし、今回の改正で除外する仕組みを廃止しました。

改正内容 改正前 改正後
公表義務の対象となる企業の拡大 従業員数1000人超の企業 従業員数300人超の企業

 従業員数1000人超の企業に公表が義務付けられている育児休業等の取得の状況について、2025年4月から従業員数300人超の企業に、育児休業等の取得の状況を公表することが義務付けられます。

 公表の対象は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。年1回、公表前事業年度の終了後おおむね3ヵ月以内に、インターネットなど、一般の方が閲覧できる方法で公表するよう求めています。

①育児休業等の取得割合②育児休業等と育児目的休暇の取得割合の計算例
①育児休業等の取得割合②育児休業等と育児目的休暇の取得割合の計算例

 育児休業等の取得割合は、育児休業等をした男性労働者の数/配偶者が出産した男性労働者の数で計算します。

 育児休業等と育児目的休暇の取得割合は、育児休業等をした男性労働者の数+小学校就学前の子の育児を目的とした休暇制度を利用した男性労働者の数の合計数/配偶者が出産した男性労働者の数で計算します。

 厚労省は、12万社が登録している「両立支援のひろば」での公表を勧めています。公表するときは、両立支援のひろばの「育児休業等の取得の状況に関する備考」欄に次のように入力してください。(「20XX年x月~20xx年x月」は、各社の事業(会計)年度です。)

育児休業平均取得日数:男性xx日、女性xx日(20XX年x月~20xx年x月生まれの子の1歳までの実績

「育児休業平均取得日数」を公表する場合の計算例
「育児休業平均取得日数」を公表する場合の計算例
介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等

 2025年4月から、介護離職防止のための個別の周知・意向確認、雇用環境整備等の措置が事業主の義務になります。ポイントは以下の通りです。

  • 介護に直面した旨の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置
  • 介護に直面する前の早い段階(40歳等)での両立支援制度等に関する情報提供
  • 仕事と介護の両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備
  • 要介護状態の対象家族を介護する労働者がテレワークを選択できるよう事業主に努力義務
  • 介護休暇について、引き続き雇用された期間が6ヵ月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みを廃止

 たとえば、労働者から家族の介護に直面した旨の申出があった場合に、仕事と介護の両立支援制度等について周知するとともに、制度の取得意向を確認する必要があります。

 周知が必要な項目は以下の通りです。

  • 介護休業に関する制度及び介護両立支援制度等
  • 介護休業に関する制度及び介護両立支援制度等の利用に係る申出の申出先
  • 介護休業給付に関すること

 仕事と介護の両立支援制度とは具体的に、①介護休暇、②所定外労働の制限、③時間外労働の制限、④深夜業の制限、⑤所定労働時間の短縮等があります。

 意向確認は、以下の4つの方法があります。

  1. 面談(オンラインも可)
  2. 書面の交付(郵送も可能)
  3. FAXの送信
  4. 電子メール等の送信

 ただし、FAXの送信と電子メール等の送信は労働者が希望した場合のみ。電子メールでの送信は、労働者が電子メール等の記録を出力することにより書面を作成できるものであることが必要です。

 取得の申出をしないように抑制する、申し出た場合に不利益をほのめかすことは禁止されています。

育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化

 従業員数100人超の企業は、一般事業主行動計画策定時に以下のことが義務付けられる予定です。(従業員数100人以下の企業は、努力義務)

  • 計画策定時の育児休業取得状況や労働時間の状況把握等
  • 育児休業取得状況や労働時間の状況に関する数値目標の設定

 育児休業取得状況や労働時間の状況を把握し、改善すべき事情を分析した上で、分析結果を勘案して新たな行動計画を策定または変更するPDCAが求められています。

 柔軟な働き方を実現するための措置とは、3歳以上小学校就学前の子を養育する労働者が、柔軟な働き方を活用しながらフルタイムでも働ける措置も選べるようにするためのものです。

 事業主が過半数労働組合等からの意見聴取により職場のニーズを把握した上で、以下の中から2つ以上の制度を設け、労働者はその中から1つ選択して利用することができます。

  • 始業時間等の変更
  • テレワーク等(10日以上/月、原則時間単位で利用可)
  • 保育施設の設置運営等
  • 労働者が就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇(養育両立支援休暇)の付与(10日以上/年、原則時間単位で取得可)
  • 短時間勤務制度

 そのうえで、3歳に満たない子を養育する労働者に対して、子が3歳になるまでの適切な時期に、事業主は選択した制度について、周知と制度利用の意向の確認を、個別に行う必要があります。

 労働者から、妊娠・出産等の申出があった場合や労働者の子が3歳になる前に、勤務時間帯や勤務地、両立支援制度の利用期間の希望等の個別の意向を聴取し、配慮する必要があります。

 厚労省によると、個別の意向聴取とは、事業主が、労働者が妊娠・出産等を申し出たときや、子が3歳になるまでの適切な時期に、以下の方法で労働者の意向を個別に聴取してください。

  • 面談(オンラインも可)
  • 書面の交付
  • FAXの送信
  • 電子メール等の送信

 ただし、FAXの送信と電子メール等の送信は労働者が希望した場合のみ可能です。

 具体的には、以下について希望がないかを聞いてください。

  • 始業・終業の時刻等の勤務時間帯
  • 勤務地(就業の場所)
  • 両立支援制度の利用期間
  • 仕事と育児の両立の支障となる事情の改善に資する就業の条件として何か希望がないか

 ここでいう「配慮」とは、事業主が意向の聴取をした労働者の就業条件を定めるに当たり、聴取した意向も踏まえつつ、自社の状況に応じて「配慮しなければならない」とされています。何らかの措置を行うか否かは事業主が自社の状況に応じて決めることになります。

 希望を叶えられない場合でも労働者に丁寧に説明してください。事業主が個別の意向に配慮するうえで望ましい対応として、厚労省は次のような例を紹介しています。

  • 労働者の子に障害がある場合や、医療的ケアを必要とする場合などであって、労働者が希望するときには、短時間勤務制度や子の看護等休暇制度等の利用可能期間を延長すること
  • ひとり親家庭の場合であって労働者が希望するときには、子の看護等休暇制度等の付与日数に配慮すること