AIエージェントが中小企業経営をサポートする未来 資金繰りもメンターも
2025年、生成AIブームの次にやってくると予想されているのが「AIエージェント」です。一つひとつ人間が指示を出さなくても目標に向けて自律的にタスクをこなしてくれると期待されています。それでは、AIエージェントが普及したとき、中小企業経営者のどんな風に役に立つのかについて生成AIと議論しながら出てきた「資金繰り」と「メンター」という2つのアイデアについて紹介します。
2025年、生成AIブームの次にやってくると予想されているのが「AIエージェント」です。一つひとつ人間が指示を出さなくても目標に向けて自律的にタスクをこなしてくれると期待されています。それでは、AIエージェントが普及したとき、中小企業経営者のどんな風に役に立つのかについて生成AIと議論しながら出てきた「資金繰り」と「メンター」という2つのアイデアについて紹介します。
目次
AIエージェントの定義は、はっきりと定まっていませんが、人間からの一つひとつ指示を出さなくても、与えられた目標に向かって自ら作業分解して、複雑なタスクを自律的にこなしてくれることが期待されています。
AIエージェントは、1992年ごろの論文から法的な位置づけも含めて議論されてきましたが、ここ数年のAIの技術的な発展で現実味を帯びてきました。様々なメディアで、2025年、生成AIの次のブームとして来るのではないかと言われています。
具体的なビジネス用途として、24時間問い合わせサポート(必要に応じて有人サービスに引き継ぐ)であったり、脆弱性対策などのセキュリティ管理であったり、営業担当それぞれにAIエージェントがバディのようにつきマーケティングから顧客サポートまでを支援してくれたりというアイデアが出ています。
ソフトバンクグループの孫正義会長は、イベント「SoftBank World 2024」のなかで、将来は一人ひとりの、あるいは様々なデバイスごとにパーソナルなAIエージェントがサポートし、エージェント同士がやりとりしてタスクを自動処理してくれる「AtoA(Agent to Agent)」の未来が来ると話していました。
たとえば、大切なビジネスパートナーとのランチでは、お互いのAIエージェントがスケジュールを自動で調整し、仮に予定が詰まっていても、ほかの予定をキャンセルしてでも優先してでもランチを立案するといったアイデアです。
広く普及しているAIエージェントサービスはまだありませんが、指示を出すと自らブラウザを立ち上げて必要な情報をまとめてくれるツールなど限定的な用途では、すでに近いサービスが生まれつつあります。
↓ここから続き
そこで、生成AIと議論しながら、AIエージェントは将来、中小企業経営者のどのような悩みの解決に役立ちそうかを考えました。具体的には、ClaudeやChatGPTなど複数の生成AIに以下のプロンプトを入力し、その後も質問と意見を繰り返しました。
あなたは{専門家1}、{専門家2}、{専門家3}、{専門家4}、{専門家5}の役割を持っています。
今から{トピック}について交互に発話させ課題と解決方法も混ぜながら、水平思考を使い議論してください。
かならず{ゴール}に向かって議論してください。 #条件は以下の通りです。
#条件
{専門家1} AIエージェント
{専門家2} 中小企業の財務分析に詳しい地方銀行の分析担当者
{専門家3} 中小企業の現場を誰よりも精通している中小企業経営者
{専門家4} AIの活用についてエビデンスをもとに議論ができる大学の研究者
{専門家5} 日頃から中小企業経営を第三者的な立場からサポートしている経営コンサルタント
{トピック}2025年に注目されるのが「AIエージェント」。しかし、実際にビジネスの分野でAIエージェントが活躍するのかはまだはっきりしていない。そこで専門家5人がAIエージェントはとくに中小企業のビジネスや経営者をどのように助けることになるかについて議論してください。
{ゴール}AIエージェントが中小企業のビジネスや経営者自身の役に立つのであれば、それはどんな分野でどのように役立つのかを分かりやすく具体的に示してください。
AIエージェントが中小企業を支援できる候補として、資金繰りが考えられます。資金繰りの必要性は業種・事業規模を問いません。そのうえ、経営改善を図るためには真っ先に見た方がよいポイントです。
一方で、決算書の読み方が分からない、どう分析してよいかが分からないといった悩みも多く、支援ニーズの高い分野の一つです。
生産管理や在庫管理なども事前に検討しましたが、センサーの設置や入力作業があらたに発生する可能性があります。その一方で、資金繰りであれば、銀行やカード会社のAIエージェント(またはAPI)と連携すれば、ある程度、自動化できる余地があります。
すでに近いサービスは世に出ているものの、AIエージェントに次のような機能があれば資金繰りをサポートできるのではないかと考えました。
銀行APIと連携することで、入出金データをリアルタイムで取得し、自動仕訳を行うことができるかもしれません。これにより、月次決算を早期化できたり、リアルタイムで財務状況や経営成績を把握できたりするようになるかもしれません。
「今週の資金残高予測」(今週の予想される入金と支出をもとに、資金残高がどの程度になるのかを予測)や、「来月のキャッシュフロー予測」(来月の売上見込み、仕入予定、返済予定などを考慮し来月の資金収支を予測)といった支援のアイデアも生成AIから生まれました。
取引内容の正確な分類や取引の解釈などは、当面、人間による確認が必要ですが、そのうち、税理士のAIエージェントにアドバイスを求め、自動で対応してくれる未来がやってくるかもしれません。
過去のデータパターンから、資金ショートのリスクを事前に検知することが可能となるかもしれません。一定期間のデータを読み込ませれば、季節変動や取引先の支払い傾向なども考慮した予測までできる可能性もあります。
資金残高が設定された基準を下回った場合、資金ショートの可能性を警告し、必要な資金調達を促す「資金ショート予測」や、過去のデータに基づいて、季節変動による資金需要の増減を予測し、事前に資金繰り対策を立てる「季節変動予測」、取引先の財務状況や過去の取引データに基づいて、信用リスクを評価し、必要に応じて取引の見直しを促す「取引先信用リスク検知」というようなアイデアも生成AIから提示されました。
ただし、予測の精度は入力データの質に大きく依存します。また、新型コロナのように急激な事業環境の変化や予期せぬ事態への対応には限界があります。
データにもとづいて、支払いスケジュールの最適化や資金調達方法の提案ができるかもしれません。支払いスケジュールでは、支払期限や支払額を調整することで、資金繰り状況を改善できる可能性があります。
また、在庫管理や売掛金管理の改善など、運転資金を効率的に運用するためのアドバイスができるようになるかもしれません。
ただし、支払いも入金も取引先との関係があるので、自社だけで実現するのが難しい可能性はあります。
「AIエージェントに経営に関する書籍をインプットし、経営判断をするときにさまざまな経営哲学や歴史的な成功例・失敗例を参考にした情報を提示してもらえたら…」という思考実験もしてみました。
たとえば、これまで900社以上のインタビューを続けてきたツギノジダイの記事を学習させれば、経営者の悩みに対して似た事例を検索してきてアドバイスができるかもしれません。D・カーネギーなどの名著や歴史インターネットラジオ「コテンラジオ」のような情報も追加していけば、アドバイスに深みも出るでしょう(もちろん著作権等の問題をクリアしていることが前提です)。
経営者の右腕となったAIエージェントができることとしては、以下のようなことが考えられます。
ある出来事が起こったときに、経営事例を分析し、過去の成功事例から学ぶべき点、失敗事例から教訓を得るべき点を指摘することができるかもしれません。
あるいは優秀な経営者の考え方をインストールしたAIエージェントに、自分のAIエージェントが相談に行ってくれるという未来も来るかもしれません。
一方で難しいこととしては、以下のようなことが考えられます。
たとえば、中小企業の後継者が、親である社長とうまく折り合うにはどうすればよいかといった悩みなどパーソナルな問題に対し、どこまで的確な回答を引き出せるかは見通せません。
もちろん、AIエージェントは万能ではありません。
こうした資金繰りのアドバイザーやメンターとして効果を発揮させようと、業績のデータや、経営者のSNSと連動させれば、経営者が意識していなかった問題についてリアルタイムでアドバイスしてくれるようになる可能性がある一方、プライバシーやデータセキュリティ面で敬遠されてしまうかもしれません。
また、100%の正確性を求めるのは難しいため、どれだけ高度化してもAIに頼り切らない、最終判断は人間が下すということを徹底する必要もあるでしょう。
(続きは会員登録で読めます)
ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。
おすすめのニュース、取材余話、イベントの優先案内など「ツギノジダイ」を一層お楽しみいただける情報を定期的に配信しています。メルマガを購読したい方は、会員登録をお願いいたします。
朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。