目次

  1. エンジェル税制とは 現状の課題
  2. エンジェル税制の拡充、2025年度税制改正大綱も
  3. エンジェル税制による優遇措置
    1. 投資時点での優遇措置
    2. 株式譲渡時の優遇措置
  4. エンジェル税制の活用方法と注意点

 経済産業省の公式サイトによると、エンジェル税制は、スタートアップ企業へ投資を行い、株式を取得した個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度です。投資時点と、売却時点のいずれの時点でも優遇を受けることができます。

 現行のエンジェル税制では、投資家が株式譲渡益からの控除措置の適用を受けるためには、株式譲渡益が発生した年内にスタートアップへの投資を行う必要がありました。

 2024年度税制改正により、個人投資家が発行会社の株式を取得した時点で、エンジェル税制の要件を満たす場合、一定の新株予約権の取得に要した金額も、税制の対象である株式の取得に要した金額に含めることができるようになりました。

 一定の新株予約権とは、その取得時に払込みを行う新株予約権(いわゆる有償新株予約権であり、J-KISS等)です。この改正は、2024年4月1日以降に新株予約権を取得した場合のみ対象となります。

エンジェル税制の拡充
エンジェル税制の拡充

 さらに、2025年度税制改正大綱では、スタートアップに対する個人からの資金供給を促すため、エンジェル税制の再投資期間について、株式譲渡益が発生した年分の確定申告時の手続き等を前提に、株式譲渡益が発生した翌年末(最大2年間)まで延長されることになりました。

 この改正は、2026年1月1日以降の投資から適用される見込みです。

 エンジェル税制では、個人投資家は投資時点と株式譲渡時の両方で税制上の優遇措置を受けることができます。

 投資時点では、以下のいずれかの優遇措置を選択できます。

  • 優遇措置A…投資額から2000円を差し引いた金額を、その年の総所得金額から控除できます。ただし、控除額には上限があり、800万円または総所得金額×40%のいずれか低い方となります。
  • 優遇措置B…投資額をその年の株式譲渡益から控除できます。この措置には上限はありません。
  • プレシード・シード特例、起業特例…投資額をその年の株式譲渡益から控除できます。この措置にも上限はなく、年間20億円までは非課税となります。

 2025年度税制改正大綱に盛り込まれた「再投資期間延長」の対象となるのは、このうち、優遇措置B、プレシード・シード特例、起業特例です。

 株式譲渡時には、以下の優遇措置があります。

 まず、譲渡損失が発生した場合、その年の他の株式譲渡益と通算できます。通算してもなお損失が残る場合は、翌年以降3年にわたり損失を繰り越すことができます。投資先のスタートアップが破産や解散した場合にも、この損失繰越の制度が適用されます。

 スタートアップへ投資した年に優遇措置を受けた場合には、その控除対象金額のうち、課税繰延分を取得価額から差し引いて譲渡損失(譲渡益)を算定されます。

 エンジェル税制を活用する際には、いくつかの注意点があります。

 エンジェル税制を利用するためには、まず、スタートアップが都道府県等へエンジェル税制適用対象企業であること、投資が行われたこと等の確認申請をする必要があります。対象となるスタートアップの要件は、経済産業省の公式サイトで確認できます。

 申請を受けた都道府県等は、確認後、スタートアップへ確認書を交付しますので。この確認書をスタートアップは投資家へ提出し、投資家が確認書を確定申告の際に税務署へ提出する必要があります。各都道府県の窓口一覧は、経産省の公式サイトへ。