2025年度(令和7年度)税制改正大綱 中小企業向け税優遇・増税まとめ

政府与党は2025年(令和7年)度の税制改正大綱を決定しました。2024年12月20日に自由民主党と公明党が発表しました。中小企業の法人税優遇や中小企業経営強化税制の延長、事業承継税制の役員就任要件見直しなど、この改正大綱が今後の中小企業経営にどのような影響を与えるのか、具体的なポイントをわかりやすく解説します。
政府与党は2025年(令和7年)度の税制改正大綱を決定しました。2024年12月20日に自由民主党と公明党が発表しました。中小企業の法人税優遇や中小企業経営強化税制の延長、事業承継税制の役員就任要件見直しなど、この改正大綱が今後の中小企業経営にどのような影響を与えるのか、具体的なポイントをわかりやすく解説します。
目次
税制改正大綱とは、国の税金の仕組み「税制」は経済社会の変化に対応できるよう、予算づくりと一緒に毎年見直されています。税制改正大綱とは、各省庁からあがる税制改正の要望などを受け、与党の税制調査会が中心となって翌年度以降の税制改正の方針をまとめるものです。
いわば税制に関する法律改正のたたき台です。自由民主党の公式サイトに、2024年12月20日、令和7年度(2025年度)税制改正大綱が公表されています。
税制改正大綱には今後の法人税についての考え方が示されています。世界的な法人税率の引き下げ競争が展開されるなかで、日本も設備投資や賃上げ促進を目的に法人税率を下げたものの、企業部門では収益が拡大したにもかかわらず、現預金等が積みあがり続けたと指摘しています。
そのうえで以下のように総括しています。
「法人税改革は意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ず、法人税のあり方を転換していかなければならない。これまで現預金を大きく積み上げてきた大企業を中心に企業が国内投資や賃上げに機動的に取り組むよう、減税措置の実効性を高める観点からも、レベニュー・ニュートラルの観点からも、法人税率を引き上げつつターゲットを絞った政策対応を実施するなど、メリハリのある法人税体系を構築していく」
法人税見直しが今後進む可能性がある一方、以下のように、中小企業の事業成長に絞った税制優遇は一部延長されます。
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中小企業者等の法人税の軽減税率の特例は2年延長します。ただし、以下の見直しをします。
ただし、これ以降については制度そのものを見直す可能性もあります。令和7年度税制改正大綱には次のように書かれています。
「中小企業の800万円までの所得に適用される軽減税率の特例は、リーマン・ショックの際の経済対策として講じられた時限措置である。今般、賃上げや物価高への対応に直面している中小企業の状況を踏まえ、適用期限を2年延長するが、極めて所得が高い中小企業等については一定の見直しを行うとともに、特例税率が設けられた経緯等を踏まえ、次の適用期限の到来時に改めて検討する」
中小企業の法人税優遇の見直しの代わりに強く押し出そうとしているのが中小企業経営強化税制です。2026年度末まで2年延長する方針です。
中小企業経営強化税制とは、中小企業等経営強化法による認定を受けた計画に基づく設備投資について、即時償却及び税額控除(10%、資本金3000万円超なら7%)のいずれかの適用を認める措置のことです。
税制改正大綱のポイントは以下の通りです。
また、食品等事業者がワンストップで税制を活用できる仕組みをつくります。
経産省の公式サイトによると、地域未来投資促進税制とは、地域経済牽引事業計画に従って建物・機械等の設備投資を行う場合に、法人税等の特別償却(最大50%)または税額控除(最大6%)を受けることができる制度です。
地域の特性や魅力を生かした地域社会の創出に向け、地域未来投資促進税制について、経産省によると、2017年度の創設以降、約3200件の事業が国による確認を受けており、これらの事業により見込まれる設備投資(工場建設など)は25年度までに総額約9.4兆円に及ぶと説明しています。
これを受けて、税制改正大綱は、地域経済を牽引する企業の成長促進を通じた強靱な産業基盤の構築に向けて、地域経済の実情に応じその発展・成長に特に資する分野に対する10億円以上の設備投資について新たな措置(特別償却50%又は税額控除5%)を追加します。
そのうえで、適用期限を3年延長します。
内閣府の公式サイトによると、企業版ふるさと納税は、国が認定した地域再生計画に位置付けられる地方公共団体の地方創生プロジェクトに対して企業が寄附を行った場合に、法人関係税から税額控除する仕組みです。実質的な企業の負担が最大で約1割まで圧縮されます。
地方への資金の流れの創出・拡大や地方への人材還流を促すことを目的に、地方創生応援税制「企業版ふるさと納税」の適用期限を3年延長します。
ただし、地域再生計画の認定が取り消される不適切事案も発生していることを踏まえ、寄附活用事業に係る執行上のチェック機能の強化や活用状況の透明化等の制度の健全な発展に向けて必要な見直しを行い、その効果検証を行うとの但し書きも付いています。
経産省の公式サイトによると、DX投資促進税制とは、産業競争力強化法に基づく自部門・拠点ごとではない、全社レベルのDXに向けた計画を主務大臣が認定した上で、DXの実現に必要なクラウド技術を活用したデジタル関連投資に対し、税額控除(最大5%)または特別償却30%を措置する計画認定制度です。
税制改正大綱は、2025年3月31日の期限をもって廃止すると明記しました。
日本の防衛力強化のためだとして、防衛特別法人税(仮称)が創設されます。防衛増税は岸田文雄前政権が2023年度の税制改正で決めたものを受けての対応です。
具体的には、法人税額に対して4%の付加税として課され、中小法人に配慮する観点から、課税標準となる法人税額から500万円が控除されます。
防衛特別法人税は、2026年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。
税額の計算方法を詳しく説明すると、防衛特別法人税の額は、各課税事業年度の課税標準法人税額(課税標準)に4%の税率を乗じて計算した金額となります。
課税標準法人税額は、基準法人税額から基礎控除額を控除した金額で、基準法人税額は、次の制度を適用しないで計算した各事業年度の所得に対する法人税の額とします。ただし、附帯税の額を除きます。
防衛特別法人税だけでなくたばこ税の増税も2023年度税制改正大綱のなかで、防衛力強化のため財源確保として盛り込まれていました。2024年度の税制改正大綱で、詳しい課税方針が出ています。
加熱式たばこについて、紙巻たばことの間の税負担差を解消するため、課税方式の適正化を行うとし、具体的には、価格要素を廃止し、重量のみに応じて紙巻たばこに換算する方式とするほか、軽量化による税負担の不公平が生じないよう、一定の重量以下のものは紙巻たばこ1本として課税する仕組みとします。
こうした見直しは、2026年4月、10月という2段階で実施します。
その上で、国のたばこ税率を、3段階で、2027年4月、2028年4月、2029年4月にそれぞれ0.5円/1本ずつ引き上げます。
このほか、事業承継時の相続税・贈与税負担を下げる「法人版事業承継税制」には、株式贈与日に後継者が役員に就任後3年以上経過している必要があるという「役員就任要件」がありました。
しかし、特例措置の期限である2027年12月末の3年前となると、2024年12月末までに役員に就任していないと法人版事業承継税制が使えなくなります。
そこで、税制改正大綱は、特例措置の役員就任要件を見直します。ただし、中小企業の円滑な世代交代を通じた生産性向上という待ったなしの課題を解決するための極めて異例の時限措置であることを踏まえ、適用期限は「今後とも延長しない」と明記しました。
個人版事業承継税制の事業要件も見直します。事業承継による世代交代の停滞や地域経済の成長への影響に係る懸念も踏まえ「事業承継のあり方については今後も検討する」との文言が盛り込まれています。
生産性向上や賃上げに資する中小企業の設備投資に関する固定資産税の課税標準の特例措置についても、賃上げを後押しするよう見直しを行った上で、その適用期限を2年延長します。
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