チームマネジメントとは 必要なスキルと成功に導く9つのポイント

会社や組織のリーダー、管理職の多くの方が、自分のチームをどのように動かしたら、成果が上げられるか、日々悩まれていると感じます。この記事では、多様な人の集まりであるチームを正しい方向に導き、成果を上げられるようにする手法であるチームマネジメントについて、労務の専門家である社会保険労務士が、そのポイントをわかりやすく解説します。
会社や組織のリーダー、管理職の多くの方が、自分のチームをどのように動かしたら、成果が上げられるか、日々悩まれていると感じます。この記事では、多様な人の集まりであるチームを正しい方向に導き、成果を上げられるようにする手法であるチームマネジメントについて、労務の専門家である社会保険労務士が、そのポイントをわかりやすく解説します。
目次
チームマネジメントとは、さまざまな人格、経験、所属を持つ多様なメンバーの自律性を大切にしつつ、同じ方向を向くよう促し、効率よく目標を達成できるチームへ導く手法・フレームワークです。
例えば、オアシス(おはよう、ありがとう、しつれいします、すみません)といった日常的な些細な言葉を、丁寧に発するコミュニケーションがその例です。リーダーとメンバー、メンバー間のコミュニケーションが活性化していけば、信頼貯金が積み上がっていきます。
お互いがちょっとした声掛けをしていけば、協力し合える関係が構築されていきます。さらに、気軽に意見交換ができるようになっていれば、チームマネジメントはできあがっています。
少子高齢化と多様な働き方が求められる現在、限られた人的資源を有効活用し、個々のメンバーの能力を結集して、生産性をあげ成果をあげていくため、チームマネジメントが求められています。
特にビジネスでは、大規模プロジェクトでの部門間連携に役立てられます。部門間の縄張り意識を払拭して、協力体制を構築でき、成功に導くことができるのです。
グローバル化が進む昨今、多国籍に展開する製品の開発が重要になっています。チームマネジメントができれば、それぞれの国や地域にあった製品を相互に理解し合い、よりよい製品を作り上げられます。
チームマネジメントは、ビジネスの場だけでなく、例えば、医療の分野、看護や介護の分野、スポーツの分野でも必要とされるフレームワークです。そのうち、看護や介護の分野について、少し説明します。
看護や介護の分野でのチームマネジメントは、看護師や介護士、ヘルパーという専門家が、専門的なケアを提供して、患者や利用者、家族に満足感を感じてもらうことを目的に行われます。
看護であれば医師や看護師、介護であれば介護福祉士、ケアマネ、ヘルパー、両者に共通する人として、行政の担当者や施設の事務担当者も関わってきます。チームのメンバーがサービスを受けている人の状況やニーズを共有し、メンバーが協力して適切な対応をすることで、その人にあった最適なサービスを提供できます。
また、メンバー間で適切な役割分担をしてコミュニケーションをとっていくと、スタッフ間の信頼関係が増し、連携が取れるようになります。これにより、サービスを受ける一人ひとりに合ったサービスを提供でき、過重労働やうっかりミスを防げます。
さらに、チームとして連携協力して対応できる体制を整えることで、緊急時や突発的な事態が生じても、適切な対応をできるようになります。
チームマネジメントに取り組むにあたり、着実に成果をあげていく必要があります。しかし、成果だけではありません。成果だけに目がいって、働きにくい職場、メンタルヘルスに支障が生じてしまう職場、その結果、社員が辞めてしまってはよくないのです。
ここでは、チームマネジメントの目的について再確認していきます。
チームマネジメントの目的 |
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・成果の創出 ・チームパフォーマンスの向上 ・メンバーの成長促進 ・よい人間関係の構築 ・働きがいのある職場の実現 |
個々のメンバーの能力をうまく引き出すことができれば、チームとしての成果が着実に上がり、組織の目標達成に貢献します。組織は成果を創出し続けて、社員の雇用を守っていく必要があります。
メンバーの自律性を促し、メンバーが自ら考え行動できるようになれば、集合体であるチームのパフォーマンスが向上します。それが、生産性の向上、効率的な作業、質の高い製品・サービスを生み出します。
リーダーからの適切な助言・アドバイスで、メンバーのスキルやマインドのアップ、能力開発を支援する側面があります。メンバーが成長していくことで、チーム全体の底上げにつながり、さらに成果が上がるという良い循環が回っていきます。
メンバー相互のコミュニケーションが活性化して「その場にいてもいいのだ」という心理的安全性を確保でき、エンゲージメントが高まっていきます。その結果、社員は辞めなくなり定着していき、生産性が上がっていきます。
老若男女、働き方の違い、国籍の違い、LGBTなどの多様性を受け入れる雰囲気が作り出されます。また、リーダーが公正な評価をして、リーダーとメンバー、メンバー間も認め合える、働きやすい職場を実現できます。
前提として、チームマネジメントには互いに相手を思いやる気持ちが大切です。リーダーとメンバー、メンバー間で相手を思いやる気持ちがなければ、スキルだけ磨いてもチームマネジメントはうまくいきません。
その点を踏まえながら、具体的にどのようなスキルが必要なのかを解説していきます。
チームマネジメントに必要なスキル | |
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コミュニケーションスキル | 上から目線の指示、一方的な指示ではなく、一人の人間として相手を尊重し、横から目線の対等な関係でコミュニケーションをとる |
目標設定・進捗管理スキル | メンバーの長所や強みを生かせる目標を設定する。行き詰ったときは早くその事実をつかみ、助言や指導で軌道修正する |
モチベーションマネジメントスキル | 個々のメンバーの強み・弱みを把握して、強みを認めてやる気を引き出す。弱みを見る視点を変えて、肯定的に認めていく |
コミュニケーションスキルは、チームマネジメントの土台となるスキルです。チーム内の円滑なコミュニケーションを促進し、信頼関係を築くために必要です。リーダーは上から目線の指示、一方的な指示ではなく、一人の人間として相手を尊重し、横から目線の対等な関係でコミュニケーションをとります。
そのために、リーダーは正しく傾聴できる能力を伸ばしていく必要があります。傾聴力を上げるためには、傾聴の3条件といわれる「自己一致」「無条件の受容」「共感的理解」を意識します。
「自己一致」とは、リーダー自身が自分に誠実で、どのような自分であったとしても、自分自身を常に受け入れていることです。
「無条件の受容」とは、メンバーがいかなることを話したとしても、肯定的に認めることです。その際に、条件付けをしてはいけません。メンバーが話したこと(できごと、思考、感情、価値観)がたとえネガティブなものであっても、その事実を中立的に受け止め、理解し承認する姿勢、態度が、無条件の受容です。
「共感的理解」とは、相手の目で見て、相手の耳で聴いて、相手の心で感じることです。
傾聴のポイント |
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①リーダーとメンバーが対等に向き合うことで、メンバーはリーダーを受け入れます ②相手になって追体験します。思考で想像するのではなく、体で感じようとします ③メンバーの話を聴きながら、その話を一般化して決めつけてはいけません。メンバーの体験は独自のものであり、敬意をもって接すべきものです ④メンバーの個人的なことを、あたかもリーダー自身のことであるかのように感じながら聴きます |
企業・組織には経営理念や事業方針があり、それをもとに企業・組織の目標が設定されます。企業・組織の目標からチームの役割が決められるので、リーダーはその役割が達成できるようチーム全体の目標を設定する必要があります。
チーム全体の目標が設定されたら、個々のメンバーの設定をしていきます。リーダーはメンバーと話し合いを行い、メンバーの長所や強味を生かせ、やる気が出せる目標としていきます。
目標の達成に向けて、順調に進められればよいですが、行き詰まることや壁にあたることがあります。リーダーはいち早くその事実をつかみ、助言や指導で、軌道修正していかなければなりません。
また、問題が発生した場合にメンバーが隠してさらに問題が大きくなることを避けるため、リーダーはメンバーが何でも話せるような雰囲気をつくっておく必要があります。信頼関係を構築するスキルも求められるというわけです。
モチベーションマネジメントスキルは、メンバーのモチベーション、やる気を高め、維持するためのスキルです。ここでいうモチベーションとは内発的モチベーションであって、報酬、地位などの外発的モチベーションではありません。
内発的モチベーションとは、好奇心や関心によるものであって、チームに役立ちたい、その仕事がしたいという心の底から出てくる動機のことをいいます。
リーダーは個々のメンバーの強み・弱みを把握して、強みを認めてやる気を引き出します。弱みを無理に修正させたり、失敗を責めたりはしません。誰もが、自分の性格を否定されたり、そんなことではダメだと否認されたりすると、内発的モチベーションは下がっていきます。
そうではなく、その弱みを見る視点を変えて、肯定的に認めていきます。失敗であっても、プロセスでよかったことを認め、自信を回復させます。自己肯定感を満たし、自己効力感を高めることで、内的モチベーションがアップできるよう導きます。
チームマネジメントを成功させるためには、いくつかのポイントがあります。そのポイントについて説明します。
チームマネジメントを成功させるために大切なこと |
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・明確な目標設定とその共有 ・効果的なコミュニケーション ・適切な権限委譲と責任分担 ・多様性の尊重と受容 |
チーム全体の目標を作成するにあたっては、リーダーの考えをメンバーに開示して、メンバーの意見も聴きながら目標を設定することが大切です。これにより、目標達成がメンバーにとっても自分ごとになります。
リーダーはチーム全体の目標を設定し明文化したうえで、説明してメンバーと共有します。個々のメンバーはチーム全体の目標を実現するため、自分の役割として目標を設定していきます。このとき大切なのが、全体を俯瞰して見れるリーダーとの話し合いです。
チーム全体の目標と方向性と、個々のメンバーの目標の方向性が一致することで、チームの目標は実現できます。リーダーは個々のメンバーの目標をとりまとめて、チーム全体の目標とともに、メンバー全員と共有します。共有することで、チームの協力体制ができあがり、目標達成に向けての意識の構築ができあがります。
また、リーダーは個々のメンバーと、1週間に1回など定期的に1on1を行ったり、チーム全員で定期的なミーティングを行ったりするのもよいでしょう。
チーム全体での共有を計画と実際がどの程度の乖離があるのか、乖離があれば、どう軌道修正していいくとよいのかを常に心掛け、リスクの芽を感じたら、先回りして解決しておくことも大切です。
チームでの目標達成のためには、円滑なコミュニケーションは欠かせません。自然発生的に、気兼ねなく、会話ができる雰囲気づくりが大切です。そのためには、リーダーとメンバー、メンバー間の信頼関係の構築が必要です。
第一歩はあいさつです。相手を思いやったあいさつをする。これが相手の存在を認めることになります。リーダーはメンバーの報連相を聞いて、不満に感じ、物足りないと思っても、結論を一方的に叱ることなく、そのプロセスを認めるようにします。
リーダーの言動をメンバーはよくみています。リーダーの承認する態度によって、メンバーがやる気を出しモチベーションが上がって、信頼関係ができていきます。一朝一夕では信頼関係はできません。リーダーは粘り強く取り組んでいくことが求められます。
リーダーはメンバーに、あらかじめ報連相の約束事を示していきます。最低限に必要な報連相はしてもらわないといけませんが、あまりに頻度の高い報連相を求めると、メンバーは統制されていると感じ、やる気を失います。リーダーはメンバーの自律性を伸ばすよう、損なわせないよう心掛けます。
リーダーは自分に与えられた権限をすべて自分で保持し、メンバーを駒のように使うのではなく、メンバーにその役割に応じた権限を委譲します。メンバーは委譲された権限のもと、自らの責任と裁量のもと自主的に仕事を進めていきます。
任されることでメンバーはやる気がでて積極的に仕事に取り組み、成長していきます。その過程で、リーダーはメンバーの成長が促進できるよう、適切なアドバイスもしていきます。
変化の速度が早い社会のなか、一つの価値観にとらわれていては取り残されてしまいます。また、チームのメンバーには、性別の違いだけでなく、多様なバックグランドを持っている人、価値観も世代間だけでなく、個々のメンバー間でも多様なものになっています。
リーダーは、そうした多様性を受け入れるため、男女雇用均等法や障がい者雇用促進法など法令、ハラスメントの正しい知識、メンバー外国の人がいればその国の文化・歴史・宗教などの知識を習得します。LGBTなど、人格に関することを理解する必要もあるでしょう。
リーダーが正しく多様性を尊重し、受け入れる姿勢を示し、メンバーにも伝えていくことで、チーム全体が多様性を尊重し、受容できるようになります。メンバーが他のメンバーのバックグランドを理解することで、チームの一体性が促進できます。
チームマネジメントに取り組むうえで、リーダーが陥りがちなことについて説明します。
チームマネジメントに取り組むうえでの注意点 |
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・画一的なマネジメント ・統制によるマネジメント ・過剰な管理と指示 ・リーダーのプレーヤー化 ・注意ができないリーダー |
メンバーの性格がそれぞれ異なるように、強みもあれば弱みもあります。また、経験や能力もさまざまです。個々のメンバーの強みにフォーカスし、強みが行かせるようにマネジメントしていきます。
メンバーが個々の強みを発揮して、自分の弱みを他のメンバーが補っていければ、チームとしてパフォーマンスはより大きなものになっていきます。
リーダーがメンバーを自分の思いどおりにしようとすると、統制によるマネジメントとなっていきます。メンバーは「やらされている」と感じると、やる気をそがれ、リーダーとメンバー間の信頼関係はなくなってしまいます。
メンバーから逐次報告を求めたり、事細かな指示をすることは止めた方がよいでしょう。このようなマイクロマネジメントは、リーダーは仕事をしているような気になりますが、メンバーがやらされている、監視されているという感覚に陥り、モチベーションが下がっていきます。
また、事細かな指示によって、メンバーは「言われたことだけやればよい」という待ちの姿勢になって、成長が止まってしまいます。
リーダーは、メンバーに任せた仕事はそのメンバーに任せます。リーダーはメンバーよりも能力が高く、経験も多いので、メンバーの仕事が遅く感じてしまい、自分がやった方が早いと、自らその仕事をやりたくなります。
そういう気持ちになっても、リーダーがその仕事をやってはいけません。メンバーが成長する機会を奪ってしまうことになります。リーダーは時間がかかっても見守ることが大切です。
チームが目標に向かって頑張っている雰囲気ではなくなったり、チームの足を引っ張るメンバーが出てきたりしたら、リーダーはチームの規律を守るため、時に叱ることも必要です。
パワハラと言われることを恐れて、叱ることに躊躇する必要はありません。適切な業務指導はパワハラではありません。
チームマネジメントがうまくできているチームでは、チームの目標が達成できるだけでなく、リーダーとメンバーが成長します。チームの目標達成ができれば、会社の目標も達成されます。このような好循環が回り始めれば、会社は発展していきます。チームマネジメントを取り入れると、会社の発展に貢献します。
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