2024年度(令和6年度)税制改正大綱 中小企業向けのポイントを整理
政府与党は2024年(令和6年)度の税制改正大綱を決定しました。物価高に対応するため、賃上げしたが納税していない赤字の中小企業向けに5年間の繰越控除を設けたり、交際費から除外される飲食費の上限額が1人あたり5000円だったのが1万円に引き上げられたりします。中小企業向けのポイントを整理しました。
政府与党は2024年(令和6年)度の税制改正大綱を決定しました。物価高に対応するため、賃上げしたが納税していない赤字の中小企業向けに5年間の繰越控除を設けたり、交際費から除外される飲食費の上限額が1人あたり5000円だったのが1万円に引き上げられたりします。中小企業向けのポイントを整理しました。
目次
国の税金の仕組みである「税制」は、経済社会の変化に対応するため、毎年見直されています。
税制改正大綱とは、各省庁から出される税制改正の要望などを受け、与党の税制調査会が中心となって翌年度以降の税制改正の方針をまとめるものです。いわば税制に関する法律改正のたたき台です。
政府与党は2023年12月13日、2024年(令和6年)度の税制改正大綱を決定しました。自民党の公式サイトに公表されています。
このなかから中小企業に関係の深いテーマを中心に紹介します。
賃上げ促進税制とは、企業が従業員の給与を増やせば、法人税から一定額を差し引ける仕組みのことを指します。
大企業は要件が厳しくなりますが、資本金1億円超、従業員2000人以下の「中堅企業」に対しては、従来の賃上げ要件を維持しつつ、控除率を見直し、より高い賃上げをおこないやすい環境を整備する方針です。
これまで、中小企業の6割は赤字決算で賃上げ促進税制の恩恵を受けられていませんでした。そこで、赤字決算の中小企業も賃上げする動機付けにしようと、新たに繰越控除制度を新設しました。当期の税額から控除できなかった分を5年間繰り越すことを可能となっています。
取引先との接待に使われる交際費は損金に算入できない(税負担を軽くできない)のですが、2006年度の税制改正で1人5000円以下の飲食費は損金として算入できるようになっていました。
2024年度税制改正大綱では、あらたに交際費から除外され経費として損金算入できる「1人あたり5000円」の飲食費の上限が1万円に引き上げられます。
国税庁の公式サイトによると、中小法人の接待飲食費は、接待飲食費の額の50%相当額の損金算入と、従前どおりの定額控除限度額までの損金算入のいずれかを選択適用することができるようになっており、こちらは継続される見通しです。
中小企業庁によると、事業再編投資損失準備金制度とは、一定の条件下で他社をM&Aするときに、M&A実施後のリスクに備えて投資額の70%以下を準備金として積み立てたときに、その金額を損金に算入できる制度のことを指します。
2024年度税制改正大綱では、成長意欲のある中堅・中小企業が複数の中小企業を子会社化するような成長を後押しするため、複数回M&Aを実施する場合は、最大100%まで拡充できるようになるといいます。また、据置期間も5年間から10年間へ延長されます。
法人版事業承継税制は、2018年1月から10年間の特例措置として、2024年3月末までに特例承認計画が提出された場合、事業承継時の贈与税・相続税負担を実質ゼロにする時限措置が設けられている制度です。
改正前 | 改正後 | |
---|---|---|
特例承認計画・個人事業承継計画の提出期限 | 2024年3月末まで | 2026年3月末まで |
特例承認計画の適用期限 | 2027年12月末まで | 変わらず |
個人事業承継計画の適用期限 | 2028年12月末まで | 変わらず |
この特例承認計画の提出期限を2026年3月末までと2年延長します。ただし、きわめて異例の時限措置だとして、2027年12月末まで適用期限については今後も延長しない方針です。個人版事業承継税制の個人事業承継計画も同様に2年延長します。
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置により、中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を取得した場合、合計300万円までを限度に、即時償却(全額損金算入)することができるようになっています。
インボイス制度の導入等により事務負担が増加する中で、①償却資産の管理などの事務負担の軽減、②事務処理能力・事務効率の向上を図るため、この制度を2年間延長し、2025年度末までとする方針です。
法人事業税の外形標準課税とは、2004年度に資本金1億円超の大法人を対象に導入され、資本金などの額をもとに課税する方式です。2015、2016年度税制改正で段階的に拡大されてきました。
しかし、コロナ禍で、大企業が資本剰余金に移すことで資本金を1億円以下に減資し、税制上の中小企業となって課税から逃れようとする事例が相次ぎました。
そこで、税制改正大綱では、見直しする方針を示しました。具体的には、減資への対応として、現行基準(資本金1億円超)は維持しつつ、前事業年度に外形標準課税の対象であった法人が資本金1億円以下になった場合でも、資本金と資本剰余金の合計額が10億円を超える場合には外形標準課税の対象とする予定です。
ただし、中堅·中小企業のM&Aやスタートアップへの影響が生じないようにするとしており「今回の見直しは、外形標準課税の対象を中小企業に広げるものではない」と明記しています。
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