目次

  1. 法人税の計算方法 法人税=課税所得×法人税率
  2. 課税所得とは 課税所得=益金-損金
    1. 「加算調整項目」と「減算調整項目」を明らかにする
    2. 会計上の「利益」を調整(加算・減算)して課税所得を導く
  3. 法人税率を確認するには
    1. 資本金を確認する 1億円超か否か
    2. 年間所得を確認する 800万円超か否か
    3. 法人の種類を確認する
    4. 法人税率確認一覧表
  4. 法人税の計算シミュレーション(事例)
    1. 資本金1億円以下で年間所得800万円以上の普通法人の場合
    2. 年間所得800万円以上の協同組合の場合
  5. 法人税の計算で気をつけるべきポイント
    1. 納付書を忘れずに書く
    2. 中間申告及び納税のルールを抑える
  6. 法人税に関するよくある疑問
    1. 法人税を節約するには?
    2. 法人税を仕訳する際に気をつけることは?
  7. 期限内に法人税を申告・納付するために

 法人税は、企業の各事業年度の課税所得に法人税率を乗じて計算されます(法人税=課税所得×法人税率)。

 法人税は企業が稼いだ「利益」に対して一律の割合で課税されるものではありません。法人税を計算するためには、「利益」を税法上の所得金額(課税所得)として整理し、また所得金額に応じた「法人税率」を乗じる必要があります。

法人税の計算方法とは?課税所得や法人税率の確認の仕方
法人税の計算方法とは?課税所得や法人税率の確認の仕方(デザイン:吉田咲雪)

 法人税を計算するために必要な「課税所得」とは、税法上の所得金額のことであり、「益金」から「損金」を引いた金額を指します(課税所得=益金-損金)。似た言葉として会計上の「利益」がありますが、「利益」とは「収益」から「費用」を引いた金額を指します(利益=収益-費用)。

 「益金」とは税法上の「収益」であり、「損金」とは税法上の「費用」と考えていいでしょう。しかし、税法上の「課税所得」と会計上の「利益」は異なる金額になるので注意が必要です。

 会計上の「利益」から税務上の「課税所得」を計算する場合、「加算調整」と「減算調整」を行います。具体的な手順は以下のとおりです。

 「加算調整」と「減算調整」を行うためには、まず対象となる収益・費用の項目(「加算調整項目」or「減算調整項目」)を明らかにしなければなりません。

加算調整項目

 「加算調整項目」とは、「税務上は益金に含まれるが、会計上は収益に含まれない項目(益金算入項目)」と「税務上は損金に含まれないが、会計上は費用に含まれる項目(損金不算入項目)」を指します。

 益金算入項目の例としては、無償による資産の譲渡やサービスの提供などによって得た利益などがあげられます。また、損金不算入項目の例としては、税金(法人税・住民税など)や資産(有価証券等)の評価損、寄付金や交際費の損金算入限度超過額などがあげられます。

減算調整項目

 「減算調整項目」とは、「税務上は益金に含まれないが、会計上は収益に含まれる金額(益金不算入項目)」と「税務上は損金に含まれるが、会計上は費用に含まれない金額(損金算入項目)」を指します。

 益金不算入項目の例としては、受取配当金や資産(有価証券等)の評価益、還付された税金(法人税等)などがあげられます。また、損金算入項目の例としては、国庫補助金などで取得した固定資産の圧縮額などがあげられます。

 加算調整項目と減算調整項目がわかったら、次の計算を行います。

課税所得(益金 - 損金)= 会計上の利益(収益 - 費用)+ 加算調整項目 - 減算調整項目

 上記の式のように、加算調整項目を会計上の利益に加算することを「加算調整」といいます。また、減算調整項目を会計上の利益に減算することを「減算調整」といいます。こうした調整によって「利益」から「課税所得」を導きます。

 法人税を計算するには、課税所得のほかに「法人税率」を調べなければなりません。法人税率は、中小企業に対する軽減措置などがあるため、法人の種類や資本金の金額、年間の所得金額によって異なります。法人税率を調べるには、以下の項目を確認する必要があります。

 普通法人の場合は、資本金が1億円を超えるか否かで法人税率が異なります。

 資本金が1億円超の場合は、税率は23.2%となりますが、資本金が1億円以下の法人(中小法人)の場合には、所得に応じて、15%の軽減税率及び23.2%の税率が適用されます。軽減税率の対象となる法人は、「資本金が1億円以下の法人」または「資本もしくは出資を有しない法人」で、大法人(資本金が5億円以上)による完全支配関係のない法人などです。

 なお、資本金が1億円以下の法人(中小法人)に対する税率の軽減措置については、現時点では2025年3月31日までに開始する事業年度まで適用される見込みです(2023年度税制大綱で、軽減措置の2年延長が明記されました)。

 年間所得が800万円を超えるか否かでも法人税率が異なります。

 普通法人で資本金が1億円以下の場合には、所得が800万円までは15%、800万円を超える部分については23.2%の税率が適用されます。

 法人の種類によっても法人税率が異なります。

 大きく「普通法人」と「協同組合など」、「人格のない社団」、「公益法人」で分けることができます。それぞれの例は以下の表のとおりです。

普通法人 株式会社、合同会社、一般財団法人、有限会社、医療法人など
協同組合など JA、消費生活協同組合など
人格のない社団など PTA、労働組合、同窓会など
公益法人など 公益社団法人、公益財団法人、宗教法人、学校法人、NPO法人など

 なお、利益を得ることを目的とした「普通法人」と「共同組合など」に関しては、すべての所得が課税対象になります。それに対し、利益を得ることを目的としていない「人格のない社団など」と「公益法人など」に関しては原則非課税であり、収益事業から生じた所得のみ課税対象となります。

 以上の項目を確認したら、下記の表で実際の法人税率を確認しましょう。

資本金別・普通法人の法人税率確認表
資本金 所得金額 法人税率
1億円超 23.2%
1億円以下 年間800万円超 23.2%
年間800万円以下 ・適用除外事業者:19%
・それ以外:15%

 ※適用除外事業者とは、過去3年間の所得の金額の平均額が15億円を超える法人などをいいます。

種類別・法人税率確認表
法人の種類 所得金額 法人税率
協同組合など 年間800万円超 19%
年間800万円以下 15%
特定の医療法人 年間800万円超 19%
年間800万円以下 ・適用除外事業者:19%(連結親法人の場合:20%)
・それ以外:15%
公益法人など 年間800万円超 ・公益社団法人、公益財団法人、非営利型法人など:23.2%
・上記以外の公益法人など:15%
年間800万円以下 15%
人格のない社団など 年間800万円超 23.2%
年間800万円以下 15%

 では、実際に法人税の計算シミュレーションを行ってみましょう。以下で2つの計算例について解説します。

 資本金1億円以下で年間所得が1,500万円の普通法人の法人税額は、以下のように計算します。

800万円 × 15% +(1,500万円 - 800万円)× 23.2% = 282.4万円

 1億円以下の普通法人の場合、800万円以下の課税所得と800万円超の課税所得で法人税率が変わるので注意しましょう。800万円以下の課税所得に対し15%の法人税率を乗じ、800万円超の課税所得に対し23.2%の法人税率を乗じて計算します。

  年間所得が1,500万円の協同組合の法人税額は、以下のように計算します。

800万円 × 15% +(1,500万円 - 800万円)× 19% = 253万円

 普通法人ではない協同組合などは、法人税率が19%及び15%と比較的低めに設定されています。800万円以下の課税所得に対し15%の法人税率を乗じ、800万円超の課税所得に対し19%の法人税率を乗じて計算します。

 法人税の計算をする際、特に気をつけるポイントはなんでしょうか。以下では2つの注意点について解説します。

 法人税は、事業年度の終了日から2カ月以内に申告及び納付する必要があります。

 申告書を作成した後は、納付書も忘れずに記入して、法人税を納付しましょう。納付書は税務署から郵送されてきます。また、e-taxなどを利用して電子納税することも可能です。

 前期の法人税額が20万円を超えている場合には、中間納付を行う必要があります。

 中間納付とは、事業年度の期首から6カ月を経過した日から2カ月以内に予定申告により納付します。中間納付では、前期の納税額の半分の金額を納付します。なお、仮決算により計算した金額を中間納付額とする方法もあります。※仮決算とは、期中でも年度末と同様の決算を行うことをいいます。決算なので、減価償却費などの決算整理仕訳も計上し、法人税額などを計算します。

 法人税に関してよく質問される事項が2つあります。以下でそれぞれ解説します。

 適切な範囲で課税所得を減らすことで、法人税を減らす(節税)することができます。つまり、税法上の損金を増やしたり、益金を減らすことで法人税を減らせるということです。

 例えば、中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)などの保険料は、損金にすることができます。また、売上を計上するタイミングを出荷基準から検収基準に変更すると、売上の計上時期を先延ばしにできるため、益金を減らすことができます。そのほか、「雇用促進税制」や「中小企業投資促進税制」などの特別税額控除制度を利用することで、法人税額を節税することができます。

 期末に法人税を計算したら、以下の仕訳を計上する必要があります。

(借方)法人税等(法人税、住民税及び事業税)/(貸方)未払法人税等

 なお、法人税の中間納付をした場合には、仮払法人税等の科目などで計上します。そしてその後、期末に法人税額が確定した際に未払法人税等と相殺します。

 法人税は「課税所得×法人税率」という式によって計算します。

 法人税の課税対象となる所得は、会計上の利益に対し、必要な調整を行って導きます。また、法人税率も法人の種類や規模によって異なります。なお、法人税率は税法改正などにより税率が変更になることもあります。適切な税額計算を行い、期限内に申告・納付ができるように日頃から意識しておくが大切です。