2023年度税制改正大綱、中小企業向けに設備投資・研究開発を後押し
物価上昇、円安、賃上げなどで中小企業の経営環境が厳しくなるなか、2023年度(令和5年度)税制改正大綱では、生産性の向上につながる設備投資や研究開発への支援が盛り込まれています。中小企業向けの特例措置のほか、DX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制やエコカー減税の見直しについても紹介します。
物価上昇、円安、賃上げなどで中小企業の経営環境が厳しくなるなか、2023年度(令和5年度)税制改正大綱では、生産性の向上につながる設備投資や研究開発への支援が盛り込まれています。中小企業向けの特例措置のほか、DX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制やエコカー減税の見直しについても紹介します。
目次
国の税金の仕組み「税制」は経済社会の変化に対応できるよう、予算づくりと一緒に毎年見直されています。税制改正大綱とは、各省庁からあがる税制改正の要望などを受け、与党の税制調査会が中心となって翌年度以降の税制改正の方針をまとめるものです。いわば税制に関する法律改正のたたき台です。
財務省の公式サイト「税制改正の概要」によると、2023年度の税制改正大綱のポイントは次の通りです。
このなかから中小企業に関係の深いテーマを中心に紹介します。
2023年度税制改正大綱では、生産性の向上を目指す中小企業が設備投資や研究開発への支援が盛り込まれました。中小企業の経営環境を次のように説明しています。
「地域経済の中核を担う中小企業の経営状況は、業種により違いも見られているが、コストプッシュ型の物価上昇などにより、収益環境の悪化が懸念されてもいる。雇用全体の7割を創出する中小企業において賃上げの機運を醸成していくためにも、その生産性の向上や経営基盤の強化を促すことが重要である」
具体的な支援策は次の通りです。
国税庁の公式サイトによると、中小企業経営強化税制とは、中小企業の稼ぐ力を向上させる取組を支援するため、中小企業等経営強化法による認定を受けた計画に基づく設備投資について、即時償却か税額控除(10%、資本金3000万円超の場合は7%)のいずれかの適用を認める措置です。
中小企業の生産性向上やDXに資する投資を後押しするため、中小企業経営強化税制の適用期限を2年間延長します。
国税庁の公式サイトによると、中小企業投資促進税制とは、中小企業における生産性向上を図るため、一定の設備投資を行った場合に、税額控除(7%、資本金3000万円以下の中小企業者等に限る)または特別償却(30%)の適用を認める措置です。
物価高・新型コロナ禍などの中、設備投資に取り組む中小企業を支援するため、適用期限を2年間延長します。対象設備は次の通りです。
このほか、赤字の中小企業でも賃上げや前向きな投資を可能とする固定資産税の特例措置を新設します。対象となるのは、市町村から先端設備等導入計画の認定を受けた中小企業です。計画のなかに、賃上げ表明があるか否かによって固定資産税の軽減割合が1/2か1/3か変わります。
中小企業軽減税率(所得800万円まで、法人税率を19%→15%に軽減)を2年間延長します。
対象 | 本則税率 | 租特税率 | |
---|---|---|---|
中小法人 (資本金1億円以下の法人) |
年800万円超の所得金額 | 23.2% | - |
年800万円以下の所得金額 | 19% | 15% |
国税庁の公式サイトによると、中小企業技術基盤強化税制とは、中小企業などが試験研究費の総額の一定割合を法人税から控除できる制度です。
2023年度は増減試験研究費割合に応じた控除率・控除上限の上乗せ措置を一部見直した上で、時限措置の3年間を延長します。ただし、コロナ特例については期限通りに廃止します。
激化する自然災害に対し、サプライチェーンの強靱化のためにも、重要設備(データサーバーや生産設備等)の耐震対策は重要となっています。
そこで、防災・減災に資する設備投資を後押しする中小企業防災・減災投資促進税制(特別償却18%)について、ニーズの高い耐震装置を対象設備に追加した上で、2年間延長します。
2025年3月31日までに「(連携)事業継続力強化計画」の認定を受けた中小企業者が対象となります。
インボイス制度導入にあたって、中小・小規模事業者の負担軽減のために以下の対応をとります。
地域未来投資促進税制にかかる課税特例の確認を受けた事業は、全国で累計2866件に上ります(2022年12月時点)。
ニーズが高いとして、地域未来投資促進税制(特別償却20~50%または税額控除2~5%)における上乗せ支援の対象を追加した上で、2年間延長します。
日本企業が、DX推進において課題となっているデジタル人材の育成・確保に取り組むとともに、成長性の高い海外市場の獲得を含めた売上上昇につながる「攻め」のデジタル投資に踏み切ることを後押しするため、要件を見直し、適用期限を2年間延長します。
地域性などを踏まえた多様な酒類の製造などに積極的に取組み、酒類業の健全な発達に寄与する中小事業者に対して支援を行うため、新たな酒税の軽減措置をとります。
現行の酒税の特例措置は廃止し、新たな特例措置への移行に伴う激変緩和のための経過措置をとります。
自動車重量税のエコカー減税・自動車税・軽自動車税の環境性能割は、現行制度を2023年末まで据え置きます。クリーンディーゼル車に対する現行の取扱いも、2023年末まで延長します。据え置き期間後は、燃費性能の向上を踏まえつつ、現行の優遇対象割合、免税対象割合を維持する形で、2025年度までの見直しを実施します。
自動車税・軽自動車税の種別割におけるグリーン化特例について、3年間延長します。
税制改正大綱には、防衛力強化のための増税も明記されました。2027年度に1兆円強を確保するため、法人税、所得税、たばこ税について、以下の対応をとる予定です。
法人税については、付加税という形で課税され、税率は4~4.5%です。つまり、所得に対する税率ではなく、納税額に対して4~4.5%が上乗せされます。中小企業の場合、法人税額から500万円が控除されます。つまり、法人税の納税額が1200万円だった場合、1200万円-500万円=700万円に4~4.5%の税率がかかり、28万~31.5万円の増税となります。
所得税については、所得税額に当分の間、税率1%の新たな付加税を課します。その分、復興特別所得税の税率を1%引き下げつつ、復興事業に影響を与えないよう復興特別所得税の課税期間を延長します。
所得税への上乗せ分は差し引きで変わりませんが、復興特別所得税の課税期間が長くなる分だけ実質増税となります。
たばこ税については1本あたり3円相当の引き上げを段階的に実施すると説明しています。ただし、「国産葉たばこ農家への影響に十分配慮しつつ、予見可能性を確保した上で」の実施となる見込みです。
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