賃上げ支援助成金パッケージに1500億円 政府の2025年度当初予算案
政府は、2025年度(令和7年度)の当初予算案で、賃上げを支援するための助成金パッケージに約1500億円を計上しました。人材開発支援助成金やキャリアアップ助成金など、賃上げ支援助成金パッケージに含まれる8つの助成金と拡充内容について紹介します。
政府は、2025年度(令和7年度)の当初予算案で、賃上げを支援するための助成金パッケージに約1500億円を計上しました。人材開発支援助成金やキャリアアップ助成金など、賃上げ支援助成金パッケージに含まれる8つの助成金と拡充内容について紹介します。
目次
賃上げとは、基本給のベースアップ(ベア)や定期昇給などにより、企業が労働者に支払う賃金を増やすことを指します。
物価高が続くなかで、政府は2020年代に最低賃金1500円を実現するという目標を掲げています。経済産業省はサプライチェーン全体を巻き込んだ取引適正化が必要だとして、公正取引委員会とともに「下請法の改正や執行強化を実現」することを掲げています。
同時に、中小企業向けの中小企業成長加速化補助金や中小企業新事業進出補助金など新しい補助金だけでなく、ものづくり補助金、事業承継・M&A補助金などの既存の補助金までも、賃上げを目指す企業を優遇する方向へシフトしています。
政府は補助金だけでなく、厚生労働省が所管する助成金についても、2025年度当初予算案に賃上げ支援助成金パッケージとして約1500億円を盛り込みました。生産性向上や、正規・非正規の格差是正、より高い処遇への労働移動等を通じ、労働市場全体の「賃上げ」を支援することを目的にしています。
賃上げ支援助成金パッケージは、以下の8つの助成金が含まれています。
業務改善助成金とは、業務改善助成金とは、生産性向上に資する設備投資等(機械設備、コンサルティング導入や人材育成・教育訓練)を行うとともに、事業場内最低賃金を一定額以上引き上げた場合、その設備投資などにかかった費用の一部を助成するものです。
2024年度補正予算には、関連予算297億円を計上しました。2025年度は、地域間格差に配慮した助成率の区分を再編し、支援時期を重点化する予定です。
働き方改革推進支援助成金とは、労働時間の縮減や年次有給休暇の促進に向けた環境整備等に取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成するものです。
対象労働者の賃金を3%、5%増加させた場合の加算に加え、2025年度は7%増加させた場合の助成を強化します。また、恒常的な長時間労働が認められる企業における設備投資について、一部助成対象の要件を緩和する予定です。
人材開発支援助成金とは、従業員の職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための訓練経費や賃金の一部を助成する制度です。
2025年度は訓練終了後に賃上げした場合の賃金助成額を引き上げます。賃金上昇率を踏まえた賃金助成額のベースアップを実施します。
人材確保等支援助成金とは、魅力ある職場づくりのために事業主や事業協同組合等に対して助成する制度です。
人材確保等支援助成金は複数のコースがありました。このうち、雇用管理制度・雇用環境整備助成コースは、雇用管理改善につながる制度等(賃金規定・人事評価制度や職場内の雇用環境の整備等)を導入し、離職率低下を実現した事業主に対して助成するものです。
雇用管理制度助成コースを2025年度から再開するときに、人事評価改善等助成コースを統合し、作業負担を軽減する機器導入への支援や対象労働者の賃金を5%以上増加させた場合の加算を導入する予定です。
キャリアアップ助成金とは、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成するものです。
キャリアアップ助成金は複数のコースがありました。このうち、正社員化コースとは、非正規雇用労働者を正社員転換し、従前よりも賃金を3%以上増加させた場合、賃金規定等改定コースは非正規雇用労働者の基本給を定める賃金規定を3%以上増額改定し、その規定を適用した場合に助成するものです。
2025年度は、賃金規定等改定コースについて、賃上げ率の新たな区分を設定(2区分→4区分、賃上げ率6%以上の場合はさらに引き上げ)、昇給制度を新たに設けた場合の加算措置を創設する予定です。
早期再就職支援等助成金とは、離職後3ヵ月以内に期間の定めのない労働者として雇い入れられた再就職援助計画等の対象者に助成金を支給する制度です。
雇入れ支援コースは、離職後3ヵ月以内に、期間の定めのない労働者として雇い入れ、雇入れ前の賃金と比べて5%以上増加させることを要件とし、中途採用拡大コースは、中途採用者の雇用管理制度を整備し、中途採用率を一定以上向上させることを要件とし、45歳以上の中途採用者を一定以上拡大させ、雇入れ時の賃金を雇入れ前と比べて5%以上増加させた場合も対象としています。
特定求職者雇用開発助成金は、雇用困難者や障害者などの特定求職者を雇用する事業主に助成金を支給する制度です。
2025年度も就労経験のない職業に就くことを希望する就職が困難な者を雇い入れ、人材育成計画を策定した上で、賃金を雇入れ日から3年以内に5%以上増加させた事業主に対して助成する予定です。
産業雇用安定助成金とは、事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、在籍型出向により労働者の雇用を維持する場合に、出向元・出向先双方の事業主に対して経費の助成を行う助成金です。
2024年度補正予算では、災害特例人材確保支援コースを創設することにしています。
また、2025年度は、これまでと同様、労働者のスキルアップを在籍型出向により行うとともに、当該出向から復帰した際または出向開始1年後等の賃金を出向前と比して5%以上増加させた事業主(出向元)に対し、出向中の賃金の一部を助成する予定です。
賃上げ支援助成金パッケージのポイントとして、まずは、賃上げ率の重視があります。多くの助成金で3%以上、5%以上、7%以上の賃上げを要件としている場合、または加算措置の対象となる場合があり、高い賃上げ率ほど優遇される傾向があります。
つぎに、非正規雇用労働者の処遇改善です。正社員化や賃金規定の見直しを支援する助成金が複数あり、非正規雇用労働者の待遇改善が重要なテーマとなっています。
さらに、リスキリングを重要な目標として掲げるなか、人材育成にも重点を置いています。スキルアップや能力開発を支援する助成金で、長期的な企業の成長に欠かせない人材育成が重視されています。
最後に、就職困難者の雇用や中途採用の拡大を支援することで、多様な労働者の雇用促進もポイントになります。
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