中小企業向け補助金、2025年の要点は賃上げと100億円企業の創出

中小企業庁の山下隆一長官は2025年1月1日、年頭所感を公表しました。年頭所感からは賃上げを実現することと100億円企業を増やしたいという強い意志が読み取れます。コロナ禍のような「補助金バブル」はすでに過ぎており、今後、中小企業が補助金を活用する場合、政府の政策の流れを把握しないと活用しづらくなるでしょう。
中小企業庁の山下隆一長官は2025年1月1日、年頭所感を公表しました。年頭所感からは賃上げを実現することと100億円企業を増やしたいという強い意志が読み取れます。コロナ禍のような「補助金バブル」はすでに過ぎており、今後、中小企業が補助金を活用する場合、政府の政策の流れを把握しないと活用しづらくなるでしょう。
目次
中小企業庁の公式サイトは2025年1月1日、山下隆一長官の年頭所感を公表しました。
年頭所感は、デフレ経済から脱却し、成長と分配の好循環を力強く回していく必要があるという政府の見解をもとにした解説から始まっています。
そのうえで「賃上げと投資が牽引する成長型経済」へ移行できるのかは、日本の雇用の7割、付加価値の5割以上を占める中小企業・小規模事業者にかかっていると説明しています。
しかし、中小企業・小規模事業者を取り巻く状況をみると、物価高や人手不足といった多くの課題に直面しており、依然として厳しい経営環境が続いています。
このような状況でも、中小企業・小規模事業者が物価高に負けない持続的な賃上げを実現できる環境を整えていくことが極めて重要であると強調しています。
そこで中小企業庁は、以下の3つを支援の柱に据えています。
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コロナ禍では、事業継続のための給付金や実質無利子・無担保融資など、いわば「救済型」の支援が中心でした。しかし、2025年の年頭所感からは、より一層、賃上げと企業成長を後押しする政策へシフトしようとする意思が読み取れます。
政府は2020年代に最低賃金1500円を実現するという目標を掲げています。一方で、東京商工リサーチが2024年12月に実施したアンケートでは、有効回答5277社のうち、48.4%が「不可能」と回答しています。
こうしたなか、中小企業が持続的な賃上げを実現できる環境をつくるには、サプライチェーン全体を巻き込んだ取引適正化が必要だとして、公正取引委員会とともに「下請法の改正や執行強化を実現」するといいます。
それに加え、中小企業成長加速化補助金や中小企業新事業進出補助金など新しい補助金だけでなく、ものづくり補助金、事業承継・M&A補助金などの既存の補助金までも、賃上げを目指す企業を優遇する方向へシフトしています。
政府は、改正産業競争力強化法で中堅企業という枠を設け、域内経済牽引や外需拡大に貢献し、賃上げを可能にする持続的な利益を生み出す目安の一つを売上高100億円超と定義しています。
政府は100億企業を目指す中小企業に向けて、中小企業成長加速化補助金や中小企業経営強化税制の拡充、リスクマネーの供給などを準備しています。
補助金とは、そもそも企業などにインセンティブを与えて、政府が実現したい社会に向けて誘導しようとするためのツールであり、本来の用途に戻ってきたとも言えます。
そのため、今後は補助金を活用するのであれば「賃上げ」や「事業成長」という政府が求めていることを把握したうえで、自社の成長に向けた投資資金として位置付ける必要があります。
ただし、中小企業の支援策はそれだけでよいのでしょうか。
コロナ禍での過剰な支援策により、本来なら市場から退場すべき企業が延命されているという「ゾンビ企業」批判がよく聞かれました。確かに、淘汰される企業を支援し続けることは、新陳代謝を妨げるという指摘はその通りでしょう。
都市部であれば、新規参入や事業拡大により空白を埋められる可能性が高いものの、地方では、代替となる企業が簡単に参入してくる経済情勢ではありません。
結果として起こりうるのは、雇用機会の喪失、地域経済の縮小、そして社会インフラの崩壊です。食品スーパー、ガソリンスタンド、建設会社など地域に必要な機能を担ってきた企業が市場から退場してしまうと、住民の生活基盤そのものが揺らぐことになります。
求められるのは、単純な淘汰ではなく、事業承継や経営改善を通じた企業の立て直し、そして地域に必要な機能の維持です。
2025年1月からの中小企業向け資金繰り支援は、事業再生の性格がより強まってきました。安易な延命策は避けるべきですが、実情に応じたきめ細かな支援策の設計が必要といえるでしょう。
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