AI時代のWEBサイトのLLMO戦略 製造業ならFAQ・事例作成
杉本崇
2025.06.25
(最終更新:2025.06.25 )
中小企業がLLMOに適した事例コンテンツをつくる場合に検討が必要な項目
GoogleのAI OverviewやChatGPT、Microsoft CopilotなどAIの普及で、Web検索のあり方が大きく変わろうとしています。ユーザーが検索ページに表示されたAIによる要約などで満足し、どのサイトにも訪問しない「ゼロクリック検索結果」がさらに増えるかもしれません。対策として取るべきことは従来のSEO対策と大きく変わらないと考えられますが、AI時代に対応した「LLMO(Large Language Model Optimization, 大規模言語モデル最適化)」について、中小企業の製造業を念頭にどこまで何を対応すべきかについてまとめました。
LLMOとは AEO・AIO・GEOとも
LLMOとは、生成AIに使われている大規模言語モデル(LLM)の回答の引用元に選ばれることを目的に最適化することを指します。このあたりの用語はまだ統一されておらず、似たような趣旨を指す言葉が多数あります。
AEO:Answer Engine Optimization(回答エンジン最適化)
AIO:Artificial Intelligence Optimization(人工知能最適化)
GEO:Generative Engine Optimization(生成エンジン最適化)
ユーザーがウェブサイトをクリックせずに検索結果ページやAIから直接答えを得る「ゼロクリック」により、これまでSEO対策に力を入れ、Web検索の上位にあった企業サイトでも、検索流入数が減ったという声を聞きます。
まだ具体的な効果は未知数ですが、LLMOがその減少の影響を補うことができるかもしれないと期待する意見があります。
AIが提示する情報源となることで、ユーザーとの新たな接点となるためです。コンテンツをつくることは、自社サイトに流入してもらうことに加え、今後は「AIが引用する信頼できる情報源になる」ことも目的に追加されるでしょう。
AIが「回答」する仕組みを簡単に解説
まず、LLM(Large Language Model:大規模言語モデル)という言葉を使って、生成AIの学習方法をざっくりとした理解で説明します。
消費者庁の公式サイト(PDF) によると、Web上から集めた膨大なテキスト情報を分解し、学習することで、LLMを作成します。
これが事前学習で、このLLMが人間の言葉の文法や、収集した知識の関連度合いを覚えています。ユーザーが言葉を入力すると、その言葉に続くもっともらしい単語を、LLM内の関連度合いを使って出力します。
このほか、過去にAIが学習した情報だけでなく、大量のオンライン情報を統合し、複数のステップから成る調査タスクを実行するDeep Research もよく使われています。
LLMOとSEOの違い 製造業に迫られる変化
SEOとは、「検索エンジン最適化(Search Engine Optimization)」の頭音字をつなげた言葉です。Google検索セントラルによると、SEOは、Google検索での存在感を高める取り組みのことだとしています。
従来のSEOとLLMOは、目的や手法においていくつかの重要な違いがあります。以下の表は、中小企業の製造業を念頭に主な相違点をまとめたものです。
特徴
SEO
LLMO
主な目的
検索サイトでの上位表示、トラフィック獲得
AIへの回答の提供、自社ブランド・サービスの認知度向上
コンテンツの力点
情報・キーワードの網羅性、コンテンツの構造、情報の新規性、E-E-A-T
簡潔な直接回答、コンテンツの構造、情報の新規性、E-E-A-T
指標
検索ランキング、オーガニックトラフィック、CV
スニペット獲得、AI引用数
編集部にも最近、LLMO対策の営業提案が届いていますが、基本的な対策はSEOと変わりませんので焦る必要はありません。
E-E-A-Tと呼ばれるように権威性と信頼性を担保することや、情報の新規性・独自性の担保、AIが理解しやすいようなサイト構造にしておくことが大切です。それに加え、FAQ形式や比較するには表形式がよい、長文ではなく箇条書きにしておくとよいなどという情報があります。
E-E-A-Tとは、簡単に言うと以下の要素です。
経験(Experience)
顧客の課題を解決するために、自社のどんな技術が貢献したのかを事例を詳しく書いてください。
専門性(Expertise)
インターネットにあふれている内容ではなく、自社のノウハウを生かした独自性のあるコンテンツを作りましょう。コンテンツ作成者の資格、認定、著者の経歴を掲載しておくとさらによいでしょう。
権威性(Authoritativeness)
解決策がほかにない独自性のある技術を持っている場合、取引先や研究機関に引用してもらうことで権威性を高めることができます。
信頼性(Trustworthiness)
データを誠実かつ透明性をもって提示します。必要に応じて、権威ある業界のウェブサイト、研究機関の論文からの引用元を記しておきましょう。
製造業にとってのLLMO対策 課題解決事例を提案
製造業がサイトを大幅にリニューアルするのは難しいと仮定して、たとえば、LLMO対策として、具体的な取引先の悩みと、その悩みを自社の技術・商品でどのように解決したのかを紹介するのはいかがでしょうか。
とくに、その技術や商品に独自性がある場合、たとえユーザーがウェブサイトを訪問しなくても、AIが中小企業の製品情報、ブランド、ソリューションを直接提示してくれる可能性があります。
ユーザーにとっても、結果として、本当に役立つ専門知識を持つ情報がより見つかりやすくなります。AEOは、提供される「答え」の質と関連性で勝負が決まるかもしれません。
AIに引用される事例作成の方法
まず、AIが理解しやすいコンテンツの構造化を考えましょう。たとえば、顧客が抱える課題を明示しましょう。具体的な課題を見出しに置き、冒頭の数文で、中核となる問題を簡潔に述べたうえで、独自の解決策とアプローチを明確にして説明しましょう。
さらに、そのアプローチで顧客の課題がどう解決したのかまで触れておくとよいでしょう。
たとえば、産業用包装資材メーカー「シコー」(本社・大阪市)は、食品・医薬品業界でより異物混入リスクを減らしたいというニーズが高まっているという声をもとに、開封時に糸くずが出ず、さらにクリーンな状態で中身を抜き出せることをアピールする動画をつくるなど自社サイト内にコンテンツを増やしてきました。
この例で言えば、「開封時の糸くずが出ない 異物混入リスク(コンタミ)を減らす袋の事例」というタイトルのもと、具体的な取引先の課題を書いたうえで、PE内袋は異物混入もすぐに見抜けるよう青色のフィルムを採用しているといった工夫を紹介することが考えられます。
表:LLMOを想定した事例作成チェックリスト
ここで、LLMOを想定した事例コンテンツをつくるうえでのポイントをまとめます。
要素
LLMOのポイント
具体例
課題が明確な主タイトル
取引先の課題や自社のソリューションのキーワードを含める
[顧客の課題]を解決した[自社ソリューション]:[成果]を実現した事例
顧客紹介
背景情報を簡潔にまとめる
[顧客名]様は[業界]で事業を展開する企業です。
課題提起
明確なH2/H3見出し、冒頭での簡潔な要約、詳細のための箇条書き、定量化可能な課題
H2:課題「[具体的な課題]により[悪影響]が発生」。箇条書き:「・[課題1] ・[課題2]」
独自の解決策
明確なH2/H3見出し、「何を行い」「なぜそれが独自だったのか」を直接説明、該当する場合は段階的プロセス、行動動詞の使用、差別化要因の強調
H3:自社の独自アプローチ「[独自メソッド/技術]を活用し、[具体的な行動]を実施。従来の[手法]とは異なり、[差別化ポイント]を実現しました。」
結果
明確なH2/H3見出し、定量化可能な達成事項、表や箇条書きでの問題に対する解決策の影響などを整理
H2:成果「[主要成果]を達成」
顧客の声
短くインパクトのある引用
『[自社サービス]のおかげで[具体的な改善点]が実現できました。』(業種・肩書)
E-E-A-T
経験、専門性、権威性、信頼性を全体で示す
自社技術の裏打ちなどを記載
行動計画 製造業の経営者のための簡単な第一歩
LLMOを意識したコンテンツを作るには、まず、以下のような形でスモールスタートで試しましょう。
主要な顧客の質問を特定する: 顧客が自社のサービスや抱える問題について問い合わせる内容を10~15個ブレストで挙げましょう。
AIと競合の回答を調査する: 課題をGoogleやAIチャットボットで検索します。現在どのような回答が提供され、誰が引用されているかを確認しましょう。
自社サイトをチェック: 現在の自社サイトがAIに適した内容になっているかを確認しましょう。
試しに一つの事例を作成・改善する: 重要なページ(主要なサービスページや新しい事例など)を1つ選び、上記の手順に沿って改善・作成しましょう。