目次

  1. 開封時の異物混入リスクに対する動画を公開
  2. 企画・撮影・編集のコツとは
    1. 企画のコツは「ポイントを絞る」
    2. 撮影は同じカットを何度も
    3. 編集はテロップを読みながら
  3. 会社としてなぜ動画発信を始めたのか
  4. YouTuberを起用した理由は?
  5. 業務見直しのなかでも動画方針

 「開け口を糸で縫い合わせているクラフト紙袋は混入物(コンタミ)が心配」。そんな相談をもとに、包装資材メーカー「シコー」は2021年4月15日に「【製品紹介】クリーンな袋で異物対策を!!!」というタイトルでYouTubeに動画をアップしました。

 従来のミシン袋に比べると、自社の片底バックインバックならカットテープではがせて、中身も取り出しやすいという内容を2分44秒の動画にまとめています。

 シコーでは、自作の動画を撮影・編集してソリューションサイト「SIKO SOLUTION」にアップしたところ、新規の問い合わせが寄せられるようになりました。

 シコーの動画を企画から撮影、編集まで手がけるのが、趣味でオートバイ動画を70本ほどアップし続けてきた社内のYouTuberです。企画から編集までをどのような手順で進めているのかを匿名を条件に聞きました。

動画撮影の様子。撮影に使っているのは「iPhone SE2」

 動画の制作は、まず自分の担当商品をPRしたい営業担当者から企画表で提案を受けるところから始まります。YouTuberは「何をアピールしたいのか、顧客が抱えている課題は何かを引き出します。伝えたいことのポイントを絞ることが大切です」と話します。

 先ほどの片底バックインバックの場合は、食品・医薬品業界でより異物混入リスクを減らしたいというニーズが高まっているという声をもとに、開封時に糸くずが出ず、さらにクリーンな状態で中身を抜き出せることをアピールする動画をつくることに決めました。

 つぎに、撮影できる工場のスペースと実際に撮影で使う袋も用意します。「クリーンをアピールする動画なら、背景もなるべくキレイに写る場所を選びました」

 動画が長いと途中で離脱されるかもしれません。そこで、多くの動画は2分30秒ほどに収めています。テンポ良く動画が進むよう数秒ごとに切り替えます。そのため、動画1本あたりの撮影は200カットにも上ります。

 「同じ場面でも何度も撮り直しをします」。先ほどの片底バックインバックでは、納得のいくまで5袋ほど開けました。

 映像素材が集まると次に取りかかるのが編集です。動画の内容を説明するテロップは重要ですが、心がけているのは「文字を読ませるのではなく、絵で見せる」。そのため、テロップはなるべく短くします。

 ただし、視聴者が出したテロップをきちんと読めるよう、テロップを口に出して読みながら秒数を測りつつ場面の切り替えのタイミングを調整しています。

 動画をクリックされるかは、サムネイル画像も重要なので、直感的に動画の内容がわかるような工夫もしています。

動画のサムネイル画像

 こうしてYouTubeにアップロードした動画は10本を超えました。

 それでは、なぜ会社として動画での発信を始めたのでしょうか。事業承継を予定している3代目の白石忠臣常務(39)に聞きました。

シコーの白石忠臣常務

 「中身が漏れにくい袋や、段ボールの代わりになる紙袋など面白い商品を開発しているのに、知名度がなかなか上がらないのが悩みでした」

 そこで、2014年に「お客様事例」などを集めたソリューションサイトを立ち上げます。最初は写真と文字だけでしたが、WEB制作会社から動画を提案され、水溶性フィルムが実際に水に溶ける様子を外注して制作し、2017年に初めて公開しました。

 ソリューションサイトの会員に対して毎月発行しているメルマガのネタがちょうど尽きかけているころだったのと、「動画ってわかりやすい」と好評で、問い合わせも来るようになったため、動画を定期的につくることに決めました。

 白石さんは「動画の反響を見て、我々の常識が顧客にとっては非常識なんだということに改めて気づかされました」と話します。

 最初は外注していた動画でしたが、内製化することになります。本業は営業担当のYouTuberが「もっとやり方があるんじゃないですか?」と社内の担当者に動画のダメ出しをしていたと聞き、白石さんが「じゃあ、ちょっと撮ってみてくれない?」と、それとなく巻き込んだのが始まりでした。

 YouTuberが動画をつくるようになったメリットについて、白石さんは「わかりやすくシンプルにまとめてくれる撮影・編集スキルはもちろんですが、それ以上に、撮影には工場の協力や調整が不可欠です。その点、和気あいあいと撮ってくれること、(YouTuberが)何度も撮り直しをお願いしても『あいつなら仕方ない』と周りが思ってもらえることが大きかったです」と振り返ります。

 会社としての出費は、新しいノートパソコン「MacBook Air 13onch」と動画編集ソフト「ファイナルカットプロX」。役員会で白石さんが「これさえあれば、何本でも自社で作れますよ!」とアピールして今春に了承されたそうです。

 ただし、白石さんは現状のデジタルマーケティングに満足していません。「たしかにソリューションサイトから新規の問い合わせはあるのですが、会社の市場シェアを考えるともっと問い合わせがあっても良いはずです」

 そこで、2021年4月23日に社内で見直しのためのチームを立ち上げて、ゼロベースで検討を始めました。しかし、そのなかでも動画配信は続けようと考えています。

 「顧客の課題解決にも役立つだけでなく、今後の海外展開も考えたときに、外国語版も作るなど、今後も動画は武器になります」