世界で研究盛んなファミリービジネス

 ファミリービジネスとは、創業家の一族が企業経営をしていたり、株式を保有していたりする企業のことを指します。帝国データバンクによると、創業100年を超える企業は全国で約3万3千社 あります。この多くが、ファミリービジネスです。研究も少しずつ進んでいます。京都産業大の沈政郁教授らが2013年に発表した論文では、日本の上場企業1367社の約40年分のデータを分析すると、婿養子が経営者をしている同族企業の業績の良いことがわかりました。その一方で、体系的に学べる場はまだ多くありません。

グロービスでファミリービジネスの特別講座

 グロービスは、MBAに欠かせないビジネスセオリーや、企業の競争力を決定づけるテクノロジーに関する知識を学んだ上で、ファミリービジネスについても特別講座のなかで教えています。受講生は後継ぎに限定されていますが、事業が時代を超えて存続するために必要な承継のあり方、事業に関わる家族・親族のマネジメント、相続といったファミリービジネス特有のテーマを扱います。

 この特別講座を立ち上げた田久保善彦研究科長は、後継ぎに対し「あなたたちは特殊な存在です。従業員に対しても顧客に対してもより重い責任を負っており、様々な難題に直面する立場でもあります。だからこそファミリービジネスを冷静に分析し、客観視する力が求められます」と話しています。

全国で勉強会や交流会を開催

 後継ぎ同志の交流は、講座にとどまりません。主要都市にあるキャパンスごとに勉強会を開く「事業承継の会」では、承継者がスピーカーを務める意見交換会や参加者同士の事業説明会、事業計画書の交換会などを開いています。そのほかにも全国から事業承継者が集まる「あとつぎ会議」も開いています。

2018年のあとつぎ会議の様子

 こうした活動を始めるきっかけを作った一人が、グロービス生だった村尾佳子さん(現在は副研究科長)です。

 村尾さんの実家は、海底ケーブル用の光ファイバーの保護部品でトップシェアの「ナミテイ」(大阪府東大阪市)です。会社は弟が父から継いで3代目社長になりましたが、事業承継の前後で父と弟の双方から悩みを聞く立場でした。

 元々は仲のいい2人でしたが、経営に対する考えの違いからギクシャクすることもありました。結果的には間に入った親族を通じて、改めて意思疎通が図れるようになったそうです。

 そのころから同じように悩んでいる後継者の姿が目に入るようになりました。「後継者たちは悩みをなかなか打ち明けられず、孤独を感じていました。だからこそ、心理的な安全を確保したうえで、真剣に経営について話し合える場を作りたいと考えました」。こうして立ち上げたあとつぎ会議には、今では100人超が参加するようになり、後継者同士で腹を割って話せる関係づくりが生まれるようになっています。

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