女性の事業承継者の学ぶ場は限定的

 中小企業の後継者不足が社会問題となるなか、経営者の娘が会社を継ぐケースが少しずつ生まれてきています。跡継ぎ娘ドットコムによれば、事業承継全体でみると、まだ1割ほどで、経営者の集まりでも、女性はまだ少数派です。女性の事業承継者が求めているにもかかわらず、「父親がやってきたような経営が自分にできるだろうか」といった悩みを共有したり、学んだりできる場がまだ少ないといいます。

 そこで、2019年5月に内山さんらは日本跡取り娘共育協会を立ち上げ、ウェブサイト「跡取り娘ドットコム」の運営を始めました。女性事業承継者が自信をもって会社を継ぎ、経営を進められるように、寄り添い、後押しする場を作りたい、と考えています。

交流会や勉強会を定期開催

2020年3月に開催したオフラインとオンラインの交流会
2020年3月に開催したオフラインとオンラインの交流会

 定期的に交流会や勉強会を重ねており、女性の事業承継者のほか、経営支援を行う税理士・金融コンサルタントなどを含めて約50人が参加しました。Facebookでの「跡取り娘ドットコム」のサイトの参加者は約500人に上ります。

活動実績(2019年6月~2020年4月)
【2019年度 交流会・勉強会】
7/20 交流会
9/13 原田泳幸氏 講話(アップルコンピュータ日本法人、元日本マクドナルドCEO)
11/27 SDGsワークショップ
1/15 交流会
2/10 交流会「テーマ:女性事業承継者の課題について」
3/7 交流会「テーマ:跡取り娘でも選べる 自分の人生の幸せとは?」(事例発表)
2020年度交流会
4/11 交流会「SDGsと女性らしい経営とは」(事例発表)
今後は毎月1回のペースで交流会・勉強会・女性経営者が経営する会社訪問などを開催予定。

安心して自分を出せる場づくり

 交流会や勉強会では、コミュニティに入る方々が安心して自己開示できる環境を用意し、心理的安全性を確保できることを大事にしています。そのため、新規加入にあたっては、既存のメンバーからの紹介をベースにし、人間関係づくりを重視しています。

 実際の場では、それぞれの抱える課題を相互に開示しつつ、お互いにアドバイスする機会があります。そのほか、実際に苦労を乗り越えてきた女性経営者・後継者の話を聞きながら自分の思いに向き合うなど「等身大の学び」を深めていく機会を設けています。

 有名経営者の話を聞くだけでは自分事になりません。そのため、さまざまな分野の書籍の読書会を開き、それを自分の課題とつなげて考えていくような機会も積極的に作っていく予定です。

女性の生き方の選択肢を広げたい

 女性事業承継者が自信をもって会社を継いでいく、新しいスタイルの経営者、リーダーになっていくことは、その企業の持続的発展にとどまりません。女性が経営を担う企業が増えることで、女性の生き方の選択肢が広がります。

 内山さんは「多様な人材がその持ち味を生かした仕事ができれば、どのような会社もより豊かな社会を創っていけます。男女問わず、属性を問わず、誰もがイキイキと働いて人生を送ることができる、そんな社会創りに貢献していきたいと考えています」と話しています。

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