グラフトプレナーとは

 「グラフトプレナー」とは、大きく育った木の幹に別の木の芽を繋ぎ合わせて育てる「接ぎ木」を意味するグラフト(graft)に、起業家を意味する “アントレプレナー(entrepreneur)” を掛け合わせた造語です。運営メンバーの山崎実さんたちは、家業を持つ一家に生まれ、新たな価値を世の中に生み出そうとしている人を「グラフトプレナー」と名付けました。

多様な立場の人が交わるイベントを開催

 グラフトプレナーでは年20回ほどイベントを開催してきました。継がなかった人だけでなく、継いだ人、継ごうか迷っている人など様々な段階の後継ぎたちが集まっています。

2019年12月に開催した山之内圭太さん(左端)を招いたイベント
2019年12月に開催した山之内圭太さん(左端)を招いたイベント

 2019年12月には、東京から実家・家業のある愛媛県松山市に戻り、ビール製造販売をしている山之内圭太さんが登壇しました。家業である洋服のセレクトショップを継いではいないものの、そのショップの一角に山之内さんのビール工場とバーを併設し、結果的に家業にも貢献をしているそうです。

 長男ということもあって、何となく「継ぐのかな」という漠然とした思いはあったそうですが、父からは「アパレルはネットで買えてしまう時代。セレクトショップは斜陽産業になるから継ぐ必要はない」と言われていました。

 ビール好きが高じてサラリーマンをやめてビールの製造を始めてしまった山之内さん。販売できる場所を探しているときに、たまたま、実家で働いている店長に声をかけてもらい、アパレルとバーのコラボ店舗が生まれたそうです。会社は別会社、お金の貸し借りもなしの独立型ですが、今後はシナジーを生む新規事業も検討しているそうです。

後継ぎに示す「第三の道」

 以前は、子どもが会社を継ぐことが当たり前でしたが、いまでは従業員が継いだり、M&Aでほかの企業が事業を引き継いだりと、様々な事業承継の形があります。山崎さんは「継がないことに後ろめたさを感じる必要はありませんし、会社を継いだ後継者のきょうだいも継ぐ以外にも家業をサポートできる方法があります」と話します。

 数百年続く家業の中に全く新たな事業を立ち上げた人もいます。地元で家業を継いだ兄弟をサポートするため、都会のネットワークを利用した新たな事業を始めた人もいます。会社員をしながらデジタルテクノロジーを使って父親の事業をサポートするプラットフォームを運用する人もいます。多様な家業の関わり方を応援するのが活動目的です。

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