活動のきっかけは通勤途中

 「#東京せがれ」を立ち上げたのは、IT企業に勤める前田洋平さん(34)。仕事が面白くなってきましたが、同時に実家の親の会社をどうするか考えなければいけない時期も迫っていました。東京で働いていると、同じような境遇の後継ぎに会うことも少なくありませんでした。

 そんなことを考えていた2018年の7月4日の誕生日。通勤途中の電車のなかでふと「#東京せがれ」というアイデアが降ってきました。「継いだ後、継ぐ前など、立場を超えてカジュアルにつながれる場を作れないか」。その勢いのまま、Facebookページを立ち上げ、次のようなメッセージを載せました。

本日で33歳。親は64歳。
東京で就職して気づけば社会人としてなんとなく波に乗れるようになってきた。 「いつかは継ぐかな。」「継ぐという選択は現実的にはないかな。」少しずつ、見えてきた現実もある。実家に帰っても親と核心に迫った話はしてないし、そもそも何を聞けばいいのかも分からない。聞いたところで会計/法律的な知識は乏しくて判別すらできない。
家業のある、商売をやっている親をみて育った息子や娘の皆さん。
そろそろ、興味・関心から、実際の行動に移してみませんか?
意外に同じような境遇、悩みを抱えている方が多いと知った最近。
継ぐこと、継がないこと、会社をたたむこと、第三者の後継者を探してくること……いろんな選択肢があると分かり始めた最近。
事業承継が社会問題だと叫ばれている最近。 事業承継は社会問題であり、家族問題であり、せがれの問題。自分が動く番なんだろうと。だったら、皆で解決してみませんか?

テーマソング作成や銭湯でイベント開催

 Facebookページへの「いいね!」は900人超。若い世代が参加したくなるような取り組みを考えています。後継者の思いを共有しつつ、事業承継をダサくせず、ポップにしたい。そんな思いからラップ調のテーマソングも作りました。

 イベントも開催しています。2019年7月に開催したのは、東京都杉並区で3代目後継ぎが経営している銭湯「小杉湯」でのイベント「銭湯で語らう、自分らしい東京せがれway」でした。銭湯の洗い場に集まった参加者が後継ぎのリアルな話に耳を傾けました。

銭湯の洗い場に腰掛け、トークに耳を傾ける参加者
銭湯の洗い場に腰掛け、トークに耳を傾ける参加者

 イベント後、前田さんはFacebookページに書き込みました。

 「新しい文化は輸血のようなものだ。絶えず注入し続ける事で少しずつ変化していく。血液型は変わる。せがれらしさを少しずつ、絶え間なく注入し続けていく」  
 相談出来る人、後押ししてくれる人、話に耳を傾けてくれる人がいてくれる事は大きい。だからこそ、同じような境遇や共感値の高い第三者達が集うこと、話すこと、つながることには意味がある。  
 ”東京せがれ” もそんな存在になれればいい。そんな事を反芻したセッションでした。

後継ぎがカジュアルに話しあえる場へ

 イベントをいくつも開いていくと、後継ぎたちの本音が見えてきました。「相談する相手がいない」「親とは核心に迫った話ができていない。中学生の恋愛のごとく、きっかけ(言い訳)が必要で、それを求めてないふりをしつつも求めている」「後継ぎが会社を継いで最初にしたいことは会社のサイトの改修と人事採用」……。

 今後もそんな思いをカジュアルに話しあえる場づくりを目指しています。メンバーのあいだで音声・動画メディアでの発信や、フェスのようなイベントもできないかと考えています。最近では、podcastで「#東京せがれラジオ」を始めました。

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