月城

本社は、大阪府岬町。月城栄一さんが1966年に創業した。ミセス向けのニットセーターやニットカーディガンを手がける。亮一さんは3代目。

市場シェアの6割に2万社がひしめくアパレル業界

 矢野経済研究所などによると、2018年の国内アパレル市場の規模は約9兆円。業界トップのユニクロが2割のシェアを持ち、2~10位が2割、残りの6割のシェアをめぐって2万社がひしめき合っています。その会社のひとつ、「月城」はミセス向けのニットを作り、百貨店やスーパーの婦人服売り場、商店街の婦人服店に商品を卸してきました。

創業者の月城栄一さん。いまも現役で働いている
創業者の月城栄一さん。いまも現役で働いている

 しかし、大手はすでに海外生産が中心で、日本の工場の小ロット生産や価格競争力ではサプライチェーンに乗せることが難しくなっています。亮一さんは「ニット工場に関して言えば、2020年現在、国産の生産比率は3%以下。数少ない国内ニット工場も売上減少や経営者の高齢化により、ますます減少傾向にあります」と話します。

 もともと在庫を抱えやすい業界の構造的な課題に加え、暖冬や消費増税が追い打ちを掛けて、廃業するメーカーも出ています。さらに、新型コロナの影響で、アパレルメーカーから月城への注文もなくなってしまいました。そんななかでの新規事業への挑戦です。

初のメンズで直接販売目指す

 家業に戻ってきて3年になる月城さんは、これまで通信販売など新規の取引先を開拓してきましたが、それでも黒字にするどころか売り上げが維持できません。「卸販売でなく、消費者へ直接販売しなければいけないと危機感を感じていました」

 これまでのアパレルメーカーを通じた販売では、顧客の特徴もニーズも自社で把握できません。年4、5回ある消費者からの問い合わせはどれも洗濯方法の質問でした。そこで、消費者と直接向き合いたいと考え、メンズ向けのニットブランド「MOONCASTLE」を立ち上げました。

サマーニットの襟部分
サマーニットの襟部分

 夏の商談でスーツを着ると汗が止まらなくなり、取引先で恥ずかしい思いをした亮一さんの経験から、第一弾は仕事でも着られるサマーニットにしました。接触冷感機能のある糸を使っています。

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