「饅頭を誰か作ってくれ」ツイートに応じた和菓子店 3年ぶりヒット商品に
島根県の中山間地域に位置する、人口約1万人のまち、邑南町(おおなんちょう)。「日本一の子育て村構想」「A級グルメのまち」など、これまでも邑南町は多くのチャレンジを続けてきましたが、その1つが、自治体が運営する邑南町しごとづくりセンター(おおなんBiz、おおなんビズ) の取り組みです。 SNS上のファンの声に耳を傾け、家族のアイデアを取り入れながら新商品「オオナン・ショウ」のまんじゅうを開発したストーリーをお届けします。
島根県の中山間地域に位置する、人口約1万人のまち、邑南町(おおなんちょう)。「日本一の子育て村構想」「A級グルメのまち」など、これまでも邑南町は多くのチャレンジを続けてきましたが、その1つが、自治体が運営する邑南町しごとづくりセンター(おおなんBiz、おおなんビズ) の取り組みです。 SNS上のファンの声に耳を傾け、家族のアイデアを取り入れながら新商品「オオナン・ショウ」のまんじゅうを開発したストーリーをお届けします。
邑南町公式キャラのオオナン・ショウの饅頭を誰か作ってくれ。
— おおにゃん【島根県邑南町】 (@ohohnyan) February 28, 2020
中身はもちろん、ミルクジャム餡だ。#島根 #邑南町 #ゆるキャラ pic.twitter.com/finkEXaCYV
2020年2月末にTwitterとインスタグラムで発信された1通の投稿。邑南町にまつわる歴史や史跡の投稿をしている「おおにゃん」さんから発せられたメッセージに応えた人がいました。1932年創業の和菓子屋「静間松月堂」さんです。京都の和菓子屋で修行したご主人、静間幹生さんと、屈託のない笑顔で販売にいそしむ奥様かつ子さんを中心とした家族経営の老舗です。
一方で、おおなんビズでも、SNS上で邑南町にまつわる情報を定期的に収集していたため、この投稿を把握していました。そこで「おおにゃん」さんにSNS上でメッセージを送って、商品開発をサポートしていく旨を伝えたところ、「おおにゃん」さんと静間松月堂さんとのやり取りのなかで、おおなんビズが紹介され、静間松月堂さんがおおなんbizを訪れました。
これまでの取り組みを聞くなかで、幹生さんが作る和菓子は、いちご大福をはじめ、町内でも人気であり、メディアを活用すれば町外にもファンが増える可能性がありました。また、通常の饅頭も「銘菓二ツ山」としてお土産商品として販売されており、婚礼や祝い事などの贈りものに用いられる上用饅頭なども取り扱っていることから、早速、二ツ山をベースに試作品を作りました。
当初、幹生さんが考えていたのは、町のゆるキャラ:オオナン・ショウの焼き印を使った、饅頭の上にオオナン・ショウのシルエットが写った試作品でした。しかし、SNSの投稿になるべく忠実に、かつ、ゆるキャラの可愛さを前面に押し出したかったことから、再度オオナン・ショウの顔型饅頭の試作をお願いしました。すると次の相談では、新しいアイデアが出てきました。
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かつ子さんや高校生の娘さんら女性陣のアドバイスもあり、少しずつ「カワイイ」オオナン・ショウの饅頭に。饅頭の方向性が固まってきました。
邑南町には「瑞穂ハンザケ自然館」という国指定の特別天然記念物、オオサンショウウオを完全屋内水槽での人工ふ化に成功した全国でも有数の施設があり、町のマスコットキャラクター「オオナン・ショウ」は、オオサンショウウオをモデルにしています。
おりしも瑞穂ハンザケ自然館はおおなんビズのSNSの開設サポートで「#休園中の動物園水族館」として、テレビや新聞に取材されており、SNS上でオオサンショウウオファンから反響があることが今回の新商品登場の追い風になることが予想できました。
※邑南町では、オオサンショウウオのことを「ハンザケ」と呼んでいます。「ハンザケ」の語源は、口が大きいことから身体が半分に裂けている様に見える、身体を半分に裂いても生きている、など諸説あります。
そこで、静間松月堂さんに、もともと開設していたインスタグラムだけでなく、オオサンショウウオファンとのつながりやファンの間での拡散が期待できるTwitterでの情報発信を提案し、アカウントを作ってもらいました。そして2020年4月下旬の発売開始とともに、Twitter上で告知したところ、京都や埼玉のオオサンショウウオファンが早速情報をキャッチして、オオナン・ショウ饅頭を注文してくれました。
また、新型コロナウイルスの感染防止を願い、期間限定でマスク型の生地をつけたオオナン・ショウ饅頭バージョンも追加すると、「マスクからお口がはみ出してて可愛い」というTwitterの投稿がありました。この勢いもあって、1か月足らずの間で300個が販売され、静間松月堂としては3年ぶりのヒット商品となりました。
オオナン・ショウ饅頭の取り組みは、SNS上から広がりを見せます。おおなんビズでサポートしたプレスリリースの発信により、邑南町内のケーブルテレビへの出演、複数の新聞社からの取材につながりました。これにより、「ケーブルテレビ見たよ」と町内で饅頭を購入する方だけでなく、島根県西部に位置する邑南町の静間松月堂に、島根県東部の出雲地域からの発送依頼や、実際に来店される人もいました。また、町内の瑞穂ハンザケ自然館を訪れた事がきっかけで、オオナン・ショウ饅頭の存在を知り、近くにある道の駅瑞穂(産直市みずほ)で購入していくという新たな流れも生まれました。家族経営のため、1日40個ほどの製造を上限にしていますが、メディア登場後、完売の日も続いています。
【告知】邑南町のマスコットキャラクター「オオナン・ショウ 」の顔饅頭ができました。
— おおにゃん【島根県邑南町】 (@ohohnyan) April 25, 2020
なんということでしょう、私が何気無く「誰か作ってくれ」というつぶやきから、静間松月堂さんがホンマに作ってくれました。感激!
本日から販売中だそうです。#島根 #邑南町 #和菓子 #饅頭 #キャラ饅 #観光 pic.twitter.com/Hrd0F1d9Tc
SNS上のファンの声に耳を傾け、家族のアイデアを取り入れながら新たな商品を開発し、町内外のファンを増やしていく。言い古されているようで実は未だに新しい、次の時代の新商品開発の形なのかもしれません。
おおなんビズは2019年10月に再オープンし、2020年6月1日時点で最も人口の少ない自治体が運営するビズモデルの中小企業支援施設です。町内の企業やお店、これから起業・独立したいという人向けの相談所として、相談は1回60分で、何度来ても無料。「お金をかけずに売上アップ」をテーマに、具体的な知恵やアイデアを提供し、成果が出るまで継続的にサポートしています。
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