「コロナをチャンスに」全国に広がるベンチャー型事業承継

 「ベンチャー型事業承継」は、家業の経営資源を活用して永続的な経営のために新たなビジネスに挑戦しようとする若手後継者向けの団体です。新規事業を始めようとしている後継ぎが集まっているのが特徴です。

ベンチャー型事業承継の山野千枝代表(左上)

 代表の山野千枝さんは「新型コロナで親世代の業界常識が覆されるなかでも、後継ぎはみんな前向きで、むしろチャンスととらえ、新規事業を実現しようとしています」と話します。
 山野さんは「経営者は孤独とよく言われますが、後継ぎはもっと孤独。同じ立場の同世代が周りにおらず、会社の危機感を親と共有するのも難しい。心折れずに事業化を進めるためにはそれなりの環境が必要です」と話します。いま、山野さんたちが運営しているオンラインサロンだけでなく、後継ぎ自身に運営してもらう「自走型」のコミュニティが全国に広がっています。

副業人材と地方企業をつなぐワークデザインラボ

 首都圏の副業人材と地方企業をつなぎ、地方の中長期的な発展のモデルづくりに力を入れているのが、ワークデザインラボです。全国各地で中小企業とのプロジェクトを進めており、副業人材のスキルを活用したい後継ぎにとっては、良い相談相手になりそうです。

ワークデザインラボのブースに集まった参加者たち

 兼業・副業を政府が推し進めるなか、新しい副業市場が生まれています。ワークデザインラボは、副業人材を全国各地の地域に巻き込んでいこうという活動を続けています。代表の石川貴志さんは「首都圏の大企業に勤める人のなかには、地域の中小企業を応援したい、ふるさとに関わりたいと考えている人がいます。金銭的報酬だけではない価値をデザインできれば、よく多くの人を中小企業や地方に巻き込んでいくことができます」と話しています。

事業承継をジブンゴト化する#東京せがれ

 家業を継ぐ人も、継がない人も含め、息子・娘世代が事業承継をジブンゴト化するムーブメントをつくろうとしているのが「#東京せがれ」の活動です。

東京せがれのブースに集まった参加者たち

 中小企業の後継ぎは、進学や就職で東京に来ている人も多くいます。こうした後継ぎたちがつながる機会をつくっています。#東京せがれのムーブメントを立ち上げた前田洋平さんは「コミュニティでもなければ、サロンでもない。ウェブページがあるわけではない。でも、#東京せがれというハッシュタグを付けてネット上に投稿してもらうことが私たちのムーブメントです」と話しています。

グロービス経営大学院は、MBA+事業承継

 MBA(経営学修士)を学ぶグロービス経営大学院には、事業承継を予定している人、事業承継者のきょうだい、すでに事業承継を済ませた経営者が集まる「あとつぎ会議」があります。ビジネスのセオリーを学びたいという意欲のある後継ぎ同士が集まっているのが特徴です。

グロービズのあとつぎ会議について説明する田久保善彦さん

 研究科長の田久保善彦さんによると、新型コロナの影響で、3月に予定していたあとつぎ会議のイベントは中止になりましたが、現在、オンラインも活用しながら改めて開催できないか検討が進んでいるそうです。「事業承継のトラブルには、親、きょうだい、番頭などとのコミュニケーションの問題が深く関わっています。しかし、会社のそとで、オープンに相談できる場がなかなかありません。だからこそ同じ立場であつまるあとつぎ会議で深い議論できるのではないでしょうか」

後継ぎ大集合!中小企業の日 All Meetupとは

 こうした団体が登壇したのは「中小企業の日All Meet up」というツギノジダイのオンラインイベントです。「中小企業の日」を前にした7月18日に開催しました。中小企業の日とは、中小企業庁によると、中小企業基本法の公布・施行日である7月20日を指します。また、7月の1ヶ月間は「中小企業魅力発信月間」と定めています。中小企業の存在意義などの正しい理解を広める機会として様々なイベントが開催されました。午前に登壇した団体は前編で紹介しています。