2年先の販売にも影響

 養殖マダイを売り切ったのは、三重県南部の熊野灘に面した南伊勢町の「友栄水産」です。3代目で代表の橋本純さん(45)が、コロナの影響を感じ始めたのは春先でした。「志村けんさんが新型コロナで亡くなられた3月末くらいから、急に空気が変わりました。4月1週目を過ぎるあたりから、旅館やホテル、飲食店からの注文キャンセルが続くようになりました」

 友栄水産は年間約24万尾の養殖マダイを出荷しています。出荷先は、宿泊業・飲食店、三重県漁連、釣り堀などのレジャー関係が、それぞれ3分の1ずつを占めます。4月に緊急事態宣言が発令され、県をまたいだ移動が激減すると、宿泊業・飲食店からの注文はほぼストップし、漁連やレジャー関係も大きく減りました。本来4月は歓送迎会などのお祝い事に使うタイのかき入れ時です。最悪のタイミングでのコロナ禍でした。

タイを水揚げする橋本純さん=2019年撮影

 南伊勢町は2011年の東日本大震災で津波が発生し、友栄水産もいけすが壊れるなどの被害を受けました。しかし、橋本さんは「東日本大震災の時は出荷先はありました。コロナは売る場所自体が無くなったので、より深刻な状況でした」と言います。

 これは今年だけの問題にとどまりません。タイは2年周期で養殖しており、4月は再来年に出荷する分の稚魚を入れる時期でした。

 「出荷が止まり、タイがいけすに残ったままなら、再来年に出荷する分の稚魚を入れるスペースがなくなってしまいます。2年先の販売にも影響が出てしまうのです」

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