「新規顧客は1年で1桁」を変えた電器店 SNSが成功した3つの秘訣
新型コロナウイルスの影響のなか、巣ごもり需要に対応して売り上げを伸ばす電器店が熊本県天草市にあります。顧客の平均年齢は60代、新規顧客は1年で10人未満だった店を変えたのは、SNSを通じたファンづくりでした。インフルエンサーから学んだ3つのポイントを紹介します。
新型コロナウイルスの影響のなか、巣ごもり需要に対応して売り上げを伸ばす電器店が熊本県天草市にあります。顧客の平均年齢は60代、新規顧客は1年で10人未満だった店を変えたのは、SNSを通じたファンづくりでした。インフルエンサーから学んだ3つのポイントを紹介します。
6年前、嫁ぎ先の電器店「サンエコライフ」天草店の仕事に携わるなかで、原田麻美さんは気が付きました。「店番だ、事務だ、経理だ、といろいろ店内業務をこなしているけれど、新規顧客は1年で一桁。顧客の平均年齢は60代。これヤバくない?考えてみたら営業担当いないし」
悩みに悩んだ末に原田さんは思いつきます。イベントをしよう! 料理教室、美容イベント、キッズイベント、ミニ縁日、ハロウィン、クリスマス……。しかし、集客をしないと人は集まりません。とはいえ、広告にお金をかける余裕もありません。
模索するなかで、店のFacebookを開設しました。しかし、お客さんは増えませんでした。そんな折でした。事業者の強みを再発見し、売り上げアップの提案をする天草市起業創業・中小企業支援センター「Ama-biZ(アマビズ)」を訪れたのは。
アマビズは原田さんの企画力に脱帽。お金をかけずに広めるというところで、FacebookやInstagramといったSNSの効果的な使い方を、アマビズのITアドバイザーの江崎竜紀さん(ベジタブルデザイン代表)がアドバイスしました。原田さん自身もインフルエンサーの投稿を猛リサーチし、高校生の発信も役にたったそうです。そして今では当時の10倍。月に10~20人もの新規顧客が増えるようになりました。
その秘訣は3つです。
3つの秘訣を原田さんがどう取り入れたかをご紹介します。
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商売をしていれば、よく陥りがちなことがあります。それは、顧客が誰なのか、ターゲットがあいまいになってしまうことです。原田さんの場合は、30~50代の子育てママがターゲットです。料理に関心があったり、忙しく時短が課題だったり、これから家を建てる可能性もある方々です。この層であればSNSはマッチしたメディアです。(なお、60代でも60%の方はスマホユーザーですから、既存客にも十分到達できます。)
研究する前は、ただ商品情報を発信しているだけだったそうです。しかし、原田さんは開眼しました。
例えば「新製品のオーブンレンジビストロが出ました」という発信ではなく、「おうちごはん教室開催!」という発信の方が響くわけです。その教室で、自然にオーブンレンジビストロを紹介すれば当然、購入される確率は上がります。おかげで料理教室の際には圧力鍋などの売り上げが大幅にアップしています。
情報発信も大事ですが、大切なのは顧客との人間関係・信頼関係を作ることです。顔が見えるのはその一歩で、あらかじめ顔が見えていれば来店のハードルも下がります。初対面の方に「インスタでよく見てるよ」と言われることもしょっちゅうあるそうです。
投稿には、家族や子どものことも頻繁に登場します。子どもが変なことをすると、ネタが見つかったとうれしくもなるので家庭内でのストレスも減るそうです。
人間として距離が近づいたところでは心理的な防衛が減りますので、身近な方や尊敬する人のオススメは魅力的に映ります。たとえば、家電のことに詳しい知人からの説明は耳に素直に響きます。
ファンづくりには時間もかかります。今日SNSを始めてすぐに明日から結果は出ません。始めていない人にとって、SNSは「よくわからない」「たいへんそう」という恐れの上に、すぐに結果が出なければ「そんなに効果あるの?」とやらない理由を選びがちです。
原田さんは「一番の失敗は続けないこと」と言います。100回のSNS投稿で一人の顧客に結び付かなくても続けるなら、それは失敗ではありません。失敗なのは、20回投稿して一人の顧客しか来ないと投稿をやめてしまうことだそうです。
原田さんも新しい顧客に繋がったのは発信から2年くらい経ってからです。今では天草中心に1000人以上のフォロワーがおり、全国の電器屋さんともつながっているそうです。家電や家まわりの事での問い合わせメッセージが毎晩1本は来るそうで、まるでかかりつけ医のように頼りにされています。
2020年の洗濯機キャンペーン期間中で熊本県パナソニック販売店の中で売上台数2位。全国のパナソニック電器店のお嫁さん“パワフルでんきや女子“4人の一人としても取り上げられていました。
原田さんは、アマビズと力を合わせながら「電器屋の嫁の挑戦」と銘打ったイベントを開き、SNSを通じて得た経験を地域のほかの企業にも共有しています。そこには、いろんな企業との相乗効果を生みたいという思いだけでなく、天草全体を活性化したいという思いがあるそうです。
新型コロナウイルスが広がり、巣ごもり需要が増す一方で、家事の負担も増え、時短家電のニーズが高まりました。普段培った信頼の人間関係は、こういう時に活かされました。食洗器などの家電の売上がアップしました。長雨の折には結構高価なドライ乾燥機が売れ、水害の影響を受けた一部地域ではリフォーム関連の問合せも増え、この機会にLINEの登録も増えるという結果にもつながりました。
私たちも改めて、売り上げアップに秘策はなく「継続こそ力なり」と改めて認識しました。日々の小さな実践・投稿、これがファンをつくり、信頼を醸成していく。そして何かあれば頼りにしてくれる。まさしくお客様の人生によりそってサービスしていく姿勢です。これこそが経営資産であり、コロナを超えて持続していく秘訣だと思います。
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