「ブラック・ジャック」とコラボした消毒用アルコールは、お酒の輸出を担う商社「ジェムインダストリーズ」(本社・大阪市)の2代目、岡田祐樹さん(36)が企画しました。従業員5人、2019年度の売上高は5億3500万円の会社です。

手塚プロダクションの協力のもと、田苑酒造が製造した消毒用アルコール「ブラック・ジャック66」。度数66%、500mで税別900円。デザインは3種類。1本あたり5円を医療従事者に寄付する

 ジェムインダストリーズは、海外での日本産ウイスキーのブームを追い風に、日本酒、焼酎、ウイスキー、ジン、ラム酒、など日本のお酒を海外20カ国以上に輸出していました。ここ数年、順調に業績を伸ばしていましたが、今年に入り、新型コロナウイルスで状況が一変。世界的な自粛ムードで、輸出はほぼストップする事態になりました。
 岡田さんは「お酒という嗜好品を販売する自分たちの仕事が微力だと感じましたし、最前線で戦う医療現場の方々をテレビで見ながら悶々とした日々を過ごしていました」と振り返ります。

「ブラック・ジャックが応援してくれたら……」

 外出できない日々が続く岡田さんは、漫画を見る機会が増えていました。連日、医療現場の人たちの活躍をメディアで目にしていたこともあり「ブラック・ジャック」を全巻まとめ買いしました。読み進めていくうちに、ふと「今の世の中をブラック・ジャックや助手のピノコが応援してくれたら心強いのにな……」という思いがよぎりました。 

 まず手が動きました。岡田さんが以前から海外展開を話し合っていた鹿児島県の「田苑酒造」に相談したところ、製造に協力してくれることになりました。さらに、面識のない手塚プロダクションに電話で突撃営業をかけました。

 自分は何者なのかを告げ「ブラック・ジャックとコラボした消毒液を作って医療従事者を応援したい」と話し続けること5分。静かに話を聞いていた手塚プロダクションの著作権事業局営業1部の内藤出部長から「やりましょう」という返事が返ってきました。岡田さんは緊張と興奮でプルプルと震える右手を押さえつつ、受話器を置きました。
 当時のやりとりについて、内藤さんは「初めて聞く社名でしたが、話を聞くうちに信用できると思いました。私が鹿児島出身で、昔からよく知る田苑酒造が製造すると聞いて親近感も湧いていました」と話します。

 手塚プロダクションでは、①手塚治虫の理念を大切にしアルコールなどの商品とはコラボしない、②ライセンスを提供するのは直接面会してから、というルールがありましたが、今回は「ブラック・ジャック」が医療関係者を応援するというコンセプトのもと「例外」として許可が出ました。

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