アルコール消毒液に「ブラック・ジャック」仕掛け人は貿易業の2代目
手塚治虫の名作医療漫画「ブラック・ジャック」とコラボした消毒用アルコールが16日、発売を始めました。仕掛け人は、酒の輸出を手がける貿易業の2代目です。自粛生活のなかで「ブラック・ジャック」に出会い、版権を管理する手塚プロダクションに電話で提案したところ、5分で承諾されました。そんな舞台裏を紹介します。
手塚治虫の名作医療漫画「ブラック・ジャック」とコラボした消毒用アルコールが16日、発売を始めました。仕掛け人は、酒の輸出を手がける貿易業の2代目です。自粛生活のなかで「ブラック・ジャック」に出会い、版権を管理する手塚プロダクションに電話で提案したところ、5分で承諾されました。そんな舞台裏を紹介します。
「ブラック・ジャック」とコラボした消毒用アルコールは、お酒の輸出を担う商社「ジェムインダストリーズ」(本社・大阪市)の2代目、岡田祐樹さん(36)が企画しました。従業員5人、2019年度の売上高は5億3500万円の会社です。
ジェムインダストリーズは、海外での日本産ウイスキーのブームを追い風に、日本酒、焼酎、ウイスキー、ジン、ラム酒、など日本のお酒を海外20カ国以上に輸出していました。ここ数年、順調に業績を伸ばしていましたが、今年に入り、新型コロナウイルスで状況が一変。世界的な自粛ムードで、輸出はほぼストップする事態になりました。
岡田さんは「お酒という嗜好品を販売する自分たちの仕事が微力だと感じましたし、最前線で戦う医療現場の方々をテレビで見ながら悶々とした日々を過ごしていました」と振り返ります。
外出できない日々が続く岡田さんは、漫画を見る機会が増えていました。連日、医療現場の人たちの活躍をメディアで目にしていたこともあり「ブラック・ジャック」を全巻まとめ買いしました。読み進めていくうちに、ふと「今の世の中をブラック・ジャックや助手のピノコが応援してくれたら心強いのにな……」という思いがよぎりました。
まず手が動きました。岡田さんが以前から海外展開を話し合っていた鹿児島県の「田苑酒造」に相談したところ、製造に協力してくれることになりました。さらに、面識のない手塚プロダクションに電話で突撃営業をかけました。
自分は何者なのかを告げ「ブラック・ジャックとコラボした消毒液を作って医療従事者を応援したい」と話し続けること5分。静かに話を聞いていた手塚プロダクションの著作権事業局営業1部の内藤出部長から「やりましょう」という返事が返ってきました。岡田さんは緊張と興奮でプルプルと震える右手を押さえつつ、受話器を置きました。
当時のやりとりについて、内藤さんは「初めて聞く社名でしたが、話を聞くうちに信用できると思いました。私が鹿児島出身で、昔からよく知る田苑酒造が製造すると聞いて親近感も湧いていました」と話します。
手塚プロダクションでは、①手塚治虫の理念を大切にしアルコールなどの商品とはコラボしない、②ライセンスを提供するのは直接面会してから、というルールがありましたが、今回は「ブラック・ジャック」が医療関係者を応援するというコンセプトのもと「例外」として許可が出ました。
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岡田さんは当初「悪目立ちしないよう、大人しいデザインに……」と考えていました。しかし、6月ごろから徐々に経済が動き出すのを見て「どうせやるなら楽しい商品を作ろう」と世の中を明るくするデザインを考えるようになりました。
その結果、ピンク一色のデザインや、アルコール越しに、おなじみのセリフ「アッチョンブリケ」と言いそうなピノコの顔を描くといったビジュアルの消毒液が完成しました。消毒液は田苑酒造がオンラインで販売しており、東急ハンズでも販売が始まりました。
岡田さんの前職は、デジタル広告を扱う「サイバーコミュニケーションズ」。さまざまな企業に「LINE」上でのスタンプを提案するなど企業間のコラボレーションに関わり、その波及効果を感じていましたが、アニメを扱った案件は今回が初めてでした。
「アニメには夢やワクワク感があります。企画を立ち上げると自然と人が集まり、閉塞感を打ち破ってくれます」。そんなアニメの持つ力を実感した岡田さんは現在、新たなコラボ企画を計画しています。
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