ブランディングで結果が出る会社とは

 前編では、正しい手順を失敗から学びました。さて、後編ではブランディングで結果が出る会社の特徴についてご紹介します。

 ブランディングで結果が出る会社に共通して根源にあるものは次のようなものが挙げられます。
・何も分からなくても経営陣自身が率先して学び、行動すること
・ブランドは中長期継続必要なのでしっかり計画を立てること
・お金を最初に使い切らないこと

ブランディングで結果がでる共通点

 では、具体例を見ていきましょう。

情熱のある内部の人材が長年取り組み続ける

 内部のブランドデザイナーでない方が、長年会社を思い、継続することで成功するタイプの事例です。多くは失敗しますが、稀に国内外問わず成功事例として出てきます。
 最近の事例としては、サイボウズ社の自社ブランディングが挙げられます。イクメン社長としての発信、虐待児防止のための自社商品提供、がんばるなニッポンのCM発信などの事例群は長い時間をかけて、連続性・一貫性を持って行われており、ただの一度のプロモーション(広告行為)とは厚みが違います。

選択的夫婦別姓制度の実現を求めた訴えでも社会から大きな関心を集めた「サイボウズ」の青野慶久社長

 しかし、この手法は1社に愛情を持ち、時世が噛み合い、長く継続した人のみが発見と実現したものなので、調整せずに他社への移植は不可能です。人材が大変重要なのです。では、本当に様々な会社が使える共通のブランディング成功の根本にあるものはなんでしょうか?

お金にものを言わせずブランディングを始める

 経営陣や経営陣の候補が、外部に向けてお金を使わずに、まず自分たちで何を目指しているのか考えることです。こちらは、外部のブランドデザイナーがいると早く、ロジカルに進むことはありますが、外部だけに任せるのは無意味です。必ず内部のメンバーも参加し、参加しきれない、感情移入しきれないならブランディング(ブランド構築業務)をやめることも検討しましょう。

 自社で考えた結果、中小、後継系企業場合は半数以上は、次の回答に行き着くことが多いです。

  • ただ会社を大きくすればいいわけでない
  • 売り上げ・利益がすべてではない
  • 長く今の事業を継続させ、社員や関係者に安定した生活を提供したい

 そして、とにかく注目・認知度を集めるために大金を使うことが、自社の目標と繋がっていないのではないか?と気づくのです。では、ブランディングをやろうと用意した予算や労力を他にどのように使うのでしょうか?
 それを考えることからが、本当のブランディングのスタートとなります。その分配に悩むことからが、誰も真似できない自社のらしさの発見の第一歩なのです。
 「この自社らしいコストを使う、自社らしいお金を使う行為」
 これは世界共通で行われています。

 例で言うと、パタゴニアです。創業者は登山家でもあるイヴォン氏です。日本でもショップが複数ある衣料や登山装備のお店です。彼らは、『ビジネスを環境保護に活用する』という考え方を持ち、コストを使い、下図のような発信をしました。

パタゴニア公式サイトから引用

 DON’T BUY THIS JACKET(このジャケットは買わないでください。)
 このジャケットとは、自社製品です。自社製品を買わないでくださいと告知したのです。たくさん売れればビジネスがうまくいく。一方で、環境には負荷がかかる。ジャケット購入を控えて貰えば、売上は減るかもしれないが、環境は大切にできる。この考え方に理解してくれる人は、たくさんの広告を使わなくても、パタゴニアというブランドを選んでくれる、結果売上は減っても利益率は守れる。たくさん売れなくても自分たちが目指している世界『ビジネスを環境保護に活用する』へは近づける、ということです。
 ブランディング(意思の可視化)としっかりとした経営的戦略の融合=真似できない自社らしさというわけです。

 根元に必要なのは、大量のお金が必要なのではなく、しっかりと意思と向き合うことであり、それは、全ての個人・法人が持っているストーリーであり、眠った力なのです。

 皆さんは、自社商品を買わないでくださいと言うことはできますか?これはパタゴニアの“らしさ”(=ブランド構築×経営戦略)です。皆さんの会社には皆さんにしか言えない、皆さんにしかできないことはありますか?探すことができれば、それは最高のブランドを作るまでそう時間はかかりません。

海外のやり方を日本/ニッチ業界に調整し始める

 世界のブランディングを取り入れる場合、代理・仲介なども含めると、二億と二年が通例です。これは、中小企業やスタートアップ、動きの速いIT企業は世界一流のブランディング企業に触れることができないことを意味します。現在も大きくは変わってはいません。
 加えて、日本のプロジェクトは海外のスターデザイナー達にとってはキャリアにならないので、お金以外の理由は見出しにくく、正直やる気もありません。

 そうした現状を海外で目の当たりにし、筆者が海外メソッドを日本向けに調整、導入したものについて紹介します。

海外メソッドを日本向けに調整、導入した事例

ブランド構築の手順

 ブランディングの順番と事例を併せて見ていきましょう。事例は筆者が携わっているものでかつ、新しいものです。海外式はとにかく根元を大切にします。これは言語・文化が異なるため易しく説明することが身についているためです。始めるのは自分の中から根っこから、にしましょう。

①自己発見:お金を使わないことから始めよう

 自社の向かうべき方向は自分で決めましょう。お金を使って他社に決めてもらうのはやめましょう。おぼろげにはあるけど、どう悩んでも言葉にできない場合は、外部のブランドデザイナーを雇うのはわかります。しかし、ブランドを経営陣自身で情報収集する時間や情熱がイマイチなく、価値自体に対して不明瞭さ・疑いがある場合は、ブランディング投資はやめましょう。また別のチャンスは訪れるでしょう。

①の事例:ネクストイノベーションは自社内チームで連携

 ネクストイノベーションは、オンライン診察でピルを処方するアプリ「スマルナ」を運営しています。スマルナでは、医師の診察からピルの処方、お届けまで一貫して行うほか、助産師や薬剤師が相談を無料で受け付ける相談窓口を設けています。
 スマルナの内部チームはブランディングに情熱を持ち、ブランド論を学びつつ、外部との連携を最小限にしながら、自社内チーム連携によってブランド力を急成長させています。2018年6月にサービスを開始しましたが、今年、ブランディング開始後から急進し、アプリが累計27万DL達成。採用も好調でメンバー数も半年で、約2倍になりました。
 自社ブランドの基礎は自分たちの情熱と行動で固めることの重要性を、今まさに証明してくれている事例と言えます。

②内部共有:自社らしさを社内伝え、事業活動に活かそう

 多くの会社が見逃している施策それは良質な内部共有です。ブランド用語だとインナーブランディングと呼ばれます。なぜ内部共有が簡単ではないのでしょうか?社内においても立場の違い、社歴の長さ、思い入れの違いなど多様性があることを見過ごし、一方的にトップダウンした結果、メッセージが響かないまま、社としてはブランディングをやり切ったと思い込んでしまうためです。必ず自社と関連のある簡潔なメッセージや行動を社員メンバーと一丸となれる目標を立てることを探して取り組みましょう。

②の事例:伊藤超短波は健康経営を軸に発信

 伊藤超短波は、100年を超える歴史と高い技術を持つ後継系医療機器メーカーです。難しい課題としてはtoBをメインとした医療機器販売という業態は国内では発信が厳しく制限されること。その状況で、自社らしいと考え、発信の軸にしたのは経済産業省が推奨する『健康経営』でした。医療機器メーカーだからこそ社内から健康になるという明瞭なメッセージを発信し、一丸となり行動することで、2019年には健康優良法人ホワイト500という日本トップクラスの健康経営企業としての実績も残しました。その明確な存在感を背景に、大手企業との連携、ビジネスのデジタル化(DX)、新ブランド開発などに乗り出しています。
 発信が難しい業界でも、経済産業省の取組をうまく融合させて実践している良い例です。

③外部発信:自社のことを社内メンバーと協力して発信しよう。

 外部発信は自社での発信または、広告などを実施する段階です。しかし、上記①と②を順番に経た中小企業の経営・社員の皆さんは簡単に外部にお金を使いませんでした。なぜなら、自分たちの発信すべきことが明確で自分自身で試してみたくなり、こだわりを表現したいと感じるからです。①と②がなかった場合、ただ目立つために、自社と関連のない有名な人を、ただパワーのある媒体に掲載していたかもしれません。メディアを活用すること自体は悪いことではありません。むしろ、自社らしさを検討した結果、どんどん使おうとなることもあります。しかし、自分自身にしても、メディアを借りるにしても、意思を持って使うことで、より有効に、連続性を持って使うことができるようになるのです。

③の事例:SoVeCはデジタル上で情報発信

 SoVeCは、SoVeC Smart Videoというだれでも簡単に高品質な動画作成ツールを開発・販売をしています。リソースに限界のある営業マンの力を、オフラインの場だけではなく、デジタル上でもイベントや資料の展開をすることで、営業員の人数は変わらないにもかかわらず、顧客獲得効率を270%まで引き上げました。そして重要な点は、そのデジタル上の展開も自社のメンバーで行うことで、運用も分析も用意にでき、かつ何回でも自社だけで執り行うことができるコミュニティを形成に成功しました。

上場企業を超える存在感をつくる「ブランディング」

 ブランディングは順序を守り、自社らしく継続することほど大切なことはありません。認知度が欲しいから、採用を伸ばしたいから、というその場限りの取り組みは「ブランディング」と言うことはできません。

 ただ、業界や会社の規模も関係なく、しっかりと自己発信をすることができたなら上場企業を超えるような素晴らしい存在感を作ることもできます。経営や社員の皆様に情熱があるなら、ブランディングは欠かせない経営戦略となるでしょう。