ブランディングで新規事業やSNSが急伸

 「日本ブランドはなぜ海外で負ける?弱点から学ぶ中小企業のブランディング」の記事では、「ブランドの情緒的価値が科学的にどのように作用し、ビジネスにおいて強さを生み出すのか?」「なぜ、国内企業はブランドを作れないのか?についての歴史的な背景」を説明しました。

 では、国内企業はブランドのパワーを今後も活用できないのかと言うと、そうではありません。この数カ月で以下のような事例に関わってきました。

  • 後継ぎが経営する企業が、ブランディングを通して、上場企業と大規模なビジネス契約を結んだ
  • 新規事業がブランディングを導入し、4ヶ月で顧客数と売り上げの伸びが10倍強に急成長した
  • SNSなどで、フォロワー数が数百倍に増えた

 これらの共通点として、メディアやインフルエンサーなど外部の力を使っていないことが挙げられます。また、リスクのある炎上行為・発信などをしているわけでもありません。
 正しい順序によるブランディング(ブランド構築活動)によって、元々持っていた力が開花しただけなのです。

ブランディングで結果が出ない場合の共通点とは

 ブランディングは、始め方で大きく成功/失敗が変わってしまいます。では、ブランド構築がどのような順番で始めるべきなのでしょうか。
 まず、ブランディングで結果が出ない企業に見られる共通点から見てみましょう。ただし、悪い例でも、企業のブランド潜在力は眠ったままなので、改善することができます。

ブランディングで結果が出ない悪い例の共通点

ブランド=知名度であると考え、露出を多くする取組みから始める

 良いモノづくりをしているのだから、社名・製品さえ知られれば必ず勝てるはずと考える純粋な行動です。しかし、これはブランディングではなく、プロモーション(広告活動)です。
 ブランディングとプロモーションは、似て非なるものです。ブランドデザイン業界では次のように例えられます。

「プロモーションとは自分自身で自分を褒めること。そして、ブランディングとは、他者が自分を褒めてくれること」

プロモーションとブランディングの違い

 メディアを買い自己紹介しても、それは自社らしい素晴らしい方法なのでしょうか。そして見ている人は、あなたの会社を理解してくれるのでしょうか。ここには大きな溝があります。
 そのために腕の良いデザイナーが表現を工夫するのが、広告制作会社の役割です。しかし、デジタルが発展し、直接コミュニケーションを取れる現在においては、広告による接点だけでは、もったいないとも言えます。

ロゴ、施設、制服などのデザイン刷新から始める

 第二創業期などとひっかけて、経営側の判断で始めるパターンです。時期は良いのですが、ただ変更するだけでは、何か変わるんだ程度しか伝わらず、顧客だけでなく、従業員も置き去りになります。
 そして残念ながら、ロゴ、施設、制服などを作り直すデザイナーは、ブランディングの基礎(=創業・事業の意思)までは汲み取れず、とにかく色・形として素敵なデザイン(図形など)を作ります。

 バラバラに作られた事業戦略とデザインが偶然ピッタリとハマることは、あり得ません。とりあえず、新たなデザインで心機一転する行為は、自社に貢献する可能性は極めて低いどころか、ロゴ変更による会社の認知度低下のみがもたらされることもあります。

結果が不明瞭な海外のブランド構築メソッドなどを使う

 私は、海外ではグローバル企業に勤め、国内では一部上場広告代理店や事業会社に勤めていましたが、海外のやり方、国内のやり方、新規事業のやり方、IT企業のやり方それぞれスピード感も予算も全く異なりました。
 世界で成功しているメソッドは、世界で成功しているブランドデザイナーが適材適所で使いこなして、初めて真価が発揮されます。
 これは、モノづくりに例えれば、海外と日本の規格が違うため、調整をなくしては、うまく力を発揮できないのと同じです。
 高品質だからと言って、そのまま使うのは厳しいですし、国内で成功事例を作り出すだけでも、長い時間を使います。世界の高品質なメソッドに使われるのではなく、使いこなさなくては、成功率をあげることはできません。

 失敗している事例は、ほとんどが認知度だけあげればブランドの完成であると考え、一度のプロモーション(広告的行為)にお金・労力を使い切ってしまいます。その後、顧客、クライアント、採用候補人材などの人々に伝わる前に、息切れしてしまいます。

 後編では、短期間で効果が出始めている会社の共通点と事例を詳しく紹介します。