地元がNOでも…全国から注文殺到のゆで野菜の顧客ターゲティング
販路を広げようとお店を回って「NO」を突きつけられたらどうしますか?常識にとらわれずに魅力を再定義すれば、全国や海外を狙える商品が地方にはたくさんあると考えています。そんな一例となる長崎県雲仙市発の「まるゆで野菜」の販路拡大について紹介します。
販路を広げようとお店を回って「NO」を突きつけられたらどうしますか?常識にとらわれずに魅力を再定義すれば、全国や海外を狙える商品が地方にはたくさんあると考えています。そんな一例となる長崎県雲仙市発の「まるゆで野菜」の販路拡大について紹介します。
「申し訳ないけど、この商品はあまり売れないと思うので取扱いできないな!」。商談先の地元のスーパーの店長の言葉をきっかけに支援プロジェクトが始まりました。今回は、長崎県雲仙市の農家、西田信介、まゆみさん夫妻のつくる「まるゆで野菜」を大村市産業支援センターが支援した事例を紹介します。
西田信介さんは、脱サラして農業を始めたのですが、せっかく育てた野菜も全国で豊作が続くと、1000箱出しても1万円にもならないという状況のなか、県の6次化支援を受けてゆで野菜を真空パックした商品を開発しました。
最初の相談内容は、「雲仙市の産直市場や長崎市内のスーパーで取り扱ってもらっているが、なかなか販路が広がらない。県内で唯一人口が伸びている大村市内のスーパーで取扱ってもらえるよう紹介してくれないか」という依頼でした。
早速、スーパー側に打診したときの回答が冒頭の言葉でした。取り扱えない理由としては、長崎のスーパーでは生の人参は3~4本で100円程度ですが、西田さんが開発した真空パックの「まるゆで野菜」は2本で150円、高いから売れないだろう、とのことでした。
スーパーの回答に意気消沈する西田さん夫婦。しかし、私は、ゆで野菜に潜在的魅力があると感じ、「大丈夫です。これは売れますよ!」と伝えました。そして、「メインターゲットは長崎ではなく、首都圏・全国を狙いましょう!」と付け加えました。
そこで、まず取りかかったのが、「まるゆで野菜」の魅力のピックアップでした。
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ターゲットについては、高齢者や離乳食の子育て世代を検討しましたが、今回は、都会でバリバリ働くキャリアウーマンをメインとすることにしました。「東京丸の内や新宿でバリバリ稼ぎながらも、帰りは終電、家ではコンビニ弁当という都会のキャリアウーマンをイメージして、この層にこそ時短茹で野菜の商品価値を伝えましょう!」と提案しました。
さて、照準を定めたものの、都会では北は北海道から南は沖縄まで全国の野菜が激戦を繰り広げています。
激戦区で、どのように長崎の茹で野菜をPRするか?
数多くの商品の中で、人は自分の関心がないことは目に入りません。そこで長崎産の野菜などありきたりの表現ではなく、「毎日お仕事頑張っている、働くあなたのための野菜ですよ!」ということを伝えるために野菜に名前を付けることを提案しました。こうして、長崎発の時短野菜「キャリアウーマン応援野菜」が誕生しました。
その後、出来るだけお金をかけずに知恵を出して売上を上げるという方針に基づき、産業支援センターの相談者でもあり、2016年度に大村フラワー大使をされていたデザイナーの鐘江美沙紀さんとコラボして「キャリアウーマン応援野菜」プロジェクトが本格始動しました。
産業支援センターでは、キャッチコピーの作成、ホームページ兼通販サイトの立上げサポート、プレスリリースを順次行いました。その結果、長崎のみならず、九州、全国ニュースでも取り上げられ、北海道から沖縄まで注文が寄せられました。また、日本を代表する大手スーパーグループだけでなく、シンガポールでも販売されるなど海外まで販路が拡がりました。
新型コロナの影響が吹きあれた今年の春では、自粛生活をサポートする時短&接触減の野菜として全国放送でも紹介され、さらに注文が殺到するという形になりました。現在は、「まるゆで野菜」だけでなく、離乳食や介護食としても使える新作「まるゆでペースト」も販売しています。
地方で「NO」と言われても、全国や海外を狙える商品が地方には多く埋もれていると思います。地域の枠や常識にとらわれることなく、商品の魅力をブラッシュアップして売上アップを支援する。これが地域活性化の一助になればと思い、日々仕事しています。
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