FAX営業の「要りません」に一工夫 地域のクリーニング店が全国へ展開
日本三景の一つ「天橋立」近くにある地域密着型のクリーニング店が、お寺の法衣に特化したサービスを展開したところ、全国からおよそ100件の注文が寄せられました。このサービスを広めるために選んだのが「FAX営業」です。このFAX営業に一工夫を加えることで思わぬ縁が生まれています。
日本三景の一つ「天橋立」近くにある地域密着型のクリーニング店が、お寺の法衣に特化したサービスを展開したところ、全国からおよそ100件の注文が寄せられました。このサービスを広めるために選んだのが「FAX営業」です。このFAX営業に一工夫を加えることで思わぬ縁が生まれています。
法衣クリーニングを始めたのが、京都府宮津市でクリーニング店を運営する「両丹ドライ」の増田聡社長です。福知山産業支援センター(ドッコイセ!biz)の助言を受け、定額詰め放題の法衣クリーニングのサービスを「FAX営業」で始めた経緯を増田さん自身が紹介します。
私の住む宮津市がある丹後地域は京都府北部に位置し、観光が主な産業となっています。
日本三景の「天橋立」は多くの観光客が訪れる名勝ですが、街としては少子高齢化が進み、人口減少のため、商売の土壌がだんだんと縮小しています。
そんななか、2005年に後継ぎとして先代より事業の引き継ぎをしました。その当時はまだ、これほど人がいなくなるとは思っておらず、じわじわと窮地に立たされることになりました。それを救ったのがドッコイセ!bizとの出会いでした。
クリーニング業は地域密着型で、地元のお客様に支えられてきました。私のクリーニングはしみ抜きなどしっかりときれいにしてお客様に喜んでいただくスタイルです。丹後ちりめんを生み出したこの地は着物の需要が高く、着物のクリーニングは得意分野です。しかし、和装の衰退、少子高齢化、昨今のファストファッションの台頭で需要が減り、経営が徐々に悪化していました。
ある時、顧問税理士の先生に「このままではやばいですよ、こんな記事を見つけたのでここに相談に行ったら?」と勧められ、ドッコイセ!bizを知ることになったのですが、この時すでにかなり苦しい状況でした。
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「こんなところに行ったりしたらコンサル料が必要だろうし、払うこともままならない……」と思い、調べることもなく2か月ほど放置していましたが、先生に急かされ、とりあえず電話をしてみたのです。
私の第一声は「すみません料金はいかほどかかるのでしょうか?」でした。すると「無料です」とのお返事でした。びっくりして面会の予約を入れたのが始まりでした。
最初にドッコイセ!bizを訪問したのは2018年の10月でした。1時間で、現在の状況を説明し、西山周三所長からどんなことができるのか、何がしたいのか、などフレンドリーに聞かれ、初日を終えました。
その後、月1回の訪問を繰り返し、面談のなかで西山さんから「こんなもの洗える?」「あんなものはどうだろう?」などアドバイスを受けていました。そのなかである時「着物は洗えるんだよね?でも着物じゃ面白くない!他のクリーニング屋もやっているから、お寺の住職の法衣って洗えるの?」という質問を投げかけられました。
少ないですが、地元のお寺様の法衣はクリーニングしており、最近も同級生が嫁いだ大阪のお寺様の法衣を洗ったところ「きれいになった」と、とても喜んでもらった話をしたのです。
西山さんが「それだ!」と注目しました。酒の蔵元である西山さんは実際にお寺に酒を売り込んだ経験があり、その手法で全国から法衣をいっぱい集めようという企画が生まれました。
コアなお客様がつけば、口コミでどんどんお客様が増えることを考え、戦略として次の方針を決めました。
クリーニングに出すものは何でもよいとして、メニューは3点(15,400円)・5点(22,000円)・10点(33,000円)詰め放題の3つのコースに絞り、シンプルな分かりやすい料金設定にしました。
西山さんには「FAX営業」を勧められました。「この時代に今さらFAX??ネットでは?」と思いました。しかし「お寺のネット化は遅れていて、効果が薄い。最新の手法を使うのではなく、ターゲットに合った媒体を使いましょう」ということでした。
FAX広告であれば1件数円で送ることができ安価に広めることができます。しかし、FAX広告は嫌われます。私のところでもFAX広告がしょっちゅう届きますが、迷惑なものです。これを私が送ることになるとは思いもしませんでした……。
FAXを送ると、やはり一定の割合で次回からの送信拒否の連絡も頂きました。「それは気にすることはない」と言われていましたが、やはり気になります。拒否の返信を頂いた場合は、リストから削除し以後送らないようにしています。ただ、それだけではお寺様には伝わりません。最近では、「せめても」と些少の品を添え、お詫びの封書をお返ししています。自分でも何か納得のいくことがしたかったのです。
先日、お詫び先のお寺様よりFAXが届き、拒否FAXを送ったことに対するお詫びとクリーニングの依頼が書いてありました。こちらがお詫びしなければならない立場なのにと私の胸も熱くなり、さっそく電話でお礼とお詫びを申し上げました。やはり、心を通わせることはとても重要なことだと感じています。
2019年10月にFAXを1万1000件流した結果、翌年2月まで注文が続き合計100件ほど頂きました。
しかし、宗派によってたたみ方が違うということが判明。地元ではそんなことはなかったのでこの違いに現在も困惑しています。とにかく転びながら怪我しながら出発しましたのですが、これもその怪我のうちです。
一方、好評を頂いているお寺様のリピートも増えました。なかには、ほかのお寺様を紹介して頂いたり、近隣のお寺様は天橋立に遊びがてら持ってきていただいたりと、かわいがってもらっています。
法衣クリーニングを続けるにあたり「話す」ということに重きを置いています。FAX広告という一番怪しい手段をとっているため、私自身を少しでも分かっていただきたいということが一つ、そしてこのようなFAX広告で申し込まれて大事な法衣を見ず知らずの私に預けようとされる不安を少しでも取り除きたいという思いです。
商品の通販ではなくサービスの通販となるため、この「話す」ことはとても重要なことと考えます。
この通販を通じて地元のアピールもしています。仕上がり品の中に、天橋立のパンフレットを入れて、10点コースには地元グルメを付けています。丹後地方に興味を持っていただけるようにとの思いからです。
クリーニングの通販だけでは面白くないですし、地元にもお寺様にも喜んで頂けるプラスアルファは大事と考えます。
ドッコイセ!bizでは1時間の面談をしています。その内容はほぼ雑談。でもこれが一番重要なことです。
なぜならばその話のなかで、ふと良いアイデアが生まれるからです。
西山さんも、私がクリーニング屋だから「そしたら法衣クリーニングしましょう」といきなり提案したわけではなく、雑談のなかから法衣クリーニングが生まれました。事前に用意されていたわけではありません。
この法衣クリーニングはまだやり始めたばかりで改良の余地がたくさんあり成功と言える段階ではありません。ドッコイセ!bizで生まれた成果はドッコイセ!bizへの事例としてお返しする。そのギブアンドテイクを今後も続け次の何かを探すため今後も雑談しながら楽しく通いたいですね。
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