BtoC商品で勝率を上げるコツ 1カ月で生まれた「マスク専用洗剤」
国内外のOEM生産を手がけてきた洗剤メーカーが、コロナ禍で初のBtoC商品となる「マスク専用洗剤」を商品化しました。商品の開発に1カ月。2万本を売り上げるまで4カ月というスピード勝負ができたことには3つの要因がありました。商品化を後押しした木更津市産業創造支援センター(らづビズ)から報告します。
国内外のOEM生産を手がけてきた洗剤メーカーが、コロナ禍で初のBtoC商品となる「マスク専用洗剤」を商品化しました。商品の開発に1カ月。2万本を売り上げるまで4カ月というスピード勝負ができたことには3つの要因がありました。商品化を後押しした木更津市産業創造支援センター(らづビズ)から報告します。
マスク専用洗剤を開発したのは、千葉県木更津市にある洗剤メーカー「ユニバーサル・デタージェント」の茂木泰一郎社長です。天然由来の素材を使うことにこだわり、洗剤としての機能はもちろん、環境にできるだけ負荷をかけない商品を世の中に届けたいと走り続けています。
今まではインドネシアの自社工場で生産し、国内外の会社のOEM生産をおこなってきました。インドネシアに工場を作ったのはパームヤシの生産地に近く、環境に優しい認証農園があったからです。
環境負荷を第一に考える茂木社長としては最適な地であったのですが、数年前から国内にも工場を持ち、違った角度から洗剤の生産を考えたいと準備していたところでした。そんななか、新型コロナウイルスの感染拡大により、当初予定していた計画を一から考え直す必要に迫られました。
紹介されて、木更津市産業創造支援センター(らづビズ)へ予約を入れてみたものの、具体的に何を相談すればいいのかわからず、当時ぼんやりした表情で訪れた茂木社長が印象に残っています。しかし、話をし始めると、目の前の課題が解決していくにつれ、その表情は変わっていきました。
話を伺うなかで、いくつかのポイントを組み合わせ考えてみました。一つ目は、自社工場を持っていることによる「柔軟性」と「スピード」です。
二つ目は、短期トレンドとしての「新型コロナ」、長期トレンドとしての「環境」です。短期トレンドでも、売り上げは上げられますが、コロナ禍では会社の本質的な成長につながる方向が重要と考え、ユニバーサル・デタージェントが経営方針として大事にしている「環境への配慮」と、今後さらに消費者が注目する「環境問題」がリンクしました。
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そして三つ目は、キーパーソンは茂木さん自身だと考えました。これは茂木さんがかつて学校で化学を教えていたことも関係します。
洗剤の豊富な経験と化学的な知識を生かし、今後世の中の役に立つ新商品の開発が、今あるリソースだけでほとんどコストをかけずに可能であると判断しました。実は、最初の10分ほどで「マスク専用洗剤」というイメージが出来上がっていました。その後の数十分はそれが的確かどうかを確認する時間でした。
マスク専用洗剤の目的の一つは、鼻や口に直接当たるマスクなので皮膚への刺激が少ないものを開発することです。もう一つは、使い捨てマスクを洗うことで廃棄枚数を減らすこと(マスク専用洗剤で洗うことで4-5回使うことができる)です。もちろん布製マスクも洗えることも想定しました。
茂木社長に商品イメージに加え「この商品はマスクゴミの減量につながる社会的な意味もある」とお話すると「すぐに始めます!」と開発がスタートしました。
すぐに「マスク専用洗剤」の商品化に向け走り始めました。天然由来で、無香料・低刺激な原料の調合は知識豊富な茂木社長、外観はスピード重視でらづビズで基本イメージを作り上げました。「今まで無かった商品」なのでわかりやすさが一番重要でした。
今回の商品は、今までのOEM生産ではなく、自社開発のオリジナル商品となります。オーダー分だけ作って納品ではなく、販路に合わせたビジュアルであったり、生産量自体も自社で決めることになります。これは茂木さんにとって「BtoBオンリーからBtoCを見据えた転機」となりました。
販路は、らづビズも協力し、大手ドラッグストアの通販から始めることにしました。ユニバーサル・デタージェントにとっては、取引方法から納品の仕方まですべて初めてのことで、慌てることもありましたが、らづビズによる同行商談や商習慣の違いをフォローしました。
茂木社長の「洗剤メーカーとして世の中のためになる商品だ」という思いもあり、すぐに追加オーダーが入る商品となりました。
1ヵ月で商品を作り上げ、4ヵ月後には大手ドラッグストアの通販で約2万本を売り上げ、その後小売店や商社などへの販路の拡がりは現時点で8万本を生産するまでになりました。今では第2弾として「使う場所を変えた」商品を、第3弾として「ブランディングを進めるための商品」をらづビズと開発中です。
不安定な時代の中では小さなステップを数多くすることで結果の確率が高くなります。らづビズでは短期的な見方だけでなく、長期的な方向も考えたアイデアで企業とともに動きます。
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