目次

  1. 顧客管理(CRM)とは何か?
  2. 顧客管理が必要な理由
    1. CRMソフト・SFAソフトの普及
    2. 消費者の消費パターンの変化
    3. 顧客情報や商談情報の共有
  3. 顧客管理を行うためのツール
    1. 顧客データベース
    2. 企業データベース
    3. 商談データベース
    4. スケジュール管理
    5. コミュニケーション
    6. 分析
  4. CRMソフト導入のポイント
    1. CRMソフト導入の目的を明確にする
    2. 導入担当者・責任者をアサインする
    3. データを事前に準備しておく
    4. 運用開始後は社内コミュニケーションを密にする
  5. 最後に「事業の目的は顧客の創造である」

 顧客管理は英語のCustomer Relationship Managementの訳語で、顧客関係管理とも訳されます。一般的には顧客管理またはCRMと呼ばれていて、それを行うためのツールがCRMソフトです。

 顧客管理を一言でいうと顧客との関係性を管理し、ビジネスにすることです。

 一般的には、古今東西の営業マンの多くは古くから手書きの顧客リストを管理し、氏名、住所、電話番号、誕生日、家族構成などの情報を収集、ビジネスにつなげてきました。優秀な営業マンは上客の顧客リストを保有し、多くの商談を発生させてきたのです。

 そうした古典的な顧客管理の仕組みが、近年のインターネットの普及とCRMソフトの登場により、改めて注目されることになったのです。

 では、今なぜ顧客管理が必要なのでしょうか。以下に主な理由を挙げます。

 矢野経済研究所の調査によると、2018年の我が国企業のCRMソフトの普及率は28.0%で、2012年の9.0%の三倍以上になっています。

 また、SFA(Sales Force Automation、営業自動化)ソフトの普及率は33.8%で、2012年の22.5%から10ポイント以上増加しています。

 顧客管理を支援するCRMソフト・SFAソフトの普及は確実に進んでおり、御社のライバル企業も導入する可能性があるか、すでに導入している可能性があります。

 その場合、営業力・マーケティング力において御社に相応の差をつけ、場合によっては御社のマーケットシェアを奪う可能性が生じます。

 また、消費者の消費パターンが変化していることも理由です。

 インターネットと検索エンジンの普及と進化により、消費者の消費パターンが従来型のAIDMAモデル(Attention(注意喚起)→Interest(関心)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動))から、AISASモデル(Attention(注意喚起)→Interest(関心)→Search(サーチ)→Action(行動)→Share(共有))へ変化しているとされています。

 現代においては、消費者は検索エンジンを使って情報を収集して消費する傾向が強いため、過去に有効だった誘導型のマーケティングが有効でなくなりつつあります。

 それゆえ、ゼロベースで消費者に接触し、情報を共有するなど関係を強化しながら最終的に購入をしてもらうという一連の顧客管理のプロセスが重要なのです。

なお、このプロセスは、マーケティングの世界では「リードナーチャリング」(Lead nurturing)と呼ばれています。

 また、顧客管理にCRMソフトを使うことで、顧客情報や商談情報を全社で共有することが可能になります。

 CRMソフトが導入されていない企業では、そうした情報は営業担当者や情報管理担当者が属人的に管理しているケースが少なくありません。

 情報が共有されていない状態では、全社一丸となった顧客対応も困難です。さらには、効率的で効果的なリードナーチャリングを行うことも難しくなります。

 では、顧客管理を行うためには何らかのツールが必要でしょうか。

 答えはYesで、上述のCRMソフトが必要です。CRMソフトは有償無償を含め、多数開発されています。一般的なCRMソフトは、以下の機能が利用できます。

 顧客の氏名、勤務先、所属部署、肩書、メールアドレス、電話番号、住所などの情報を納めたデータベースです。ほとんどのCRMソフトは、パソコン、スマートフォン、タブレットなどで情報が閲覧できます。

 社名、住所、代表電話番号、業種、従業員数などの情報を納めたデータベースです。会社ごとの取引履歴が参照できるCRMソフトもあります。

 会社ごとの商談管理データベースです。商談日時や商談内容、現在の状況、今後の展望など、取引についての情報が参照できます。

 営業担当者のスケジュールを管理する機能です。各人のスケジュールを閲覧できるほか、営業マンの日報を社内で共有できるCRMソフトもあります。

 顧客とコミュニケーションする機能です。多くはメールによるコミュニケーションが行えますが、CRMソフトの中にはコールセンターと連動し、通話履歴を共有できるものもあります。

 売上や案件ごとのマーケティングデータなど、蓄積された情報を基に各種の分析を行う機能です。類似案件に対し、効果的な営業手法をレコメンドする機能を持つCRMソフトもあります。

 では、実際に社内にCRMソフトを導入する際のポイントを挙げます。

 まずはCRMソフトを導入する目的を明確にして、全社で共有する必要があります。

 明確な目的なしにCRMソフトを導入しても、不十分な結果に終わるか、場合によっては導入自体が失敗する可能性すら生じます。

 これは、特にITリテラシーが比較的低い会社や業界において、特に留意する必要があります。

 多くの会社にとって、社内にCRMソフトを導入することは簡単ではありません。導入には社員の技術的な理解のほかに、導入のための行動変容が必要です。

 そのカギとなるのが導入担当者・責任者のアサイン(指名)です。

 CRMソフトをいつまでにどの程度社内に普及させるかをアクションプランに記し、実際の導入までの責任を持たせる必要があります。

 CRMソフトに取り込むデータは、できるだけ事前に準備しておきましょう。

 特に名刺やメールなどの情報はCSVファイルなどにまとめ、CRMソフトを導入したらすぐに取り込める状態にしておくのが理想です。

 「導入してからそぞろにデータを入力すればよい」といったやりかたでは、データが散逸するリスクや、データの入力が不十分に終わる可能性が生じます。 

 CRMソフトの実際の運用が始まったら、脱落者が出ないように社内コミュニケーションを密にしてください。

 定期的なミーティングで各人の運用状況を確認するとともに、脱落者が出そうになったら導入担当者・責任者がバックアップするなど支援体制を整えましょう。

 CRMソフト導入に失敗する会社の多くは、運用が定着しないで終わってしまっています。

 以上、顧客管理とCRMソフトとは何か、またCRMソフト導入のポイントなどをご紹介いたしました。

 顧客管理とは、故ピーター・ドラッカーの名言「事業の目的は顧客の創造である」の実現を目指すものであり、そのためのツールがCRMソフトであると言うことができるでしょう。

 なお、顧客管理の仕方は、現在進行形で進んでいるCRMソフトの進化と歩調を合わせて変化し続けています。

 CRMソフトはSFAソフトと融合し、さらにはMA(Marketing automation、マーケティング自動化)ソフトとも融合し始めています。顧客とのコミュニケーションをより密にできるとともに、AIやビッグデータを使った営業支援の機能もさらに進化し続けています。

 今後の顧客管理の世界における勝者は、そうしたテクノロジーを巧みに使いこなす「テックサビー」な人や会社になるかもしれません。