デジタルに相性の良いネーミングとは

 商品の名前には、デジタルとの相性が良いものと悪いものがあります。デジタルの特徴を意識しながらネーミングすることで、経営・営業活動を効率化できます。さらに、売上や利益の最適化も見えてくるのではないでしょうか。

 デジタルと相性の良いネーミングとは、デジタルにおけるもう一つの商標ともいうべきドメイン(URL)を最適に取得できる名称のことです。「短い名称」「英語」「.com」「.jp」で構成されている方が高価な資産となります。
 URLの打ち間違えを減らし、覚えやすく、デジタル上での販促活動、マーケティングの効率化にもつながります。ドメインは商標と同じく基本的に早く申請した方が取得できます。

ドメイン名の価値

 加えて、素晴らしいドメインは、事業そのものよりも価値を持つこともあります。たとえば、GMOインターネットは2014年に「z.com」を8億円で取得しました。また、身近な話では、知人の中小企業で、4000万円でドメインの譲渡依頼がありました。

 このように、時代とともにネーミングが持つべき視点は広がり、同時に金銭的価値も上昇したのです。そこで、ネーミングについて基礎から解説します。

ネーミングが持つ5つの特徴

1.ネーミングはなぜ重要なのか

ネーミングの役割と重要性は下記の3点でまとめることができます。

  • 認知獲得の効率化
  • 名前の資産化
  • 法的安全性の強化

1-1.認知獲得の効率化

 世界では、一目でわかる名前をつける会社や製品が、顧客の理解や共感を得て成功しています。顧客に一目見てもらうのもコストがかかり、努力が必要です。もし、1回で覚えてもらえるならどれくらい効率化されるでしょうか。また、説明不要ならどれくらい時間は短縮されるでしょうか。

1-2.名前の資産化

 仮にビジネスがうまくいかなくても、商標とドメインを獲得することは独自の資産価値を持ちます。良いネーミングの方が、良い商標・ドメインの資産になるでしょう。先述の通り、小さなビジネスよりも名前が大きな価値を持つことも十分あり得ます。

1-3.法的安全性の強化

 良いネーミングは、経営戦略に則り、法的にもクリアされているべきです。そうすることで持続的で、安全なビジネスを運営することが可能となります。

2.ヒット商品のネーミング戦略

 昨今、デザインやブランディングの領域において、戦略が見直されています。それは見る側、顧客を中心と考えること、簡単であることです。「顧客中心設計(ユーザーセントリック)」ともいわれます。
 代表的な会社は、googleです。

Google本社

 あなたの会社の製品は、自分たちの言いたい長所や好きな言葉をネーミングに使っていませんか?顧客に意味や利点が伝わりきらず、機会損失になっていることもあり得ます。

 ネーミングにおいての戦略で「読めること」と「わかること」は重要です。そんな簡単なこと……と思われるでしょう。しかし、下記のようなことはありませんか?

  • 客観的に商品名が読みにくい、読めない。※デザインで文字が読めないも含む
  • 商品名を読んだあとに機能や役割が想像できない。
  • 1,2人の社長や担当者だけで決めてしまっている。

 会社の製品を知らない、または興味のない顧客がすぐに理解し、興味を持ってくれるでしょうか?そうでなければ、追加説明が2、3回、30秒間必要になります。それが展示会、営業会ならどれくらいの損失になるでしょうか?そして、ネーミング設計の損失は継続するのです。

読めることは大事 今治タオルの事例

 今治タオルはリブランディングするときに、ブランド商品認定マークを「imabari towel Japan」にすることで、日本人も外国にも読めるようにしました。その結果、2004年に36.6%だった認知度は、2014年時点で76.9%へ上昇しました。

わかることが大事 世界の成長企業の事例

 世界で成長している企業名は、中学生でもわかる単語を組み合わせて、伝えています。理解・共感を集め、説明時間を省いています。

  • WeWork(私たちは働く)→ 共同オフィス運営会社
  • Space X(宇宙とX)→ 民間初の有人ロケット打ち上げ成功した会社
  • Epic Games(歴史的なゲーム) → 全世界で3.5億人以上がプレーするゲーム「フォートナイト」を開発

 こうした名前からは、会社や製品の輪郭が想像できます。CBinsigntsによると、世界の急進企業の象徴であるユニコーン企業たちのトップランキングの約半数を簡単な英語の組み合わせが占めています。
 ここは欧米だけではなく、シンガポール、インドなども含みます。ただし、命名登録が特殊な中国企業を除きます。

SpaceX開発の宇宙船の打ち上げ

 筆者が立ち上げた会社も、日本国内だけではなく、アジアにおけるデザインと経営の繋ぎ込みによる成長サポートに注力しているために「Design and Management(デザインと経営)」というシンプルな名前にしています。
 初めて会う海外の方にも『何をしている会社ですか?』と聞き返されることが少なく、「どんなプロジェクトをしているのか?」「特にどのような領域が得意か?」など、より具体的な話へと進めることができ、特に重要な人物と話す時は貴重です。
 このようなスピード感は、勢いのある会社や不特定多数の顧客などを対象とする時は、大変な価値を持ちます。

 ネーミングの基礎があまりに簡単と思う方も多いでしょう。しかし、それほどまでにネーミング意図のわからない会社・製品が多いのです。逆にいえば、チャンスとも言えます。

3.最新版 デジタル対応のネーミング作成手順

 現代においてデジタルを意識したネーミングは必須ですので、そちらを加味した手順を紹介します。

3-1.製品の情報整理をする

 まず、商品の強みと弱みを再確認しましょう。強い部分、弱い部分をストレートに表現するだけではうまくいかないことも多いのですが、改めてネーミングするチームで、長所短所は確認しましょう。
 つぎに商品を売る地域や国を整理しましょう。国は言語、文化、商標、ドメイン全てに影響しますので数年先の事業計画も確認しましょう。
 さいごに、商品を売る相手を想像しましょう。年齢、趣味、生活、性別などを意識しましょう。そのうえで達成するべきは、命名をするチーム全員が、会社や製品の事業計画を理解し、どの国・地域の、どのような人が商品を買ってくれる方か、理解できている状態です。また、販売対象の国の文化を学び、やってはいけないことも調査・共有できていることも大切です。

3-2.ネーミングの草案を作る

 まず、販売する地域、国を意識して言語を選択しましょう。日本国内だけなら、日本語。世界なら英語。中国も意識するなら、不吉な音は避けることなどが一例です。
 つぎに、ネーミングに使うキーワードを50-100個ほど挙げましょう。小、中学生の辞書の中にある単語を基本として、簡単で長所も含まれそうだなと思うものを数多く選びます。たとえば、発明したすごい扇風機をネーミングするなら、単語はスマート、AI、カンタン、ファン、扇風機、サーキュレーターなどです。
 最後に、選出したキーワードを組み合わせてネーミング案を10個ほど作りましょう。

3-3.ネーミング案を絞る

 まずは、商標を確認しましょう。弁理士などプロとの相談の上、確認することをお勧めします。
つぎに、ドメインを獲得しましょう。ムームードメインお名前ドットコムなどでドメインが取れるか確認しましょう。日本の会社、製品であれば.comや.jpなどが取れることが重要です。
 加えて、デザインのしやすさを確認しましょう。

3-4.ネーミング案の商標を申請する

 商標が申請できそうかどうかは、名前だけではなく、国や職種によって異なるため、申請が完了する、通過するまでは安心はできません。公表は避けましょう。

3-5.製品を発表し販促をする

 この段階で、記者会見、プレスリリース発表、販促などを開始できます。ネーミングは完了した段階です。

4.ネーミングの付け方のコツ(海外対応版)

 ネーミングの作成手順以外に、気をつけた方が良いポイントや、ライバルに差をつけるためのコツをいくつか紹介します。ネーミングはすぐに決めることはできます。しかし、その判断の後ろにある重要性に気づいていただけたら幸いです。

4-1.Google画像検索で単語とイメージの結びつきを知る。

 Googleで画像検索を行うと、言葉に対して、世間の人たちがどのようなイメージを持っているか分かります。言葉を図に変換できるのです。
 たとえば、ロボ、メカ、マシンはそれぞれ似たような言葉ですが、イメージは全く異なることがわかります。

  • ロボは、小さくて可愛い人を助けてくれるもの
  • メカは頭身が高く、巨大なヒーローロボット、悪役を思わせるようなものも含む
  • マシンは、ギアや鉄の反射なども含まれ、かっこいい反面、優しさや温度などは感じにくい

4-2.社内投票は意図を持って実施する。

 どれにしようか迷ったから、会社全体で投票してみるというのは、あまりお勧めできません。ネーミング草案の個性が無くなり、普通になりすぎてしまうこともあります。本当に良いアイデアが二つ残り、会社内の愛着も大事にしたいという場合などに実施しましょう。

4-3.ドメインは必要に応じて先に取得する

 ドメインは安価で簡単に取れます。そのためにアイデアが確定する前に取ってしまうという選択肢もあり得ます。世界向けなら.comを優先して、国内だけなら.jpでも良いですし、中国なら.cnをはじめとして特別な準備も必要となります。

4-4.シンプルさと説明性をチェック

 世界企業のネーミング基準で評価されている項目は、シンプルさと説明性のバランスです。一方で、自分たちの言いたいこと、哲学性については、あまり言いすぎると「よくわからない」と思われてしまう可能性があります。

4-5.中国でも売りたい場合は、音に注意

 日本と共通する考え方とも言えますが、”シ(死)”や”ク(苦)”など悪いことを連想させる音は避けましょう。中国に行けば会社や製品の名前は、漢字に置き換えるため、音の重要性が高まるのです。