調査概要

 この調査は、新型コロナの感染拡大をうけて東京商工リサーチが定期的に実施していて、今回で12回目。2021年1月5日~14日にインターネットでアンケートを実施し、得られた有効回答1万2176社を分析しました。資本金1億円以上を大企業、1億円未満や個人企業等を中小企業と定義しています。

中小企業では48%が「実施または検討」 

 調査のなかの質問のテーマの一つが「事業再構築」(新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編など)です。各企業に事業再構築の意向について尋ねたところ、8508社から次のような回答が得られました。

  • 「コロナ禍以後、既に事業再構築を行っている」…9.7%
  • 「今後1、2年で大幅な事業再構築を行うことを考えている」…6.8%
  • 「今後1、2年で部分的な事業再構築を行うことを考えている」…30.3%
  • 「今後2年以内に事業再構築の意向はない」…53.13%

 企業規模別でみると、大企業の38.0%、中小企業の48.2%が事業再構築を実施、または検討していると回答しています。

中小企業の事業再構築の意向。東京商工リサーチの第12回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査から引用

業種別では飲食の「実施・検討」が8割超

 事業再構築の実施または検討をしていると回答した企業を業種別に分析すると、構成比が最も高かったのは、飲食店で、娯楽業、織物・衣服・身の回り品小売業などが続きました。

「事業再構築」実施または検討企業の業種。東京商工リサーチの第12回「新型コロナウイルスに関するアンケート」調査から引用

 「事業再構築」を実施または検討している企業の構成比が高い業種は、別の質問にある「廃業を検討する可能性がある」と答えた構成比が高い業種が多く含まれ、厳しい状況に置かれている様子がうかがえます。

 具体的な再構築の内容を尋ねると、織物卸売業(資本金1億円以上)は「医療関係の素材や製品を増やしている。ECビジネスを強化している」と回答。旅館・ホテル業(資本金1億円以上)は「テイクアウト商品の開発」、自動車整備業(資本金1億円未満)は「レンタカー事業」などと回答しています。

事業再構築補助金は競争率が高くなる可能性

 新規事業や事業転換、事業再編に取り組む中小企業、中堅企業を支援し、最大1億円が給付される「事業再構築補助金」が2020年度第3次補正予算案に盛り込まれています。

 東京商工リサーチの調査のように、事業再構築を検討している企業の割合は高く、補助金自体の注目度も高いため、補助金の競争率は高くなると見込まれます。

調査担当者「まずは足元の分析から」

 こうした兆候に対し、東京商工リサーチの調査担当者は「事業転換を考える前に、まず自社の立ち位置を見直す必要があります」と話しています。

 新型コロナの資金繰り支援策として、実質無利子融資に加え、税金の支払い猶予も認められています。倒産の抑止には一定の効果を見せましたが、その一方で今までと同じ形でキャッシュフロー分析をしても、本来払うべき債務が隠れて見えなくなっている可能性があります。

 新たな事業に取りかかる前に、まず現業をきちんと分析するところから取りかかるのが良いのではないでしょうか。