外国人雇用は検討すべき?メリットや注意点を徹底解説
少子高齢化で労働力が減少している日本企業にとって、外国人労働者が貴重な働き手として、注目されています。しかし初めて外国人を雇用する場合、ハードルの高さを感じる企業も多いでしょう。外国人雇用のメリットや配慮すべきポイントを知って検討してみましょう。
少子高齢化で労働力が減少している日本企業にとって、外国人労働者が貴重な働き手として、注目されています。しかし初めて外国人を雇用する場合、ハードルの高さを感じる企業も多いでしょう。外国人雇用のメリットや配慮すべきポイントを知って検討してみましょう。
目次
まず、日本で働けるのはどんな立場の外国人か、また外国人雇用をめぐる現状について解説します。
外国人は出入国管理及び難民認定法(入管法)で定められた在留資格の範囲内で、日本での就労が許可されています。外国人を雇用する時は在留カードを確認して、日本での就労資格があるかを必ずチェックしましょう。
在留カードとは、入管法上の在留資格があり、日本に中長期間、適法に滞在する外国人が所有しています。在留カードの表面には「就労資格の有無」欄があります。「就労不可」と記載がある場合は、雇用できません。もっとも、「就労不可」と記載されている場合でも、在留カード裏面の「資格外活動許可」欄に記載がある場合には、就労することが可能です。(法務省入国管理局の資料より)
日本で働く外国人の数は年々増加傾向にあります。厚生労働省が発表する「外国人雇用状況の届出状況」によると、2019年(令和元年)10月末の時点で約166万人と前年よりも13.6%増加しています。この数字は2007年に外国人の雇用状況の届出を義務化してから最高です。
製造業・建設業を中心とする、慢性的な人材不足に悩む国内の企業は、外国人の雇用に積極的です。政府が高いスキルを持つ外国人や留学生などの就労を推進していることも雇用増加の一因になっています。
また2017年には入管法が改正され、外国人労働者の受入れが大幅に緩和されたことにより、外国人労働者の受け入れ体制の整備が徐々に進んでいます。企業側も外国人雇用に向けて意欲的になっているといえるでしょう。
外国人を雇用するには次のような募集方法があります。
これらの募集方法のうちいずれを用いるかについては、業務内容や募集したい外国人労働者の年齢などを踏まえて、検討することになります。 なお、人材を募集する際に特定の国籍の人材のみを募集することは、差別ともとられかねませんので、避けるようにしましょう。(厚生労働省の指針より)
就労ビザを保有していない外国人労働者の雇用に向けて募集をした後の採用までの流れの一例は次の通りです。
募集から採用までの流れは、日本人とほぼ変わりませんが、在留資格等の確認・就労ビザの申請といった手続が必要になります。外国人の雇用を決めたら、担当部署を設置したり専門家にアドバイスを求めたりするとよいでしょう。
せっかく手間をかけて雇用するのですから、優秀人材を確保したいものです。高い専門的スキルを持つ高度外国人材などを積極的に雇用するのも1つの方法です。高度外国人材を雇用するための好事例として次のような取り組みが報告されています
これらの取り組みは、専門分野に対する労働意欲の高い高度外国人材にとって魅力的な環境作りに役立ち、採用後の定着につながります。結果的に、企業側も自社のグローバル化など経営戦略的にも大きな効果が得られるでしょう。
外国人を雇用する際には、雇用主側か守らなければならないルールがあります。法律に則した適切な対応を知っておきましょう。
外国人を雇用する事業主には、雇用と離職の時に外国人の氏名や在留資格・在留期限などをハローワークに届け出ることが法律によって定められています(労働施策推進法28条1項)。対象となる外国人が雇用保険に加入するか否かで、書類の様式や届け出先が異なりますので気をつけましょう。
具体的には、外国人を雇用した場合には、会社が雇用保険の取得届に記載して報告するか、雇用保険の加入義務がない場合には「外国人雇用状況の届出書」をハローワークに提出する必要があります。また、雇用していた外国人が離職した場合には、「外国人雇用状況の届出書」をハローワークに提出する必要があります。
在留資格を確認することは、不法就労の防止につながりますので、必ず「在留資格」「在留期間」「在留期限」を雇用契約の締結前に確認するようにしましょう。
外国人を雇用する事業主は、雇用管理の改善に努めることとされています。具体的には次のような項目が、厚生労働省が定める指針において掲げられています。
外国人を雇用する企業に支給される国の助成金には、人材確保等支援助成金があります。
外国人のなかには、日本の労働環境や制度になじみがなく、言語の壁を抱える人もいます。そんな外国人の事情に配慮した労働環境の整備などを行う事業主に支給されます。次の2つの労働環境整備措置を行うことが受給の必要条件です。
加えて次の3つの措置のうち、いずれかを選択します。
これらの措置を盛り込んだ「就労環境整備計画」を作成して、本社がある都道府県の労働局に提出して助成金の申請をします。
さらに、以下の日本人労働者・外国人労働者双方の離職率に関する目標の達成と、外国人雇用状況の届出を適正に実施していることも、助成金の支給条件となっています。
就労環境の整備は、外国人の定着化につながるため、事業主と外国人労働者双方にとって有益な制度といえます。
外国人を採用する前に、メリットや注意点を知っておきましょう。
外国人を採用して得られるメリットは数多くあります。
外国人を採用するなら配慮したいポイントです。
ただ、これらは、労働環境改善のきっかけにもなります。言語や文化の違う日本で働く外国人のために、外国人労働者の母国語での研修を実施したり、日本人社員とのコミュニケーションが円滑になるようサポートしたりなど、さまざまな方法があります。受け入れ体制を万全にすることで外国人労働者の離職率も減る可能性があります。
また、日本人社員のコミュニケーションスキルが向上して、社内の活性化に役立つ場合もあるでしょう。
外国人採用は企業にとってプラスになることもあるため、積極的に取り入れていきたいものです。しかし、せっかく採用したものの離職率が高い職場も多いのが現状です。初めて外国人労働者を採用する企業は、まず受入体制と労働環境の見直しが不可欠です。社内の英語力の強化、日本語によるサポート体制の確立など課題をクリアしていきましょう。
また、文部科学省が公表している資料によると、外国人留学生向けの求人が少ないことが問題点として挙げられています。若くバイタリティにあふれた外国人留学生の雇用を検討することも、企業にとっては人材確保の選択肢になります。
外国人を雇用するなら、まずは万全の受入体制が必要です。早めに準備を進め、外国人労働者が働きやすい環境を作るのも事業者の努めです。外国人労働者を募集をする際は、どんな人材を求めているのか具体的に分かりやすく情報を出していきましょう。
優秀な外国人労働者は企業にとって大きな戦力になるでしょう。
大江・田中・大宅法律事務所 弁護士
アンダーソン・毛利・友常法律事務所、野村證券企業情報部で事業承継・M&Aの研鑽を積み、事業再生分野でも多くの実績を有する。フィナンシャル・アドバイザーとしての経験も踏まえ、経営者を総合的にサポートする。
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