目次

  1. アウトソーシングとは
  2. アウトソーシングに適した業種とは
  3. アウトソーシングのメリットは
    1. 人件費を抑えられる
    2. 中核となる本業に集中できる
    3. 外部から高い技能や知見、効率性を採り入れられる
  4. アウトソーシングが適していない業務
    1. 外部に漏らしてはならない情報を取り扱う場合
    2. パターンが決まっていない非定型的な業務
    3. 本業に近い業務やノウハウを蓄積する業務
  5. アウトソーシングで法律上の注意点
    1. 労働者派遣法
    2. 下請法
  6. まとめ

 アウトソーシング(outsourcing)とは、企業が一部の業務を外部委託する営みです。「資源を外から調達してくる」ことがもともとの意味です。労働力を他から一時的に、あるいは継続的にレンタルしてくるイメージといえます。

 社会人にとって、働くことが必ずしも、「ひとつの会社で勤務する」ことを意味しなくなっています。

 その裏返しとして、会社にとっての人材活用が、必ずしも「自社に勤務している従業員の活用」だけを意味するものでなくなっているのです。活用すべき人材は、会社の外から「借りてくる」こともできます。それがアウトソーシングです。

 アウトソーシングの対義語は、企業が直接雇用している従業員で業務をこなしていくインソーシング(insourcing)、あるいはインハウス(inhouse)です。日本語では「内製」と訳されます。

 業務をアウトソーシングする先としては、人材派遣会社が代表的です。その人材派遣会社から、会員として登録されているスキルが高い人材が紹介されます。

 フリーランスや副業中の他社従業員などに直接依頼するケースもあります。

また、アウトソーシングの外注先について、オンライン上で紹介を受けたりオファーを出したりする「クラウドソーシング」のしくみも一般的になっています。

 国内で代表的なクラウドソーシングのプラットフォームとして、「ランサーズ」や「クラウドワークス」などがあります。

 これらのクラウドソーシング業者の役割は、人材派遣会社に近いとはいえ、アウトソーシング人材の育成などは行わず、いわば依頼主とフリーランスをつなぐ「場」を提供しているイメージです。

 依頼はフリーランスや副業の人材に直接行い、報酬の一部がクラウドソーシング業者によって手数料として差し引かれます。

 たとえば、ICT(情報通信技術)系ではない企業が独自のアプリを制作するには、社外のSE(システムエンジニア)などにアウトソーシングすることが多いです。

 それだけではなく、たとえばWebサイトを立ち上げるときに、フリーのWebデザイナー、ライター、イラストレーター、システム管理者などに依頼もできます。

 経理・総務・法務などのバックオフィス部門をアウトソーシングできるようにもなりました。さらには営業部門もアウトソーシングすることが可能です。

 コールセンター(注文受付やクレーム処理)、電話営業など、電話回線を用いた業務のアウトソーシングは、伝統的に代行業者の多かった分野です。

 これからは、インターネットを用いた各種代行業が、ますます増えていくでしょう。

 インソーシング(内製)よりも、アウトソーシング(外注)を選択すべき理由として、以下のようなものが挙げられます。

 従業員をひとり雇用することは、企業にとって様々な負担になります。求人サイトなどに広告を出稿するコスト、内定を出しても入社を拒否されるリスク、さらに入社後の人材育成コストなどです。

 しかも、いったん雇用してしまうと、法律上、その雇用状態が手厚く保護されますので、企業の都合でその従業員を解雇することが極めて難しくなってしまいます。

 一方で、アウトソーシングは、仕事を依頼しない限り固定の報酬を支払う必要はありませんし、健康保険や年金の保険料、人材育成コストを省くことができます。

 会社にとって汎用性の高い定型的な業務は、アウトソーシングを選んだほうが効果的である場合が多いです。

 「その会社ならでは」という部分が少なく、他社と共通する部分のほうが多い業務であれば、自社のみで抱えるよりも、アウトソーシングを通じて「他社と共有」したほうが効率的といえます。決まりきったルーチンワークを高速で処理できるようにもなります。

 そして、何よりも、他では替えのきかない本業に自社従業員を積極的に活用できます。

 アウトソーシングを活用すれば、会社の人的資源を適正に配分し、全体の生産性を高められるのです。

 たとえば営業代行であれば、さまざまな業種で営業の仕事のみを専門に行っており、その経験値や技術が集中的に高まっています。

 必要な資格もすでに取得していることが多く、最新の技術革新や法改正など、時代に合わせてアップデートすべき事柄も常に追っています。

 つまり、報酬さえ支払えば「即戦力」を手に入れられるアウトソーシングは、外部から高い専門性を採り入れるのに適しているのです。

 また、繁忙期にのみ一時的にアウトソーシングするなど、人材活用のコントロールもきかせやすくなります。

 その一方、アウトソーシングでは不都合となり、むしろインソーシング(内製)を選択したほうが適切な場面もありえます。

 業務の一部をアウトソーシングする場合、多かれ少なかれ、社内の情報を外部と共有する必要があります。

 その社内情報がもし、特許などの営業機密や、顧客の個人情報といった、外部に決して漏らしてはならない性質のものならば、アウトソーシングに適していません。

 どうしてもアウトソーシングを行わなければならないのなら、機密保持契約(NDA)を締結すべきです。

 アウトソーシングの強みは、様々な業種で共通点の多い業務を効率的に活用できる場面です。

 たとえば、経営戦略を練ったり、経営判断をあおいだりするような、その会社個別の独自性の高い業務において、アウトソーシングは向いていません。

 本業と深く関連する仕事をアウトソーシングすると、不都合が生じる場合があります。

 たとえば、オンラインでのコミュニティーを構築する事業であれば、そのコミュニティーを支えるシステムの維持管理をすべてアウトソーシングしてしまうと、思い通りの変更ができないことがありえます。

 別の業者に依頼するときに引き継ぎがうまくいかず、頓挫するケースも考えられます。

 本業に深く関わる業務にもかかわらず、何が行われているのか不明な「ブラックボックス」として放置してしまえば、自社の業務を適切にコントロールしきれず、致命的な結果を招き込むおそれがあるのです。

 また、自社の従業員が技術を身につけて成長する機会も失われかねません。

 逆に、本業だからこそ、長年にわたって内部の独自ルールやノウハウが、すでにたくさん蓄積されている場合も、かえって外部へアウトソーシングしにくいものです。

 ベテラン従業員同士が、あうんの呼吸で理解し合っている事項を、新たに外部と共有するためには、大変な手間を要するからです。

 よって、本業に関わる業務は、すべてアウトソーシングで丸投げせず、その一部または全部を内製することのほうが適しています。

 アウトソーシングにおいても、法令順守(コンプライアンス)を意識して進めなければなりません。代表的な関連法令は、次の通りです。

 アウトソーシングでは、業務委託契約を締結するのが一般的です。

 業務委託を請けたフリーランスなどは、納期までに依頼された成果物を納めればよく、そのためにどのようなプロセスで進めるかは自由に決められます。そのプロセスに依頼主が介入することは、基本的にできません。

 そのため、遠隔地でのテレワークを認めず、オフィスや現場に人材を呼び込んで働いてもらう種類のアウトソーシングは気をつける必要があります。

 依頼主が仕事の進め方を指揮したり、サボっていないかどうかを監視したりする「偽装請負」が起きやすいからです。

 また、人材が不足している業界では、人材派遣会社から紹介された人材を、一時的に他社に派遣する「二重派遣」が横行している場合もあります。

 こうした偽装請負や二重派遣の行為は、労働者派遣法などの法令に触れるおそれがあるので注意しましょう。

 アウトソーシングをする際、発注者側がその立場や経済力の差を悪用して、受注者に無理を強いることは許されません。

 具体的には、下記のような行為を発注者が受注者に押しつけることは、下請法(下請代金支払遅延等防止法)に抵触するおそれがあります。

  • 依頼内容を具体的に記した書面を作成して渡さない
  • 相場よりも不当に安い報酬しか支払わない
  • 報酬を一方的に減額する
  • 発注した成果物が納品されたにもかかわらず、受け取りを拒否する
  • 発注した成果物を返品する
  • 責任がないのに、発注内容の変更や取り消し、あるいは受け取り後のやり直しをさせる
  • 報酬を支払期日までに支払わない。あるいは成果物の受け取りから60日を超えて支払期日を設定する
  • 発注者が指定した物品やサービスを、強制的に購入させる
  • 受注者に金銭を支払わせたり、無償で労務を提供させたりする

 もし、事業承継した会社で、人件費が売り上げを圧迫していたり、生産性が低かったりしていれば、その課題はアウトソーシングが解決するかもしれません。

 ただし、アウトソーシングが適していない内容の業務も少なくありませんし、独自に注意すべき法令やコンプライアンスもあります。

 内部従業員と外部人材をうまく使い分けながら、事業承継した会社の明るい未来を切り開いていきましょう。