「クラフトビールのプロ」の思いを具現化 Uターン起業が注目される理由
東京でクラフトビールの醸造に携わりブルーイングパブの開業を志す後進のコンサルを中心にクラフトビール文化の普及活動に携わっていた醸造家小畑昌司さんが故郷の広島県福山市にUターンしたのは2015年。子どもを生まれ故郷の福山で育てたいと考えたのが帰郷のきっかけでした。そして地元福山でビールの醸造所をつくるという自身の夢が芽生え、その実現に向けたチャレンジが始まりました。
東京でクラフトビールの醸造に携わりブルーイングパブの開業を志す後進のコンサルを中心にクラフトビール文化の普及活動に携わっていた醸造家小畑昌司さんが故郷の広島県福山市にUターンしたのは2015年。子どもを生まれ故郷の福山で育てたいと考えたのが帰郷のきっかけでした。そして地元福山でビールの醸造所をつくるという自身の夢が芽生え、その実現に向けたチャレンジが始まりました。
事業モデルの明確化やブランディングに関する悩みを解消したいとの思いで、福山ビジネスサポートセンターFuku-Biz(フクビズ)を小畑さんが訪れたのは2017年の4月でした。
私がフクビズに着任して1カ月目のことでした。話を聞くと、小畑さんは日本に10人もいないクラフトビール審査員の国際ライセンス資格を持ち、年に数回はベルギー、スコットランド、ドイツで開催される国際大会に審査員として参加していました。
さらに、日本各地の醸造所に技術指導者として招かれ、大学の非常勤講師としてビール醸造学を講義したりするなどその活動は広範囲にわたり、日本のクラフトビール業界にとって、なくてはならない存在であることが分ってきました。
後進のためのクラフトビールアカデミー、醸造所、ビールの小売と卸売、ブルーイングパブ開業と運営……と小畑さんのやりたいことは実に多岐にわたっていました。
話を聞くなかで、小畑さんには「ブルーパブの開業を目指す後進を育てたい」という強い思いがあると分かったため、まず「ビール醸造所兼ビール醸造大学の立ち上げ」を提案しました。
さらに、国際的なビール審査員の資格「マスター・ビアジャッジ」を持つ小畑さんの能力を活かしつつ、地元の人にクラフトビールの楽しさを知ってもらいたい、自分でオリジナルビールを造って販売したいといった思いを具現化するため「ビールの試飲販売所の併設」も提案しました。
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福山市内の企業にクラフトビール醸造責任者として勤務しながら「中国地方随一のクラフトビールのプロフェッショナル」を個人コンセプトに、新事業の立ち上げに向けてゆっくりと準備を開始しました。
クラフトビール愛好者対象のセミナー、醸造所やブルーイングパブ開設を目指す後進へのコンサルをする小畑さんと、経営形態・事業モデルの可視化・資金計画・物件のリサーチ・マーケティングについて度々意見交換をしながら開業までの約2年間にわたり、伴走しました。
醸造所のネーミングは「備後福山ブルーイングカレッジ」とし、中国地方初となる「体験型クラフトビール醸造所」兼「直売所」として打ち出すことが決まりました。
ロゴなどのCI(コーポレート・アイデンティティ)の開発や、情報発信を応援しました。そのなかで、事業運営の詳細にこだわりの深い小畑さんが即断即決で動けるよう一人で起業することを勧めました。また、一気に大きな投資をするのではなく、余力を持った事業を進めるためにも資金・人員・物件スペースにおいて必要最小限なスモールサイズスタートアップとすることなどが度々の意見交換を経て決まっていきました。
資金調達については広島地区の有力地銀である広島銀行とフクビズが協力事業として、市が後押しする福山駅前再生ビジョンに資するプロジェクトに事業資金をバックアップする制度「にぎわい」を活用することになりました。
駅の近くで、古くからの飲食店街である伏見町に物件も決まり、本格的な開業準備が始まったのは2019年秋のこと。醸造設備の手配・内装設計と工事・酒造酒販免許の許認可申請までを一気に進め、その年の11月にまずは中国地方随一の品揃えを謳ったクラフトビールの試飲&販売の店「THE BEER FUSHIMICHO ザビア伏見町」がオープン。
そして1ヶ月の初仕込みを終えて、体験型クラフトビール醸造工房「備後福山ブルーイングカレッジ」 が開業したのが2020年1月のことでした。
フクビズではニュースリリースの作成や有力メディアへのコンタクトをサポートしました。西日本初の体験型醸造所であることや小畑さんの経歴と実績、また市民から注目されていた駅前再生プロジェクトに沿った事業ということもあり、内見会当日は多くの記者が集まり関心の高さを実感しました。
クラフトビールの醸造・醸造体験機会の提供・試飲と量り売り・飲食店への別注対応と卸販売・全国の醸造所からの研修生受入れなど1年が経った今も小畑さんの多忙とチャレンジは続きます。
ブルーイングパブの開業という次の目標に向かって走り続けるUターン醸造家を、これからもチームフクビズは全力で応援させていただきます。そして小畑さんの後を追うUターン、Iターン起業者が増えて町の活性化が実現するよう産業支援機関としての責務を果たしていきたいと考えます。
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