目次

  1. ストレスチェックとは
  2. ストレスチェック制度とは
  3. ストレスチェックの実施状況
  4. ストレスチェック実施の主な流れ
  5. ストレスチェックの注意点
  6. ストレスチェックの実施方法
  7. その他の注意点

内容や目的

 ストレスチェックとは、労働者が自身のストレスに関する質問票(選択式)に回答し、専門家がそれを集計・分析した結果を本人に通知することで、自身のストレスがどのような状態にあるのかを確認する簡単な検査を指します。

対象になる人

 ストレスチェックの対象者は、「常時使用する労働者」です。常時使用する労働者とは、「期間の定めのない労働契約により使用される者」などの要件があり、一般定期健康診断の対象者と同じです。
参照:「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」令和元年7月改訂

経営者・事業者にとってのメリット

 ストレスチェックの結果を分析すれば、事業者側は労働者がどの程度ストレスを抱えて仕事をしているか把握できます。すると、職場環境の改善を検討できるため、仕事の効率化や生産性の向上につながります。

実施頻度

 ストレスチェックの実施義務がある事業所では1年に1回以上、ストレスチェックを実施する必要があります。1年に1回以上であれば、特に時期は決まっていません。

質問例

 質問票は、国が推奨している調査表である「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」に掲げられており、具体的には以下のような質問があります。

・たくさんの仕事をしなければならないか
・時間内に仕事を終わらせることができる仕事量か
・活気がわいてくるか
・元気がわいてくるか
・上司や職場の同僚と気軽に話ができるか
など

制度の目的

 ストレスチェックは、労働者のストレス状態を把握し、メンタルヘルスの不調を未然に防ぐための制度です。労働者は自分のストレスに気づき、事業者側はストレスがかかる職場ではないか分析することで働きやすい職場作りを進めることを目指しています。

義務化対象の企業

 ストレスチェックは、常時労働者を50人以上抱える企業が対象となります。常時50人以上とは企業全体ではなく、たとえば、支店や営業所、工場などの事業所単位での人数をいいます。また、契約社員、パート、アルバイトなどを含めて、常に使用する労働者の数を指します。

関連する法令

 ストレスチェックは、労働安全衛生法第66条の10にもとづいて、2015年(平成27年)12月から対象となる事業所で実施を義務付けられました。

罰則は

 労働安全衛生法第66条の10において、ストレスチェックの実施が義務付けられていますが、実施しないことによる罰則はありません。しかし、労働安全衛生法第100条によって、対象となる事業所は労働基準監督署に対して、ストレスチェックの報告義務があるとされています。

 そして、ストレスチェックを実施したか否かに関わらず、報告義務を怠った場合は50万円以下の罰金が科されます。なお、労働者が50人未満の事業所は報告義務がないので、罰則もありません。

規模別

 厚生労働省の「労働安全衛生調査(実態調査)平成 30 年特別集計」によると、ストレスチェック実施状況(事業所規模)は以下のようになります。

業種別

 「労働安全衛生調査(実態調査)平成 30 年特別集計」によるとストレスチェック実施状況(産業別)は以下のようになります。

(1)準備すること

 事前準備としては、まずストレスチェックを実施する方針を示します。そして、事業所の衛生委員会で、ストレスチェックの実施の方法について、主に以下のことを決めていきます。
①誰に実施させるのか。
②いつ実施するのか。
③どんな質問票を使って実施するのか。
④どのような基準をもって高ストレスと判断するのか。
⑤面接指導を申し出る人は誰にするのか。
⑥面接指導をする医師を誰に依頼するのか。
⑦集団分析はどのように行うのか。
⑧ストレスチェックの結果の保存をどのようにするのか。
以上を社内規程で明文化し、労働者に周知します。

参考:厚生労働省「ストレスチェック制度導入ガイド

・外部機関への委託も可能
 ストレスチェックの実施は、外部機関に委託することも可能です。この場合には、事業所に属している産業医などが共同で実施に関わることをおすすめします。

 産業医が共同実施者とならなければ、労働者のメンタルヘルスについて産業医が労働者の状況を適切に把握できません。そうなると、労働者への対応や職場環境の改善を十分に行うことができなくなる可能性があるからです。

(2)実施

 労働者へストレスチェック制度の周知を行い、質問票の配布・回収、本人へ検査結果の通知を行います。

(3)面接指導

 ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された労働者は、希望により医師による面接指導が受けられます。

(4)集団分析と職場環境の改善

 労働者からの質問票の回答を分析し、職場環境の改善点を模索し実行します。

(5)報告・結果の保管

 ストレスチェック実施後は、事業所ごとに厚生労働省が指定する様式で「ストレスチェック報告書」を所轄の労働基準監督署に提出します。また、実施した結果は社内で保管します。労働安全衛生法では、ストレスチェックの結果の保存期間を5年と規定しています。

人事権がある人は実施者になれない

 ストレスチェックを行ううえでもっとも大切なことは、解雇や昇進、異動など直接の人事権を持つ地位にある人が実施者になれないことです。

 労働者側からすると、ストレスチェックの結果が人事に影響するかもしれないという不安があると、制度の目的が達せられない可能性が考えられます。実施者は医師や保健師、看護師などから選ばれなければなりません。

不利益な取扱いは法律上禁止

 事業者側は、労働者のストレスチェックの結果について、人事や給与などの待遇面で、不利益な取扱いをすることは法律上禁止されています。これが遵守されなければ、制度の目的が達せられないことになるためです。

結果は本人の同意なく開示できない

 ストレスチェックの結果については、労働者の本人の同意がなければ事業者が見ることができません。そもそも、ストレスチェックの結果は実施者から本人に直接通知されますので事業者が見ることはできない仕組みになっています。

 従業員本人の同意があれば実施者から事業者に結果を提供してもよいとされていますが、この同意の取得についてもストレスチェックの実施後で、かつ本人に結果通知された後である必要があります。

調査票で点数評価

 調査票には、各質問につき4段階の回答があり、労働者は4段階の回答から自分の状態にもっとも近いと思われるものを選び、回答を点数化しストレス状態を評価します。

調査票の項目

 国がストレスチェックにおいて使用することを推奨している調査票(職業性ストレス簡易調査票(57項目))にはA「仕事のストレス要因」、B「心身のストレス反応」、C「周囲のサポート」、D.「仕事や家庭の満足度」の4つの質問領域が含まれており、それぞれの質問内容は以下のようになります。

A. 仕事のストレス要因
非常にたくさんの仕事をしなければならない
働きがいのある仕事だ

B. 心身のストレス反応
活気がわいてくる
首筋や肩がこる

C. 周囲のサポート
あなたが困った時、上司・職場の同僚・配偶者、家族、友人はどのくらい頼りになるか?

D. 仕事や家庭の満足度
仕事や家庭生活はどの程度満足できているか?

高ストレス者の選定方法

 高ストレス者の選定基準を定める際、もっとも重視しなくてはならないのは、「B. 心身のストレス反応」となります。「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」を参照しましょう。

 心身のストレスに自覚症状がなくても、仕事の負荷が高かったり周囲からサポートを受けていなかったりする労働者は、メンタルヘルスが不調となるリスクを抱えている場合があります。チェック後には気を配る必要があるでしょう。

経営者は対象?

 ストレスチェックは、労働者を対象としている制度なので、経営者や他の役員が受ける義務はありません。ただし、役員である人も大きなストレスを抱えている場合があります。ストレスチェックの対象外とする判断は危険ですので、注意しなければなりません。

50人以下の事業所は、今後義務化の対象になるか?

 小規模の事業所の場合、ストレスチェックの実施にかかる時間や費用負担が大きいため、労働者が50人未満の事業所であれば、義務化の対象外です。しかし、小規模事業所であってもメンタルヘルスケアが重要であることに変わりありません。従業員数50人未満の事業場向けに「『ストレスチェック』実施促進のための助成金」もあります。

 また、日本には労働者50人未満の事業所が数多くあることを考えると、今後、小規模の事業所でもストレスチェックが義務となる可能性は十分にあるでしょう。

支店が50人以下なら制度の対象?

 全従業員数が50人未満であれば、ストレスチェックは実施したほうが望ましいとされる努力義務となります。しかし、たとえば、本店が60人、支店が40人の場合、本店は実施義務がありますが、支店には実施義務はありません。

 しかし、会社として全労働者の健康状態を把握し、労働者にきちんと仕事を続けてもらうためには、本店と支店を分ける意味はないでしょう。むしろ全労働者のストレス状態を把握するために、会社全体で取り組むべき問題です。この場合は、支店に対しても「ストレスチェックを実施するべき」というのが国の方針です。

まとめ
 会社は、そこで働く労働者がいて初めて会社として成立します。そう考えると、ストレスチェックは労働者のための制度ですが、経営者にとってもメリットがあるといえるでしょう。ストレスチェック対象となる企業の経営者はもちろん、対象とならない場合でも、労働者が働きやすい環境とはどういうものか、検討する機会にしてみてください。