家族経営の農業から気づいた将来の道

 食・農業界と異業種のつなぎ役「フードカタリスト」として活動する中村圭佑さんの実家は、福岡県の久留米市でも知られたフルトリエ・中村果樹園です。中学生のころから、実家の果樹園や周りの農家を見ながら「どうして農業は会社でやっているところが少なく、こんなに家族経営が多いのだろう」と疑問を感じていました。

 後になって学んだことですが、家族経営には次のようなメリットがあります。

  • 環境・天候の変化による不作でも簡単に事業撤退をせず辛抱強い(経済的強靭性)
  • 小規模や中山間地域、農業に不向きな地域での農業経営を行える
  • ビジネスだけではない、強固な人間・信頼関係による意思決定の速さ

 その一方で、多くの農家が家族経営を続けるのにはそれ以外の理由もありました。

  • 単一作物栽培で繁忙期と閑散期があるので安定して人を雇えない
  • 産直販売や農産物を加工品として売るにも販路開拓やマーケティングのわかる人がいない
  • 家族が食べていければそれ以上の稼ぎは求めない

 農業に“作り手”として関わるのではなく、食・農業界全体の家族経営からの脱却に必要な人材になりたい。そのためにはどんなキャリアを積めばいいのか、と考え始めます。

 「学生の頃から興味があるのはスポーツと食・農業だけだったんですよね。でも生産者、いわゆる“作り手”はたくさんいて。じゃあ僕は“作り手”として、実家の果樹園を盛り上げていくのではなく、もっと手広く農業界を盛り上げていきたいなと考えるようになりました。現状の家族経営主体の農業界で足りない人材、それが農家に代わってマーケティングや販路開拓、経営を考えるという、いまのフードカタリストの仕事です」

インタビューに答える中村さん

夢の実現へ考えたビジネスキャリア

 高校生のころにはすでに、食・農業界に携わる会社を起業したいと思うようになっていました。そこで考え始めたのが、夢の実現のためにはどういうキャリアを積めばいいのかということです。
 より広い世界を見るために、関東にある明治大学の農学部に進みました。卒業後は、農業界を徹底的に知りたいと老舗の農薬メーカーに就職します。

(続きは会員登録で読めます)

ツギノジダイに会員登録をすると、記事全文をお読みいただけます。
おすすめ記事をまとめたメールマガジンも受信できます。