【タイムマネジメントとは】中小企業の成果につなげる方法やコツを解説
働き方改革や残業規制が進む中、中小企業の経営者や後継ぎも、タイムマネジメントへの理解が欠かせません。経営者が社内でタイムマネジメントを浸透させ、成果につなげるためのコツなどを、時間管理コンサルタントの水口和彦さんに伺いました。
働き方改革や残業規制が進む中、中小企業の経営者や後継ぎも、タイムマネジメントへの理解が欠かせません。経営者が社内でタイムマネジメントを浸透させ、成果につなげるためのコツなどを、時間管理コンサルタントの水口和彦さんに伺いました。
目次
そもそもタイムマネジメントとは何でしょうか。ビズアーク時間管理術研究所を経営する水口和彦さんは、自分が行うことを「計画し、実行し、振り返る」ことと言います。
「スケジュール管理といえば、人と約束した面談の予定などを書き込むという方が多いですよね。タイムマネジメントというのは、それ以外の部分をもっと積極的に計画し、実行し、できる範囲で振り返ることを言います」
タイムマネジメントの観点から、日々の仕事は3つに分類できます。面談などの「アポイントメント」、作業などの「タスク」、取引先からの突然の依頼など、いきなり飛び込んでくる「予定外の仕事」です。
このうち、スケジュール管理として普段から意識している「アポイントメント」は仕事時間のわずか2割、多い人でも5割程度といいます。それならば、残りの5~8割を「タスク」に充てられそうなものですが、実際には「タスク」がなかなか終わらなかった経験のある人が多いのではないでしょうか。それは「予定外の仕事」があるためです。
「平均的には、予定外の仕事に2割くらいの時間を使う人が多いですが、4割を超える方もいます。2割といっても、決して無視できない時間です。たとえばアポイントメントが3割ある方が、残り7割の時間をタスクに使えると思っている場合と、5割しか使えないと知っている場合、時間の使い方がまったく違ってきます」
タイムマネジメントをするには、「予定外の仕事」が必ずあるという前提に立つ必要があるわけです。
水口さんは「タイムマネジメントに取り組まないと、中小企業は採用などに不利になる可能性があります」と指摘します。
「大企業では働き方改革がだいぶ浸透してきましたが、中小企業は遅れを取っています。そうなると、入社を考える時に比べられてしまう場面が出てきます。あの企業は労働時間が長いらしいという悪評が広まると、採用の際に敬遠される可能性があります」
タイムマネジメントがうまくできない企業には、残業時間が長いという問題がのしかかります。中小企業でなかなか残業がなくならない理由を、水口さんは、次の3つの残業パターンで説明します。
言葉通り、周囲の人が皆、残業しているから自分だけ先に帰りにくいという状態を指します。大企業の「つきあい残業」はこの10年ほどでかなり減りましたが、中小企業にはまだまだ残っているといいます。
仕事があまり計画的に進んでおらず、期限ギリギリまでかかって、慌てて残業で間に合わせる状態です。ただし、これは個人の努力である程度コントロールできる部分でもあります。
昼間は様々な理由で中断させられてしまう仕事を、電話などの邪魔が入らなくなってから、「さあ、自分の仕事をこれからやろう」と手掛ける残業を指します。慣れてしまうと、残業の慢性化という悪循環に陥ります。
では、中小企業が残業をなくすためにはどうすればいいのでしょうか。水口さんは「トップがはっきりと意思表示すること」と断言します。
「今の中小企業の社長世代は、残業してでもやるという環境で仕事をしてきた方が多く、そういった価値観がすり込まれています。それを変えるためには、我が社は残業を減らすとはっきり宣言した方がいいです」
社長が残業が減ったらいいよね、くらいの感覚でいると、その下の管理職もなかなか意識を変えてくれません。場合によっては、部下の残業が多い人は評価が下がるというくらいの大胆な方法を取った方がいいこともあります。
もちろん、経営者や管理職には、現場の無駄な作業を極力減らして、業務効率化に努める意識が欠かせません。
水口さんは、部下が困っていることに、管理職が気づいていないのも問題だといいます。実際に以下のようなケースがありました。
ある損保の営業所で、お客様からの連絡がファクスで入ると、ファクスで返信するという仕事の流れになっているところがありました。その営業所では、その日に入ったファクスを、その日のうちに返信しなければならないという暗黙のルールがありました。
しかし、そのルールのせいで、定時近くに入ったファクスに返信してやりとりをしていると必ず残業になるという悪循環が長く続いていたのです。これを断ち切るには、16時半以降に来たファクスは翌日に処理しましょうと決めるだけでいいのです。
経営者や管理職は、現場が仕事のやり方やルールで困っているところはないかを、ざっくばらんに話し合える環境作りを考えるといいでしょう。思わぬ意見が出てきて、改善に結びつくと思います。
それでは、個人のレベルでできるタイムマネジメントについてはどうでしょうか。
水口さんは、まず「空き時間の可視化」から始めることを推奨しています。
「スケジュールの書き方を工夫しましょう。何時に誰々さんと会う、という書き方しかしていないと、どの時間がどれだけ空いているか意識することは難しくなります。時間ごとに区切られているスケジュール帳に、アポイントメントが始まる時間から終わる時間まで線を引きます。パソコンだと、1カ月ではなく1週間の表示で見る、と言えばわかりやすいでしょうか。埋まる時間を面積で意識しましょう」
こうやって意識することが第一歩です。次にタスクを計画していきます。
「私がお勧めしているのは、実行日の欄に必要なタスクを書いておくことです。実行時間まで決めてしまうと、予定変更の際にいちいち全部組み替えなくてはならないので大変ですが、この日にやろうと決めて書くだけで、仕事のおおまかな流れを把握できます」
タスクの計画はあまり難しく考えず、木曜日にアポイントメントがあるから火曜日に準備しておこう、くらいの気楽さで書き込むのがポイントです。仕事の内容が可視化されることで、仕事の量がつかみやすくなり、タスクが多すぎる状況に早く気づけるようになるのが大きなメリットです。
タスクの書き出しに一番手間がかからないのは、出てくる度に都度、書き込んでいくことです。メールを受信してタスクが生じたら、返信する前にスケジュール表に書き込むくらいの素早さがいいそうです。
「テレワークで部下の仕事が見えづらいという問題も、タスクの書き出しで解消できます。今日はこのタスクに取り組んでいる、ということをお互いに明確にしておけばいいのです」
その際、上司は翌日、部下のタスクがどれくらい進捗したかを確認すれば、テレワーク下でも、お互いに安心できる環境を作れるでしょう。
タイムマネジメントにおいて、永遠の課題ともいえるのが、手帳とパソコン、スマートフォンアプリなどのデジタル機器のどちらで管理するかという問題です。水口さん自身は紙の手帳派だといいます。
「一番のメリットは、パソコンやスマホの画面を見ながら手元の手帳でスケジュールが確認できるので、作業が断然楽なところです。でも、どうしてもスケジュールを他の人と共有しなければならないなどの事情や好みもありますから、その場合は、混在させずにデジタルでの管理で統一した方がいいでしょう」
タイムマネジメントを行うことで、残業抑制以外にどういったメリットがあるのでしょうか。
「私の会社員時代の経験で言えば、労働時間を減らしたのに、仕事にむしろ余裕ができました。それ以前は、期限ギリギリに慌てたり、仕事の全体像が見えていなかったりして、毎日焦っていました。それが、先を見通しながら自信をもって進められるようになり、ストレスもすごく減りました。これには驚きました」
水口さんは、中小企業だからこそ、意識的にタイムマネジメントに取り組む意義がある、と強調します。「従業員のストレスが減って、効率が上がるので、従業員からも感謝されるし、採用の面でもメリットがあります。今すぐ取り組めば、必ず結果が出てきます」
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