目次

  1. マニュアルの種類と役割
  2. 作業標準化マニュアルは生産性の向上に直結
    1. マニュアル化で作業の見直しも進めやすい
    2. 作業マニュアルは企業を守る
  3. 考え方のマニュアルは社内変革をスピードアップ
  4. マニュアル作成の手順
    1. 業務マニュアルの場合
    2. 基本的な考え方や基準を表すマニュアルの場合
  5. マニュアル作成で知っておくべきポイント
  6. 電子マニュアルをサーバー上に置く企業が増加
  7. コストがかからないマニュアル作成ツール
  8. マニュアル作成専用ソフトを使う
    1. COCOMITE(ココミテ)
    2. iTutor(アイチューター)
    3. Dojo(ドージョー)
  9. まとめ

 マニュアルを作成していない企業が口をそろえて言うのは、「重要だとは思うが、作成している時間がない」。そして、「なくてもなんとかなっているのだから、問題はないのではないか」というものです。

 しかしこれは、肝心な部分を見ていないだけ。まずは、マニュアル作成の意義を考えてみましょう。

 企業内で使用されるマニュアルは、以下の二つに分類されます。

  • 「業務マニュアル」のように作業を標準化するもの
  • 「マネジメントマニュアル」のように基本的な考え方や基準を表すもの

 作業を標準化するマニュアルを作成するべき理由は、二つあります。

 ひとつ目は業務の標準化が図れること。これにより、担当者が変わってもスムーズに業務が引き継がれ、抜けやもれなく作業が行われることになります。

 また、引き継ぎに要する時間と慣れるまでの時間、確認に要する時間など、あらゆる面で業務の効率化が図れ、生産性が向上します。

 仮にマニュアルがない場合、作業が属人化し、担当者が変更すると途端に仕事が回らなくなります。それでも前任者が社内にいれば時間がかかりながらも、作業は行われるでしょう。

 しかし、退職を伴う場合、新たな担当者が新たなやり方を独自に作らなければなりません。これは非常に無駄が多くなります。

 その点、業務マニュアルを作っておき、それを見れば作業を一通りこなせる状況ができれば、このような問題はなくなります。

 ふたつ目の理由は、作業の変更が容易になる点です。

 近年増えているのは、RPAなどの自動化技術で作業の効率化を図ろうというもの。

 ところが、オリジナルのやり方が一般化していると、自動化技術できる作業を洗い出すことすらできませんし、多くのベテラン担当者の激しい抵抗にあいます。

 このような状況では、いつまでたっても効率化は図れません。

 また、企業の業務の中に、安全性や法に関わる部分がある場合、マニュアルが企業を守ることがあります。

 たとえば個人情報が外部に漏洩(ろうえい)した場合、マニュアルがなければ、「企業として何の対策もしていなかった」と見られます。

 しかし、マニュアルに記されていた場合、「対策はとっていたが、教育が不十分であった」と見られます。

 もちろんどちらの場合も、企業の落ち度を認めざるを得ませんが、その印象は大きく変わるはずです。

 次に、マネジメントマニュアルのような基本的な考え方や、基準に関するマニュアルが生み出すメリットを考えてみます。

 これは、創業者などが社長を継続していて、ポリシーや判断基準を社員が十分に理解している環境ではあまり必要がないと言えます。

 しかし、企業のトップが交代したときなどは、早期に新たな考え方を浸透させる必要がでてきます。

 そのために、新たな考え方や判断基準を言語化し、明示するのがマニュアルの役割となるわけです。

 たとえば次世代の後継者に経営を譲った企業では、いつまでも前経営者の思考や基準が残っていて、変革が進まないことがあります。

 このとき、マニュアルを使って広く知らしめ、新たな基準を明示することができれば、それに伴った戦略や戦術も浸透しやすくなります。

 もちろんマニュアルを作って、それだけで満足していては意味はありません。ですが、行動を起こすうえで重要な役割を果たすツールとなるのは間違いありません。

 では、マニュアル作成の基本的なフローを見てみましょう。

 当然のことながら、作成するマニュアルの内容によって手順は変わります。また、作成担当者を誰にするのが適当かは状況によって変わりますので、ご注意ください。

  1. リーダーを決め、マニュアル化すべき業務を洗い出す
  2. 実務担当者が作業の流れを書き出す
  3. リーダーが取りまとめ、無駄な作業がないかを確認する(作業の標準化)
  4. 担当者に確認してもらい、標準化により変更された箇所が実現可能か精査してもらう
  5. 具体的な文言に落とし込み、PDF化する

 マニュアル化が複数の部署に及ぶ場合、部をまたいだプロジェクトチームを組んで進めるとスムーズです。

  1. リーダーを決め、どのようなマニュアルを作成すべきか、誰に話を聞くべきかを検討する
  2. 内容を検討した後、インタビューをして一次原稿を書く
  3. インタビューを行った人、および経営者に確認し、原稿の精度を高めてゆく
  4. 最終承認を得たら、ツールに落とし込み、PDF化する

 しかるべき人(経営者や部署のリーダーなど)が原稿を書き起こす場合、どのような項目について書くべきかを事前に伝え、もれのない内容で執筆されるように工夫します。

 では、マニュアル作成をするうえで重要視すべきポイントはどこでしょうか?

 当然のことながら、マニュアルは社内の人間が必要なときに見られることがもっとも重要となります。

 もちろん社外に内容がもれることはないように注意をしなければなりませんが、だからといって、厳重に管理されすぎたのでは意味がありません。

 また、内容は常に最新の状態にリニューアルされ続ける必要があります。特に社内業務は日々改善されることで効率化しているはずです。

 それをさらに加速するためには、マニュアルは常に最新の状態であることが最低条件となります。

 最近では、マニュアルを印刷せず、電子データで社内サーバーに置いている企業が増えています。これであれば、必要なときに訂正を加えることも可能です。

 もちろん、機密性に応じて IDやパスワードでセキュリティーをかけておきます。

 企業の中には、「印刷したマニュアルに比べ、電子データは社外に流出しやすい」と考えるところもあります。

 ですが、印刷物はコピーをする、あるいは写真を撮るなどすれば外部に持ち出せますし、ファイルごと持ち出された例もあります。

 情報管理の徹底は他の業務でもうるさく言っているはずですから、やはり電子マニュアルが時代に即しているのではないかと思います。

 マニュアル作成についてはさまざまな専用ツールが出ています。

 しかし、これらはコストがかかります。ある程度の規模の企業であれば必要経費と考えられるかもしれませんが、できれば負担は最小に抑えたいもの。

 それであれば、Microsoft OfficeやGoogleのツールを使って作成してはいかがでしょうか。

 たとえば、Microsoft WordかGoogleドキュメントで作成し、PDF化して公開すれば、内容を勝手に変更されることはありません。しかも検索ができるので、必要な情報をすぐに見ることが可能になります。

 筆者は社員数が200人以下であったり、店舗や営業所が10カ所以下の企業には、このどちらかを使うことを最優先にお伝えしています。

 コスト負担が可能なら、マニュアル専用ソフトを使う方法がおすすめです。セキュリティーの配慮もされており、見やすく管理されるというメリットがあります。

 また、クラウドで管理されるものもあり、どこでも見ることができます。

 以下にいくつかのツールを紹介します。(料金や機能などは2021年2月時点の情報に基づきます)

 コニカミノルタ社が提供する、クラウドのオンラインマニュアル作成・運用サービスです。コストは次の通りです。

  • 初期登録料 65000円
  • エントリープラン 22000円/月 220000円/年
  • スタンダードプラン 60000円/月 600000円/年
  • エンタープライズプラン 220000円/月 2200000円/年

COCOMITE(ココミテ)公式サイトはこちら

 業務マニュアルのほか、eラーニング教材も作成できるマニュアル作成自動化ソフトです。コストは次の通りです。

  • プロフェッショナル 600000円~
  • スタンダード 450000円~
  • エントリーオフィス 250000円~
  • エントリービデオ 250000円~
  • Mac専用 150000円~

iTutor(アイチューター)公式サイトはこちら

 業務マニュアルや動画マニュアルなど、作成から配布までシステム化してくれるツールです。作成代行サービスもあります。コストは、いくつかのライセンスがあるため、問い合わせになります。

Dojo(ドージョー)公式サイトはこちら

 それぞれに特徴があるので、サイトをよく見て吟味し、用途にあったものを選ぶようにしてください。なお、無料のトライアル期間が設定されているものもあります。

 マニュアルは、社内業務の効率化を図るほか、万一の事態が起こったときに企業を守ってくれる重要な存在です。

 作成に手間はかかりますが、それを超えるメリットがあるのも事実。コストはかけなくてもマニュアル作成はできます。

 ぜひ早期に適切なマニュアルを作り、業務の効率化、生産性の向上にお役立てください。