お金をかけずに新サービス開発 コロナ禍に必要な小さな成功の積み重ね
新型コロナウイルスによる「接触の制限」が多くの企業の足かせとなっているなか、支援機関は、この危機を逆手に取る「市場開拓力」が問われています。そこで、自社にできることから新業態に挑み、成功を一つずつ積み重ねている3つの事例を木更津市産業・創業支援センター(らづビズ)から紹介します。
新型コロナウイルスによる「接触の制限」が多くの企業の足かせとなっているなか、支援機関は、この危機を逆手に取る「市場開拓力」が問われています。そこで、自社にできることから新業態に挑み、成功を一つずつ積み重ねている3つの事例を木更津市産業・創業支援センター(らづビズ)から紹介します。
2度目の緊急事態宣言が出された2021年1月の年始。ナチュラルカフェ+ショップ「hanahaco(ハナハコ)」の初芝小百合さんはこれまであまり強化できていなかったテイクアウト強化をらづBizに相談しました。
元々、カフェとしてのブランディング強化のための写真の撮り方などのサポートを受けていました。
hanahacoの顧客層はほぼ女性で、山間部に位置するにも関わらず、コロナ以前はお昼時に駐車場が足りなくなるほど人気のカフェでした。野菜やフェアトレードの食材を使ったこだわりのメニューが好評ですが、ランチ時に来客を増やす余力はあまりありませんでした。
そしてhanahacoは、障がいを持つ方の就労継続支援事業所でもあるため、「利用者の雇用を維持する」ことが前提となる店舗でした。
らづBizは話を聞くなかで、現状把握、強みの整理、そして新市場開拓の可能性を提案しました。コロナ以前からお昼時に駐車場問題があったため、コロナで集客が減少しているとはいえ、安易なテイクアウト強化では刹那的な支援、短期的な支援になってしまいます。
そこでお昼の店内飲食以外のニーズの深堀り、「ドライブスルー的な需要の開拓」可能性を考えました。そのなかで生まれたのが、テイクアウト専用で、社会性のある新商品でした。
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hanahacoでは地元野菜を使ったサラダバーが人気でしたが、コロナ対策で中止していました。そこで「テイクアウトでしか買えない専用サラダを開発し、専門店化する」コンセプトを提案しました。
販売は事前予約制、テイクアウト専用することで、店内飲食とは別の市場の開拓を狙いました。またターゲットは「コロナ太りが気になる女性」とし、hanahacoで人気のお肉料理+サラダ+ナッツなどで「低糖質ダイエット」に最適なヘルシーパワーサラダの専門店化を考えました。このサラダの名称は後日「春待ちパワーサラダ」となりました。
使用する食材には同じくらづBizに相談中だった市内のレタス農家の「不適格レタス」を使用し、障がい者の雇用維持、そしてフードロス対策にもつながる社会性のある商品として打ち出しました。
発売開始直後から新聞、地元TV、ラジオ、WEBメディア、SNS、さらには市の広報誌まで幅広くPRができました。「事前予約制で数量限定」のサラダの口コミは拡大し、現在はお店の売上の10~15%ほどを占める人気商品となりました。
ただし、この新業態の開始にかかった費用はゼロ。既存の店舗体制でお金をかけずにテイクアウト専用の新業態が始められました。現在は14時以降の集客強化に向け「新スイーツ開発」も進めています。
カフェとしてのお店をOPENして1年ほどの「curry & café ちょいす。」の長谷川直美さんは調理から接客までを一人でこなしており、席数も3テーブルのみのカフェです。
開店当初はレトルトカレーを多数取り扱う店としてスタートしましたが、その後はカフェやイタリアンでの10年以上の調理経験を活かしたカフェ飯を売りに営業していました。
目の前の注文にただひたすら応えるなかで、これからの先行きに不安も感じ、手先の器用さから手作り布マスクを制作販売。また店の休みの日に別の仕事もしていました。
ちょいす。の料理からは「店主の繊細な性格からの細かい気遣い」「コスト優先でなく美しさ優先」「ちょっとしたかわいさ」が感じられました。
コロナ禍で店内客は減少しており、単なる弁当市場は飽和状態でした。そしてイートイン・テイクアウト関係なく「食の豊かさ」はコロナ禍以前から求められていました。そのような短期的、中期的な市場動向のなか、下記のような提案をしました。
取引先からたまたま仕事を振られた「ロケ弁」の評判が良かったことを聞き、「コロナで都内制作会社が遠方にロケに行けず近距離での撮影を増やしている」ことを狙い「ロケ弁」に力を入れることを提案しました。
まだ近隣にはロケ弁の競争相手がまだ少数だったことから、多少高くても美味しさで売ること、そして「ビジュアル」がとても大事なので、代表的なメニューを撮影しInstagramにアップすることとしました。
「ロケ弁らしくないビジュアル」を重視して写真をアップし、その情報の広がり・浸透度を図りながら順番に載せていきました。撮影方法は本人で日々レベルアップできるよう今も伴走型の支援を継続中です。
「ロケ弁らしくないロケ弁専門店」のイメージは徐々に拡大していき、ロケ弁の依頼先も毎月増加、リピーター化も進んでいきました。そして店の売上は相談開始時の約2倍まで拡大しました。
現在は新たな事業展開も受託できそうで、従業員の採用を含めて準備中です。
2021年3月にコワーキングスペースを開業予定だったColabo木更津考作室の齊藤弘哲さんは、コロナの影響でOPENを延期しました。そして緊急事態宣言明け7月にOEPNを決めるも、コロナ禍での集客に悩んでいました。コワーキングスペースとしての売上目途は立っていなかったからです。
地元の高専出身でロボコンにも出場経験がある店主は、「ものづくり」への興味と造詣がとても深く、同店でも「ものづくりのマッチング」をしたいと考えていました。
店名のColaboは「コラボレーション×ラボラトリー」という意味です。以上の考えから、Colabo木更津考作室には一定レベル以上の3Dプリンター、業務用高出力なレーザーカッターを導入し、施設利用者に利用してもらう(BtoC)事業計画でした。
そこで、らづBizでは「オリジナル型おこしを簡単にできるコンサルティング&デザインサービス」(BtoB)を新たに始めることを提案しました。コロナ禍でも新しいことを始めたい、差別化を図りたいという事業者は多数おり、事実としてらづBizの相談者の中にも飲食店を中心にビジネスマッチングの可能性がありました。
ビジネスマッチングを進めた結果、飲食店中心に「ラテアートステンシル」「お好み焼きステンシル」「ライス型」「クッキー型」「プリン型」「食材型抜き」「コースター」「ランプシェード」「各素材へのレーザー刻印」、そして特許取得技術を形にする「健康器具」の試作品開発まで「オリジナル型おこしを簡単にできるコンサルティング&デザインサービス」は幅広く受注できました。
その事例は順次チラシ、SNS、サイトで見える化を進め、毎月一定の受注ができています。また店主も好きなボードゲーム(以下ボドゲ)ユーザーがボドゲプレイできる「ボドゲスペース」の需要を深掘りすることで、ボドゲ会の定期開催を実現できるようになり、コワーキングスペースの代わりの売上の柱となりました。
またボドゲイベント参加者のオリジナルグッズ制作(BtoC)も定期的に受注できています。
不安定な時代の中では小さな挑戦、小さな成功を繰り返すことで事業の成功確率を高めることができます。らづ-Bizでは「お金をかけない売上アップ」、何回でも再挑戦ができるご提案を基本としています。短期的なコロナ対策だけでなく、中長期的な方向も考えたアイデアで今後も事業者の未来の種を見つけていきます。
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