生産性向上を実現するためには?3つの方策と留意点を徹底解説
生産性の向上は、会社が業績改善を目指すために重要な要素です。生産性向上の実現に向けどのように取り組んでよいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、生産性向上の方策、実行のポイントを分かりやすく解説していきます。
生産性の向上は、会社が業績改善を目指すために重要な要素です。生産性向上の実現に向けどのように取り組んでよいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。この記事では、生産性向上の方策、実行のポイントを分かりやすく解説していきます。
目次
生産性は、投入した生産要素(インプット)と生産物(アウトプット)の割合です。
計算式は、「生産性=アウトプット÷インプット」となります。
そのため生産性の向上は、アウトプットを増やすこと、インプットを減らすことの二つの方向性から実現できます。
アウトプットを増やすとは、生産物の数量、重さ、サービス時間など物的生産性を増やすことをいいます。
また、物的生産性が同じであっても単価アップによる金額換算した付加価値生産性を増やすことをいいます。具体的には次のようなものが挙げられます。
インプットを減らすとは、社員の数、時間、遊休資産などを減らし、コスト削減や効率化を図ることをいいます。例えば、1個生産する時間を半分にすることで、生産性は2倍になります。ほかにも次のような例があります。
生産性が向上すると会社には色々なメリットが発生します。主なメリットは次のようなものがあります。
生産性向上の取組みを行うと売上の増加やコストダウンにつながり収益力が改善します。
新商品の開発や生産能力アップなどアウトプットを増やす取組みでは、売上や粗利の増加が期待できます。
また、業務効率化による労働時間の削減などインプットを減らす取組みでは、残業代など人件費の削減につながります。
コロナ禍により不透明な状況ではありますが、長期的に見て日本の労働力の不足は深刻な課題となっています。
社員一人一人の生産性を向上させないと、労働人口の縮小に対応できません。
社員の業務品質の向上やITツール活用などによる生産性の向上で、労働力不足への対応力が強化できます。
総労働時間の規制、同一労働同一賃金などの政府の「働き方改革」にきちんと対応することは社員の生産性の向上につながります。
例えば、100個の成果物を10時間かけて生産していたものが、生産性向上の取組みにより8時間で済むようになれば、残業時間を減らすことができるようになります。
生産性向上実現に向けた方策としては次のものがあります。
QC(品質管理)活動や業務改善活動など業務の効率化に取り組んでいる会社は多くあります。
業務効率化は生産現場だけでなく、営業部門や管理部門など全社的に取り組むことがより大きな生産性向上につながります。
業務効率化の手法として、「ECRS(イクルス)の原則」があります。元々は製造業の効率性を高めるための手法ですが、営業、管理部門など色々な業務での活用ができます。
①Eliminate(エリミネート)(無くせないか) 現在行っている業務の目的そのものを見直し、その業務そのものを無くすことです。例えば、報告の場だけとなっている毎週の定例会議を無くし、不定期の会議にするなどです。
②Combine(コンバイン)(一緒にできないか) 同時に行える作業やまとめて行うことができる作業を一緒にすることです。例えば、課単位に行われていた会議を部全体の会議で行うなどです。
③Rearrange(リアレンジ) (順序を変更できないか) 業務の順番を変えることで効率化を図ることです。例えば、定時前に行っていた会議を朝一の会議に変更することで、短時間で会議を終えるなどです。
④Simplify(シンプリファイ) (単純化できないか) 業務の一部を簡素化・省略することで、成果を変えることなく効率化を図ることです。例えば、会議資料の様式の簡素化、ペーパーレスなどです。
IT技術の進展により、数多くの新たなITサービスが色々な価格体系で提供されている時代になりました。
従来のハンコ・紙文化から脱却し、IT化、デジタル化を進めることで生産性を向上させることができます。
IT化を進める上では、IT導入補助金の活用が一つの方策です。
また、IT導入補助金のWebサイトには、「業種別 お悩み解決ITツール機能」「ITツール活用事例」などの記事が掲載されており、自社に適したITサービスの検討もできます。
注目のITサービスの一つは、RPA。RPAは、Robotic Process Automationの略語で、パソコンで行う定型化できる作業をプログラム上のロボットに覚えさせ自動化する技術です。
手作業よりはるかに早く作業を終えることができ、また24時間365日働くこともできます。社員は、単純作業からコア業務に集中することができるようになります。
長期的に人手不足が見込まれる中、社員は会社で最も重要な資産です。社員のスキルアップが実現すれば、生産性が向上するのは自明のことです。
社員一人一人が多くの業務をこなせるようになる(多能工化)には、どのような取り組みが必要であるかを考える必要があります。
例えば、製造業ではセル生産の導入も一つの方策です。
セル生産とは1人または少数の作業者が、部品や工具をU字型などに配置したセルと呼ばれるラインで、製品の組立工程を完成まで受け持つ生産方式です。
生産性向上の取り組みだけではなく、処遇、労働時間など人事施策の改善も併せて行い、社員のモチベーション向上を図ることも大切です。
生産性向上を実現するために、経営者として気を付けなければならないポイントがあります。
生産性向上をコストダウンと誤解して方策を講じる経営者も少なくありません。
私も経験がありますが、現場の状況を把握しないで、残業時間の規制や費用の総枠規制などの方策が講じられることもあります。
コストダウンにばかり目が行くと、社員の前向きな取り組みを制限することとなるため、社員のモチベーションが下がり、かえって生産性が落ちる可能性が高くなります。
コストダウンも必要ですが、新商品開発や新たな販路開拓等前向きな取り組みも併せて行う必要があります。
経営者主導の一方的な取り組みは、時として生産性を阻害する要因にもなります。現場の状況を十分理解していない施策は、社員にとって意味のないものになりかねません。
例えば無理な残業規制は、あってはならないサービス残業の温床となり、現場に多くのしわ寄せが生じてしまいます。
生産性向上は、現場主体の自発的な方策立案と実行が必要です。
多くの企業で取り組んでいるQC活動以外にも、システム導入プロジェクト、製販一体となった新商品開発プロジェクト、などプロジェクト単位の活動が成功に結び付いている事例があります。
生産性向上に取り組むと一定のお金(投資)が必要となります。
生産設備やIT導入費用は勿論業務効率化でも現状分析、方策の立案など社員に通常業務以外の負荷が生じます。
発生するお金と、期待できる生産性向上を比較して投資判断することも大切です。
また、生産性向上に向けた取り組みには、国から補助金など経営改善施策を活用することも有効です。
業務改善助成金(厚労省)、ものづくり補助金・IT導入補助金(経産省)などは中小企業の生産性向上を支援する補助金・助成金です。
「働き方改革」が求められる経営環境の中、生産性向上に取り組むことは経営者の責務となっています。
生産性向上は、‘アウトプットを増やす’’インプットを減らす‘の両面からのアプローチが重要です。
それぞれの会社の実情に合わせて、経営と現場が一体となった取組みを進めてはいかがでしょうか。
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