目次

  1. IT導入補助金とは
    1. 通常枠(A・B類型)
    2. 賃上げ目標とは
    3. 低感染リスク型ビジネス枠(C・D類型)
  2. IT導入補助金の対象となる経費
  3. IT導入補助金の申請スケジュールと締め切り
  4. 申請準備から交付決定後までの流れ
    1. 申請準備
    2. 交付申請
    3. 事業実施
    4. 交付決定後
  5. IT導入補助金の審査項目
    1. 事業面からの審査項目
    2. 政策面からの審査項目
  6. 採択率と採択されるポイント
  7. 業務改善につながるツールの例
    1. タスク管理ツール
    2. 勤怠管理システム
    3. 非接触ツール
    4. カスタマーサポートも自動化
    5. 社内コミュニケーションに役立つツール
  8. 悪質業者に注意

 中小企業や小規模事業者、個人事業主などが、働き方改革や賃上げ、インボイス導入などに対応できるよう生産性向上に役立つITツールを導入するときに、最大450万円まで受けられる補助金です。

 さらに、新型コロナウイルス感染症の流⾏が続くなか、ウィズコロナ・ポストコロナの状況に対応したビジネスモデルへの転換に向けて非対面化ツールに活用できる新特別枠「低感染リスク型ビジネス枠」も新設されました。

 IT導入補助金は、生産性の向上に役立つITツールであることが前提ですが、ITツールが担う「業務プロセス」(ソフトウェアの機能により生産性が向上するプロセス)の数と賃上げ目標は必須か加点項目かなどで類型が変わります。

ITツールが担う「業務プロセス」。最後段の汎用プロセスは単独では交付申請できないが、上段の業務プロセスと組み合わせると申請できる
ITツールが担う「業務プロセス」。最後段の汎用プロセスは単独では交付申請できないが、上段の業務プロセスと組み合わせると申請できる(IT導入補助金2021の公募要領暫定版から引用)

 そのため、IT導入補助金2021には、A~Dまでの4類型があり、それぞれ補助上限や補助対象が異なります。公募期間のなかで交付を受けられるのは、4類型のうちのどれか1つのみです。ただし、不採択となった場合に、次回の締め切りに向けて再申請することはできます。

IT導入補助金の類型ごとの特徴(IT導入補助金2021の公募要領暫定版から引用)

 A類型は補助額が30~150万円未満。一方のB類型は、補助額150~450万円以下で、いずれも補助率が2分の1以内となっています。B類型の方が補助金額は高いのですが、必要な業務プロセス数が4以上と、A類型(1以上)よりも多く求められます。賃上げ目標もA類型では加点項目ですが、B類型では必須項目です。

 賃上げ目標とは、次の通りです。事実確認のために賃金台帳などの提出が求められます。

  • 事業計画期間に、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加。被用者保険の適用拡大の対象となる企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加。
  • 事業計画期間に、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする。上記内容を交付申請前に従業員に表明する

 事業計画終了時点で、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加できない場合は補助金の全額返還を求められる可能性があります。また、事業計画中の毎年3月に、事業所内最低賃金の増加目標が達成できていない場合も、補助金の一部または全額の返還の可能性があるので注意が必要です。

 C・D類型は、低感染リスク型ビジネス枠です。いずれも業務プロセスが2以上必要です。C類型は「複数のプロセス間で情報連携しプロセスの非対面化や業務の更なる効率化を可能とするITツール」であることが申請要件です。

 D類型は「テレワーク環境の整備に資するクラウド環境に対応し、複数プロセスの非対面化を可能とするITツールである事」が要件です。とくにC-2類型では、賃上げ目標が必須項目です。

 補助対象経費は、IT導入支援業者が今後、事務局に登録するITツールの導入費用です。まず、IT導入支援事業者に相談し、自社の課題解決に役立つITツールを選ぶことが必要です。

 IT導入支援事業者とツールの登録申請が3月から始まり、第1回の交付申請の受付は、4月7日に始まりました。公募は複数回締め切りを設ける予定で、第1、2回の締め切りのスケジュールの予定は次の通りです。

  • 第1回締め切り……5月14日17時(交付決定日は6月15日)
  • 第2回締め切り……7月中(交付決定日は8月中)

 事業の実施期間は、交付決定から半年程度を想定しています。

 公募要領によると、今後の申請の流れは次の通りです。

 中小企業自らが、情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する「SECURITY ACTION」で、一つ星「★」または二つ星「★★」を宣言する必要があります。

 IT導入補助金2021の公式サイトで、IT導入支援事業者名が公開されたら、「IT導入支援事業者・ITツール検索」を使ってみてください。自社の業種や事業規模、経営課題に沿って、IT導入支援事業者に問い合わせや相談をしてください。

 申請は、電子申請システムで受け付けます。申請者が入力してください。補助金の申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要です。電子申請が増えているため、2021年2月時点で、ID発行まで2週間以上かかります。未取得の方は、早めに登録してください。

 2020年度IT導入補助金で限定的に利用していた、暫定プライムアカウントは4月1日から利用できなくなります。3月中に通常プライムアカウントへの切り替えをしてください。

 IT導入支援事業者との間で話し合い、事業計画を作ります。その後の申請は、以下の流れで行います。

  1. ITツールの選定及び導入するITツールの商談、見積もり等の依頼
  2. 申請マイページ招待・作成
  3. 交付申請の作成・提出

 交付が決まると「申請マイページ」で申請者へ連絡があります。「交付決定通知」を受け取った後に、IT導入支援事業者に報告し、契約や導入を進めてください。交付が決まる前に契約・導入した経費は補助対象となりませんので注意してください。

 事業の完了後、ITツールの発注・契約、納品、支払いしたことが分かる資料を提出する必要があります。事業実績報告が完了し、補助金額が確定すると「申請マイページ」で補助額を確認できるようになります。その内容を確認した後に補助金が交付されます。

 交付決定後の事業実施効果報告は、決められた期限内に「申請マイページ」より必要な情報を入力し、IT導入支援事業者が「IT事業者ポータル」から代理提出することになります。

 IT導入補助金に採択されるために大切なのが審査項目です。詳細な配点は非公開となっていますが、事業面、政策面がポイントになっています。

 A~D類型で共通する審査項目は次の通りです。

  • 自社の状況や課題分析および将来計画に対し、改善すべき業務プロセスが導入するITツールの機能により期待される導入効果とマッチしているか
  • 内部プロセスの高度化、効率化およびデータ連携による社内横断的なデータ共有・分析等を取り入れ、継続的な生産性向上と事業の成長に取り組んでいるか
  • 労働生産性の向上率(計画目標値の審査)

 A・B類型は、自社の経営課題を理解し、経営改善に向けた具体的な問題意識を持っているかも審査されます。

 C・D類型は、新型コロナにおける事業への影響とその対策について効果的なツールが導入されているかも審査されます。

 政策面からの審査項目は加点項目です。A~D類型に共通する項目は次の通りです。

  • 生産性の向上および働き方改革を視野に入れ、国の推進する関連事業に取り組んでいるか
  • 国が推進する「クラウド導入」に取り組んでいるか(D類型は要件のため対象外)
  • インボイス制度の導入に取り組んでいるか

 賃上げ目標を設定し、従業員に公表しているかについては、B、C-2類型では必須、A、C-1、D類型は加点項目です。

 2020年は新型コロナの影響もあり、通常枠と特別枠が設けられました。1~3次公募が進むにつれて申請件数が増えました。その影響で、2020年度の採択率は、60%前後から40%を下回る結果となりました。

 採択されるためには、IT導入補助金2021の公式サイトが公表する公募要領に書かれた審査項目が求める内容に沿って、申請することが大切です。

 業務改善につながるITツールとはどのようなものがあるのでしょうか。事前にイメージしやすいよう、今まで手作業で入力していたデータを自動化したり、新型コロナのため非対面で打ち合わせや接客したりするときに役立つツールの例を紹介します。

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 社内コミュニケーションに役立つツールはこちらの記事で紹介しています。

 事務局によると、IT導入支援事業者登録を受けていない事業者が偽って架空の補助金申請をあっせんするケースがあるといいます。具体的には「補助金が交付される」とうその説明をしたうえで、ソフトウェアの購入費用や補助金申請代行費用などを請求することがあるようです。IT導入補助金2021の公式サイトでは、随時IT導入支援事業者名の公開をします。

 商談で不審な点がある場合は、サイトやコールセンター(ナビダイアル 0570-666-424、 IP電話等からの問い合わせ042-303-9749)でIT導入支援事業者登録の有無を確認してください。