財務と法務の相談体制を整備へ 司法書士と税理士が事業承継でタッグ
日本司法書士会連合会と日本税理士会連合会は2021年3月末、中小企業や個人事業主の事業承継を支援するための連携協定を結びました。司法書士と税理士が勉強会の開催や、協力スキームの構築などで全国的に連携を深め、事業承継を考える企業が、財務と法務の悩みを相談しやすい体制を整える狙いです。
日本司法書士会連合会と日本税理士会連合会は2021年3月末、中小企業や個人事業主の事業承継を支援するための連携協定を結びました。司法書士と税理士が勉強会の開催や、協力スキームの構築などで全国的に連携を深め、事業承継を考える企業が、財務と法務の悩みを相談しやすい体制を整える狙いです。
日本司法書士会連合会は全国約2万3千人の会員を抱え、定款や役員、土地建物の変更などの事務手続きや財産管理、取締役会、株主総会対策のサポートなど、事業承継に関する様々な業務を扱っています。日本税理士会連合会の会員数は全国約7万9千人で、事業承継税制の活用や、相続税・贈与税の処理など、多岐にわたって事業承継をサポートしています。
日本司法書士会連合会の森中勇雄副会長は「事業承継の手続きは多岐にわたります。中小、零細企業は法律や税務の専門知識がなく、どこに何を相談していいか分からないケースも少なくありません。中小企業庁は事業承継ネットワークの仕組みを展開しようとしていますが、なじみが薄いのが現状です」と話します。
今まで、司法書士と税理士は個々に連携してきました。しかし、確立したモデルはなかったため、2年前から全国組織同士の連携を模索し、今回、協定を結ぶことになりました。森中副会長は「司法書士と税理士が漏れの無い対応を取ることで、経営者の相談・依頼先として周知され、専門家同士の連携で安心感が得られれば、円滑な事業承継の促進につながります」と話します。
協定書には、両団体による「研修会と勉強会の実施」が盛り込まれました。具体的な内容は今後詰めますが、日本司法書士会連合の事務局は「今回の連携で、事業承継に関する司法書士と税理士の研修や勉強を、より強化していきたい」としています。日本税理士会連合会では、全国の会員に配信しているオンライン研修動画に、司法書士による講義もメニューに加えて、内容の充実を図っていくとしています。
このほか、協定書では「中小企業が支援を必要とする場合、司法書士と税理士が互いに紹介し合うスキームを構築する」と定めました。日本税理士会連合会では2018年から、「担い手探しナビ」という税理士専用サイトを設け、事業を渡す側と受け継ぐ側とのマッチングを図っています。現在の成約は12件ですが、今後は司法書士との連携を深めて、サイトの充実を目指す方針です。
今回の連携は、事業者にどんなメリットがあるでしょうか。日本司法書士会連合会の担当者は「一般の事業者に、税理士と司法書士が密であることは知られていません。事業承継の早い段階からの連携で、細かな手続きの見落としを防ぐことができます」としています。
日本税理士会連合会の担当者も「事業承継では、株主名簿の整理が大きな課題になりますが、税理士は法律の部分は手が出せません。今回の協定で、税理士と司法書士の連携を深めて、円滑な事業承継を進めたい」と強調しています。
具体的な連携の広がりは、これからですが、両団体のトップは期待を寄せています。
日本司法書士会連合会の今川嘉典会長は「事業承継に関する司法書士の取り組みは少し弱かった。これからは連携を深めて、中小企業支援に一層役立ちたい」、日本税理士会連合会の神津信一会長は「事業承継には最低5年かかると言われ、経営者には必要性の認識、経営環境の見える化、事業の磨き上げが必要です。承継前からの支援体制が必要となる中で、税理士と司法書士の全国組織が連携できたことはうれしく思います」と話しました。
おすすめのニュース、取材余話、イベントの優先案内など「ツギノジダイ」を一層お楽しみいただける情報を定期的に配信しています。メルマガを購読したい方は、会員登録をお願いいたします。
朝日インタラクティブが運営する「ツギノジダイ」は、中小企業の経営者や後継者、後を継ごうか迷っている人たちに寄り添うメディアです。さまざまな事業承継の選択肢や必要な基礎知識を紹介します。
さらに会社を継いだ経営者のインタビューや売り上げアップ、経営改革に役立つ事例など、次の時代を勝ち抜くヒントをお届けします。企業が今ある理由は、顧客に選ばれて続けてきたからです。刻々と変化する経営環境に柔軟に対応し、それぞれの強みを生かせば、さらに成長できます。
ツギノジダイは後継者不足という社会課題の解決に向けて、みなさまと一緒に考えていきます。