kintoneでワークフロー管理 プロセス管理から条件分岐まで解説
kintone(キントーン)でワークフローを行うためには、プロセス管理という機能を利用します。この記事で、プロセス管理の基本を紹介した上で、ワークフロー管理を行うために必要な準備、手順、業務改善につなげるための考え方をご紹介します。
kintone(キントーン)でワークフローを行うためには、プロセス管理という機能を利用します。この記事で、プロセス管理の基本を紹介した上で、ワークフロー管理を行うために必要な準備、手順、業務改善につなげるための考え方をご紹介します。
目次
kintoneの機能を活用すると、さまざまな業務を円滑に回すための業務システム(アプリ)をノーコード(プログラム言語を書かなくてもシステム構築が行える)で作ることができます。
この記事では、kintoneが使われる業務の中でもリクエストの非常に多い、ワークフロー管理について詳しく説明します。
ワークフローと聞いて想像するのはどのような業務でしょうか?通常多くの人が想像するのは、〇〇申請などの、上長の承認を必要とする業務でしょうか。
会社の中で行われている業務を分解して考えると、ほとんどすべての業務に始まりと終わりがあることがわかります。
複数の部門間をまたいで流れていく業務においては、各段階で部門内での確認・承認が行われていたりしています。
みなさんの会社では、このような業務はどのように運用されていますか?紙に印刷された帳票を回覧して、各部門長のハンコを並べていくというような運用がなされているのではありませんか?
kintoneのようなクラウド上のワークフローシステムを使うと、紙を見るために出社したり、紙であるがゆえに回覧に時間がかかるといった、これまでの制約を取り払うことが可能です。
道具(システム)が変わるというタイミングは、これまで当たり前のように行っていた業務のやり方を根本的に見直す、大きなチャンスとなります。
ワークフローをkintoneで実現させるためには、「プロセス管理」という機能を利用します。まずはプロセス管理という機能のイメージをざっくりと理解してみましょう。
kintoneアプリのレコードという単位が、1つの申請案件ということになります。
プロセス管理の機能は、このレコード単位で、そのレコードが今どのような状態にあるのか(ステータス)をあらかじめ定義することが必要です。
また、前のステータスから後のステータスへの移行パターンや条件もあらかじめ定義しておきます。そして「承認ボタン」等のアクションを起こすことで、ステータスを進めていくという使い方をします。
プロセス管理の基礎用語をまとめておきます。
それでは、kintoneでワークフロー管理を行う手順について見ていきましょう。
ワークフロー管理を行う上で大切なのは、事前準備です。具体的には、以下のことを行います。
順番に詳しくご紹介します。
まずは業務の流れを整理します。今回は次のようなシンプルな例で説明しましょう。
①出張後に、出張内容および旅費明細を記載した申請書を作成し、上司に提出する。
②上司は内容を確認後、承認を行う。
③承認されたら、経理担当に転送され、経費精算処理が行われる。
kintoneアプリで作る範囲
・担当者が作成する申請書
・上司による承認
これを元に業務フローを作成します。ポイントは「工程の記載単位」です。1つの箱をどのような単位で記載するかということです。次の3つを意識しましょう。
業務を整理する際に作成する業務フローの表記方法は、さまざまな手法があります。どの手法でもいいと思いますが、以下の点を満たすような書き方を心がけましょう。
今回の例で作成した業務フローです。縦軸で担当者を分割しています。横軸は左から右に時系列を表しています。
業務の開始と終了を丸で表しています。起票という箱が、申請書の内容を作成する業務、承認は上司の承認作業を表しています。申請書の提出は、起票から承認に繋がった矢印です。
今回使用したプロセス図の記法は、BPMN(Business Process Model and Notation)と呼ばれるものです。詳しく知りたい人は、一般社団法人 BPMコンソーシアムの「BPMNとは」を参考にしてください。
次に、そのレコードの状態が今どういう状態であるのか、を表す「ステータス」を定義します。今回の業務フローはシンプルですが、次の3つのステータスに切り分けることができます。
作成した業務フローの中に、緑枠でステータスの切り分けを表示しています。この業務の開始は新しく申請書を作り始めるところなので、ステータス:未処理に含めています。
以上でプロセス管理設定に必要な情報は出揃ったので、次はkintoneを設定するための情報を整理します。
具体的には以下の表を埋める形で整理していきます。表の1行が1つのステータス移行を表しています。
現ステータス | 作業者 | 条件 | アクション | 次のステータス | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 未処理 | 担当者 | - | 申請する | 承認中 |
2 | 承認中 | 承認者 | - | 承認する | 完了 |
この表は以下の内容を表しています。
ステータスやアクション(ボタンの表示名)は、画面に表示されて利用者がこれを見て判断するものです。
なるべく理解しやすい名称にするのが、使ってもらえるアプリを作るための1つのコツとなります。
準備ができたら、kintoneを操作して設定を行います。具体的な手順は、以下のとおりです。
各フェーズの詳しいやり方や注意点をご紹介します。
下図のアプリは、kintoneアプリストアから無料で作成できるサンプルアプリとなります。
上部にはこの申請を承認する上司を設定するための「上長」フィールドが用意されています。出張旅費申請は、多くの場合、出張に行った担当者の直上の上司承認となる場合が多いため、個別に承認者を設定できるような作りになっています。
次にアプリの設定画面を開き、プロセス管理を選択し、設定を進めていきます。
アプリの設定画面は大きく4つのタブに分かれていて、一番右の「設定」タブにプロセス管理の設定を行うメニューがあります。
プロセス管理の設定画面では、まず「プロセス管理を有効にする」チェックボックスにチェックを入れて、機能を有効化します。そして、先ほど整理した「ステータス」を定義していきます。
ステータスの数は入力ボックス右側のプラスマイナスボタンで増減できます。今回は、未処理、承認中、完了の3つのステータスを入力します。
次に、プロセスの設定をします。先ほど設定内容を整理した表と見比べてみてください。プロセスの設定画面と同じ並びになっていることがわかります。
kintoneに慣れてくると、いきなりこの画面で設定を進めていけるようになりますが、この画面だけだと設定内容の全体が把握しづらいため、今回のような表で整理することをおすすめします。
複数人でミーティングをしながら検討を進めるときにも、ホワイトボードや画面上で整理した表を見ながらディスカッションすることで、共通認識を持ちやすくすることができます。
kintoneでワークフローの設定が終わったら、テスト運用を行います。今回のように申請者と承認者が違う場合は、テストも1人で行うだけではなく、複数人で実施するといいでしょう。
他にも、ダミーアカウントを設定し、自分だけで複数のユーザーになったつもりでテストを行う方法もあります。
動作テストの実施方法
実際の業務では、今見てきたようなシンプルなワークフローばかりではないでしょう。実務では、より複雑な管理が求められることもしばしばあります。
そこで、よくあるニーズに対する必要な手順もご紹介します。ご紹介するのは、以下のケースです。
kintoneのプロセス管理機能では、複雑な業務プロセスを表現することも可能です。ここでは2段階の承認プロセスを例に、考え方を説明します。
プロセス管理の設定内容は以下のようになります。
現ステータス | 作業者 | 条件 | アクション | 次のステータス | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 未処理 | 担当者 | - | 申請する | 所属長確認中 |
2 | 所属長確認中 | 所属長 | - | 確認完了 | 承認中 |
3 | 承認中 | 承認者 | ー | 承認する | 完了 |
レコードの内容による条件分岐も行うことができます。
例えば、「精算金額が10万円以上であれば部長承認が必要」「10万円未満であれば所属長承認で完了とする」というような、レコードに登録されたデータの条件によってプロセスを分岐させることができます。
具体的には、プロセス設定のアクションの実行条件を設定することで、アクションボタンを表示させる条件をつけることができ、これによって業務プロセスの分岐を表現できます。
現ステータス | 作業者 | 条件 | アクション | 次のステータス | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 未処理 | 担当者 | 金額≧1万円 | 申請する | 所属長確認中 |
2 | 金額<1万円 | 申請する | 所属長承認中 | ||
3 | 所属長確認中 | 所属長 | - | 確認完了 | 承認中 |
4 | 所属長承認中 | 所属長 | ー | 承認する | 完了 |
5 | 部長承認中 | 部長 | ー | 承認する | 完了 |
レコードの状態(ステータス)によってアクセス権を変更でき、それによって承認された内容の変更ができないようにすることも可能です。
承認されたものかどうかは、ステータスの値で判定することができます。
レコードのアクセス権設定で、ステータスが「完了」になったら、全ての人(Everyone)は閲覧のみとします。あわせて編集と削除の権限チェックを外しましょう。
こうすることで承認された内容は、変更も削除もできず、記録として蓄積することが可能になります。
kintoneのプロセス管理では、ステータスが変わって作業者になった人には通知が発信されます。
ただ、実際の業務においては、これから作業を行う担当者以外にも通知で情報共有したい場合もあります。
アプリのレコードにはコメントが付けられるので、そこで個別に宛先をつけたコメントを書いてもいいのですが、いつも決まったタイミングで通知を出したい場合は、あらかじめ設定した条件を満たしたときに通知を発信させるよう設定が可能になっています。
この設定例では、レコードのステータスが「完了」(承認が完了)になったタイミングで、「申請が承認されました!」という内容の通知を、全員(Everyone)に発信するというものです。
実際はEveryoneではなく、具体的な宛先(組織やユーザー、グループ等)を設定することができます。
通知機能を知ると、細かく通知を設定したくなります。しかし、あまり通知を発信しすぎるのも考えものです。
必要なときにはアプリを見に行けば、状況は確認できますので、通知の発信は必要最小限とするべきです。
特に、メール通知を設定している場合は、kintoneからの通知メールが大量に送信されるため、重要な通知を見落としてしまう恐れがあります。
「通知設定は必要最小限で始める」が鉄則です。
kintoneのプロセス管理という機能を使うことで、ワークフロー的な運用が可能であることがわかりました。kintoneは万能選手に見えますね。
しかし基本的なkintoneの仕組みは「データベース」であり、これを活用してさまざまな種類の業務アプリを作れる基盤(プラットフォーム)という、汎用性こそがkintoneの一番の特徴です。
業務を「データの流れ」という面から考えてみましょう。業務は「フロー型」と「ストック型」という2つの特徴的な分類が可能です。
「フロー型」というのは、業務を回して流していくことが目的の業務です。例えば日々の業務上の連絡や、業務の依頼、年休申請など勤務に関する連絡もそうかもしれませんね。
フロー型の業務では、定められた順番に情報をリレーしていくことがメインであり、業務が完了してしまえばおしまいです。終わったデータを蓄積することに、あまり意味はありません。
一方「ストック型」は、業務プロセスを通して、蓄積・保存するデータを作るという性質を持った業務です。例えば顧客管理台帳の作成や、出張報告など、データを蓄積するだけではなく、そのデータを活用して別の業務で利用するという特徴もあります。
kintoneはWebデータベースという性質から、「ストック型」の業務に向いていますが、プロセス管理やコミュニケーション機能を使うことで、「フロー型」の業務もこなすことができます。
汎用的な機能をもつkintoneのプロセス管理は万能ではありません。
あくまでも、アプリのレコードのステータスの変化を定義し、定められたとおりにステータスを移行させる、ということがプロセス管理の基本的な機能です。
ワークフロー専用システムと比較すると、代理申請ができなかったり、申請後の取り戻しもできません。
kintoneのカスタマイズを駆使すれば、むりやりkintoneにこのようなワークフロー機能を実装させることも可能です。
しかし、カスタマイズのやりすぎは、kintoneが本来持っている「業務の改善に合わせてアプリも改善する」という強みを活かせなくなるという面もあります。
kintoneを活用する場合は、kintoneの機能で業務を実現できるように、業務側を見直して工夫することが必要です。
もし複雑なワークフローや、ルールに定められた業務プロセスをどうしても実現できない場合は、ワークフロー(フロー型)は専用システムを使い、データの蓄積・活用(ストック型)をkintoneで行う、という合せ技も選択肢としてはあります。
フロー型の業務プロセスに特化した専用システムとしては、以下のようなものがあります。
コラボフロー(コラボスタイル)
kintoneとの連携も得意。kintone内のマスタを参照したり、承認された結果をkintoneアプリに自動登録が可能。
前述したように、kintoneはさまざまな業務アプリを作成でき、それによって業務改善を図れるのが特徴です。
kintoneで業務改善を目指す上では、業務プロセスの持っている「堅さ」を把握し、それに応じてkintoneの機能を活用するといいでしょう。
適度な「緩さ」を業務システムに持たせることができる。これが kintoneが持っている、他のシステムとは違う大きな特徴だと思います。
最後に、その具体的な方法をご紹介します。
業務プロセスの持っている「堅さ」を、次のような3つのレベルに分類してみましょう。
レベル1では、業務プロセスや手順は、法律や規則によって定められているので、簡単に変更してはいけないという性質があります。監査の対象となったりしますので、そこで取り扱うデータや承認履歴等は、証跡として使えるようきちんと管理する必要があります。
レベル2は、社内ルールで定められた承認プロセスや手続き手順です。先ほど例として紹介した、出張旅費申請もこのレベルです。
レベル3は、会社によっては業務フローやマニュアルも整備されていないことが多い、日常の業務の中で行われる、依頼業務や報告等が該当します。通常これらは口頭やメール等で行われていることが多く、業務フローという見方さえされたことがないことが多いかもしれません。
kintone導入の取り組みの順番としては、レベル2または3から取り組み始めるのがいいと思います。kintoneは機能を知り、アプリ構築のスキルと経験を積むことで、適切なアプリを作れるようになっていきます。
レベル1、2については、プロセス管理を活用したアプリを構築することで、業務のkintone化が達成できます。レベル3については、業務の内容にもよりますが、キッチリとしたアプリを作ることがいいとは言えない領域です。
そこでkintoneらしい活用法として、「スペースの活用」という方法を知っておきたいものです。
特にkintoneを使い始めたばかりの方にとっては、いきなりアプリを操作することは、慣れるまでは難しく、抵抗感を覚える人も多いと思います。
そこで、スペースのスレッドを活用して、業務の連絡や、簡単な報告はスレッドでやってしまうという方法ををおすすめします。
スレッドへの書き込みは、アプリのように項目別ではなく、フリー記述ができますので、気軽に書き込むことができます。
またコメントに「イイね!」機能もついているので、「既読」を表すような使い方や、「同感!」を表すなど、ちょっと緩いコミュニケーションの場としては、かなり使いやすい機能です。
業務システムを考えるとき、どうしても「緩さ」を排除しようとする発想になりがちです。業務をシステム化するということは、システム化によってその業務を固定化する、という一面もあります。
上記のキッチリ度レベルで考えてみると、レベル1については、基本的にはルールや規則の変更がない限り、業務プロセスは固定されます。
ところが、レベル2、レベル3とキッチリ度レベルが下がっていくと、その業務は日々の業務改善の対象となります。
そして、多くの場合業務のボリュームとしては、レベル1<レベル2<レベル3 となります。
レベル2,3の業務を見直し、改善を続けていくことが、企業の体力となる業務生産性を高め、改善を続けるという行動が定着し、文化の醸成にも繋がると考えてもいいでしょう。
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