低糖質食パン生んだ実力派パン屋×ボディビルダー コラボに必要な視点とは
今なお城下町のたたずまいが残る明治維新胎動の地として知られる山口県萩市で、糖尿病でも食べられるパンを作りたい実力派パン屋さんと、現役ボディビルダーの異色のコラボ商品が生まれました。コラボの価値を最大化する3つの視点について商品づくりを支援した萩市ビジネスチャレンジサポートセンター(はぎビズ)から、紹介します。
今なお城下町のたたずまいが残る明治維新胎動の地として知られる山口県萩市で、糖尿病でも食べられるパンを作りたい実力派パン屋さんと、現役ボディビルダーの異色のコラボ商品が生まれました。コラボの価値を最大化する3つの視点について商品づくりを支援した萩市ビジネスチャレンジサポートセンター(はぎビズ)から、紹介します。
萩市民に愛される実力派のパン屋、ブーランジェリー住吉丸の丸岡弘一さん。
店舗前にある大型ホテルが閉館し、高齢者施設に改装するため、高齢の方の来店が増えることを想定し、新商品開発に挑戦したいと、前向きな相談ではぎビズを訪れました。
既存の顧客からも病気による食事制限で大好きなパンを思うように食べることができないという声を聞いていたことから、「糖尿病の方にも喜んでいただけるパンを作りたい」と話していたのが印象的でした。
はぎビズがまず取り組んだのは、ブーランジェリー住吉丸の強みを見つけることでした。ヒアリング中に驚いたのが、日本にフランスパンを広めた「フランスパンの神様」と呼ばれる方に弟子入りした実績のある、技術力の高いパンを作っているということでした。
フランスパンやカヌレ、フランス式のシュトレンなど高い技術力を要するパンはもちろん、地元の方も親しみやすいクリームたっぷりでふわふわの薄皮が特長のクリームパンなど、リピーターも多い実力派パン屋さんだったのです。
改装される高齢者施設に向けて丸岡さんが考案したのが、低糖質の食パンでした。高齢者、病気を気にしている方を対象にしたい、と話を聞くなか、低糖質を気にしているのは病気以外でも、特に美容に気を遣っている人も該当することを思いつきました。
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近年、糖質を抑えた機能性チョコレートなど、罪の意識なく食べることができる、「ギルティフリー市場」が活況であり、病気のための購入より、美しさや健康のための投資の方が、高単価でもご購入いただくことができます。
さらに、丸岡さんのパンは日常のシンプルなパンにこそ技術力が顕著に現れるパンであり、健康に良い美味しい食品を選ぶターゲットともマッチすると感じたため、ターゲットを広げる提案をしました。
美や健康に投資するターゲットは、専門家の意見を参照する傾向が高いため、次にはぎビズが行なったのは体作りの専門家とのマッチングにより付加価値を付けることでした。
すぐに頭に浮かんだのは、同じくご相談者さんである筋トレ専門ジム「マイフィット萩」を経営している木原賢一郎さん。
現役ボディビルダーとして活躍しており、ボディメイクに必要な栄養管理などの豊富な知識を有しているスペシャリストです。早速アポイントを取り事情を話すと、木原さんは快諾。自身が減量するときに萩市内で購入できる食材が少なく困っていたそうです。
こうして約2カ月で開発したのが、従来の食パンの約80%も糖質をカットした、低糖質食パンです。
はぎビズがコラボレーション提案を行う際に意識しているのが、1+1=2ではなく、∞になる連携になっているか?です。具体的には3つのポイントがあります。
木原さんだけでは栄養監修はできてもパンの製造販売はできません。丸岡さんだけではスペシャリストが監修したパンは作れません。お互いがコラボレーションする意味やメリットがあるかを考えます。
木原さんは減量時の経験から、美味しく食事管理をできるような商品を探していました。丸岡さんは専門家と組むことでターゲットニーズにマッチした新商品を作ることができます。コラボレーションにより得られる相乗効果を確認します。
木原さんはボディメイクに必要な栄養学を有していることやボディメイクのスペシャリストであることを、低糖質食パンの開発を通じ認知拡大を行うことができます。丸岡さんは低糖質食パンという、今までのラインアップにない機能的な新商品を開発することができます。
異業種コラボという話題性や、北浦地区で初めてとなる低糖質パンという新規性もあったことから、テレビや新聞などの各種メディア掲載が相次いだことで連日完売。県外など遠方からも多くの方が来店したそうです。
遠方から来店された場合、低糖質パン以外のパンも購入されていくことで、ブーランジェリー住吉丸さんの美味しく技術力のあるパンのファンになり、新規顧客獲得にもつながりました。
木原さんも、高い知識量やジムのPRになるとともに、ジムに訪れる人も喜んで購入しているそうです。今後はこの商品をフックとして、高齢者施設の食堂や、ヘルスケア志向のカフェなど、業務用パンとしての販路開拓も検討しています。
自社にない知識やノウハウについては他社と連携を行うことで、付加価値や新しい価値の創造に結びつけ、ビジネスチャンスを拡げることが出来ます。
そのためには双方にどのような効果のある連携なのかをしっかりと見極めることが大切ですが、意外と地域の中で横の連携を行う場は少ないのが現状です。
はぎビズでは双方にとって意味のある連携を行うことで横のつながりを作り、ひいてはそれが面になることで地域全体の活性化となる支援も行っていきたいと考えています。
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