技能実習生の監理団体とは 選び方・チェック方法・トラブル対処を解説
監理団体とは、外国人技能実習生を受け入れるときに関わる団体です。技能実習生の採用時に申し込む監理団体は日本全国に3000以上もあります。そこで、自社のニーズに合った監理団体の探し方や優良な監理団体の見極め方、トラブル対処法を外国人雇用の専門家が紹介します。
監理団体とは、外国人技能実習生を受け入れるときに関わる団体です。技能実習生の採用時に申し込む監理団体は日本全国に3000以上もあります。そこで、自社のニーズに合った監理団体の探し方や優良な監理団体の見極め方、トラブル対処法を外国人雇用の専門家が紹介します。
目次
監理団体とは、「外国人技能実習機構」と呼ばれる法務省と厚生労働省が所管する認可法人に「監理団体許可」を申請し、許可を得た団体のことを指します。
外国人技能実習生を受け入れてみようと考えたとき、ほとんどの場合、まず最初に自社のニーズに合った外国人技能実習生を紹介してくれる監理団体を探すことから始まります。
そのため、信頼できて自社と相性の良い監理団体を見つけることは、技能実習生の受け入れを成功に導く上で非常に重要です。
まずは、監理団体について詳しく紹介します。
監理団体の役割と業務は、法務省と厚生労働省が共に管理する技能実習制度の「技能実習法第五条」の中で、監理団体等の責務として次のように定められています。
監理団体は、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護について重要な役割を果たすものであることを自覚し、実習監理の責任を適切に果たすとともに、国及び地方公共団体が講ずる施策に協力しなければならない。
外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律
監理団体の主な役割としては、以下のようなものがあります。
監理団体の主な役割 | |
---|---|
送出機関 | 技能実習制度の趣旨を理解している送出機関と適切な契約を結び、技能実習生の候補の選定が適正に行われていることを確認する |
受け入れ企業 | 技能実習制度の趣旨を適切に伝え、技能実習生の候補要件をヒアリングし送出機関に明確に伝える。候補者との雇用契約の締結手続きを支援し、在留資格認定証明書交付申請等の手続きをする。実習計画の作成を支援し、実習開始後は各種報告や履行義務が守られるよう監査と支援をする |
技能実習生 | 母国語による通報・相談窓口の整備、実習先変更支援体制の構築、一次宿泊先の提供、技能検定等の受験手続き支援などをする |
外国人技能実習機構 | 監理団体の許可申監理団体になる条件請を行い、実習開始後は所定の報告手続きをする |
地方入国管理局 | 在留資格認定を受けた技能実習生に関する監査結果にもとづき、適宜必要な報告を行う |
監理団体の許可を受けるためには、非営利団体の事業協同組合等(商工会議所、中小企業団体、農業・漁業協同組合など)として申請を行い、「外国人技能実習機構」の予備審査を受ける必要があります。
同機構が行う審査は、主に「許可基準に適合していること」および「欠格事由に該当しないこと」の2つのカテゴリがあり、以下のような項目が審査の対象となります。
まずは許可基準です。
つぎに欠格事由です。
詳しくは、法務省出入国在留管理庁・厚生労働省の資料「外国人技能実習制度について」(PDF方式:3.92MB)や「技能実習制度運用要領」(PDF方式:14.4MB)を参照してください。
続いて、監理団体を探す主な方法をご紹介します。
外国人技能実習機構の「監理団体の検索」ページで、許可監理団体(一般)と許可監理団体(特定)それぞれの団体の情報を検索できます。
許可監理団体(一般)とは、「技能実習1号」、「技能実習2号」、「技能実習3号」の3種類すべての技能実習事業を監理できる監理団体を指します。
一方、許可監理団体(特定)は「技能実習1号」と「技能実習2号」の2種類の事業のみを監理することができます。
したがって、自社の技能実習計画の中で「技能実習3号」の内容を実施する予定または希望がある場合は、一般監理事業を監理できる許可を得ている団体を探す必要があります。
なお、「外国人技能実習機構」の情報によると、登録監理団体は、2021年5月現在、一般と特定をあわせて約3000団体あります。
外国人技能実習生の問題を専門に扱っている弁護士事務所や行政書士事務所に相談して、信頼できる監理団体を紹介してもらうのも一つの方法です。
同時に、問題のある監理団体や注意すべき監理団体についてもアドバイスをもらえるかもしれません。
もし知り合いの企業や知人で技能実習生を受け入れた経験がある人がいれば、その時の監理団体の対応がどうだったか、推薦したいと思うレベルの対応だったかどうかを聞いておくのは参考になるでしょう。
ただし、その会社の対象業種や受け入れた実習生の送り出し国が、自社の希望とは異なる場合も十分あり得ます。
たとえ知り合いの企業の印象が良かった監理団体であっても、必ずしも自社のニーズに合った実習生を紹介できるとは限りません。
知り合いの企業や知人からの紹介を受ける場合も、聞いた情報を鵜呑みにせずしっかり監理体制を確認しましょう。
外国人技能実習生の受け入れでは、ほとんどの場合において監理団体と関わるため、監理団体選びが重要です。
外国人技能実習機構の検索ページや知人の紹介などを元に監理団体の候補が挙がったら、以下のようなポイントをチェックしてみてください。
初めてのお付き合いとなる監理団体を選ぶ場合は特に、お互いに直接訪問し合える距離に所在地がある監理団体を対象に、具体的な質問を複数用意してメールで送って反応の様子と回答の内容を確認するのが良いでしょう。
例えば、その監理団体のホームページに掲載されている情報にはまず目を通して理解した上で、その内容について、さらに掘り下げて具体的な質問をしてみることをお薦めします。具体的な質問の例を示します。
上記のような質問に対して、うわべだけの耳障りの良い回答ではなく、日々の課題とそれに対する取り組みを含めて実態を正直に伝えてくれるかどうかをしっかり見極めることが大切です。
メールの返信から、ビジネス上のパートナーとして今後気持ちよくコミュニケーションが取れる相手かどうか、回答の内容だけでなくマナーの点もしっかりチェックしましょう。
メールの問い合わせに対して、ビジネスマナーをわきまえた誠意ある回答が返ってきた場合でも、決してそれだけで決めてしまわないようにしましょう。
直接訪問し、監理団体としての業務の様子を見せてもらう機会を設定してもらえるように依頼してみてください。
もしその時点で実習を受けている技能実習生たちがいる場合は、実習の様子を見学させてもらい、できれば実習生に少しだけでも話を聞かせてもらえる機会を用意してもらいましょう。
また、公益財団法人国際人材協力機構(JITCO)が紹介している「技能実習生の活動情報」ページに掲載された監理団体を実際に訪問し、比較対象とするのも有効かもしれません。
監理団体の業務は多岐にわたり責任範囲も広く、一人ひとりの技能実習生に対して真摯にサポートを提供している監理団体の業務は決して楽ではないはずです。
また、日本語での日常会話もままならないような技能実習生が多い中で、様々なトラブルが発生することは容易に想像できます。
したがって、「うちのサポートはしっかりしているので一切問題は発生していないので心配ない。すべてうちにおまかせください」のような監理団体は、怪しいと思った方が良いでしょう。
そのような、すべてがうまくいっている(あるいは、うまくいく)などと簡単に説明する監理団体は、本当の状態を隠している可能性があるからです。
むしろ、具体的にどのような問題や課題が起こりうるのかをきちんと説明してくれて、その監理団体が過去にどのような課題に直面してどのように対処したのかをありのまま話してくれる場合は、信頼できる可能性が高いと思われます。
また、現状の体制で可能な対応とそうでない対応をはっきり伝えてくれ、ポジティブなことばかりではなくネガティブな部分も正直に開示できる監理団体は、信頼に足るパートナーとなる可能性があるでしょう。
どんなに信頼できる監理団体を選んで契約をしたと思っても、トラブルが起こらない保証はありません。
最後に、トラブルを未然に防ぐポイントや、トラブルが起きたときにしておきたい点を挙げておきます。
技能実習制度では、監理団体、受け入れ企業、技能実習生、送り出し機関、関係省庁の窓口など、複数のプレイヤーが絡んで手続きが発生します。監理団体に説明されてもすぐには理解できないことも多いでしょう。
監理団体との交渉の内容や合意事項は、些細なことでも必ず書面で残しておくことで、自分の立場を守ることができる場合があります。
注意深く手続きなどを進めていても、監理団体との予期せぬトラブルに見舞われることもあるかもしれません。
例えば、技能実習の在留資格申請でパスポートや申請書類の内容に偽造や不備が発覚し、予定していた人数の実習生を確保できなくなったり、技能実習生の生活のサポート体制が契約通り履行されないなどの事態が発生する場合もあります。
また、これまではきちんとした体制で実習計画を実行している監理団体であっても、例えば新型コロナウイルスや送り出し国との関係や政治情勢など、通常では予想しがたい要因によって、急に監理団体の対応に影響が出てしまう可能性もあります。
そのような時のために、普段から何かあったら相談できる、外国人雇用の実務に詳しい弁護士や特定行政書士を見つけておくことをお薦めします。
技能実習生の受け入れを考える際には、信頼できる監理団体を見つけることが成功のカギとなります。
監理団体に手続きや支援をお任せにしてしまうのではなく、対等な立場でお互いが良きビジネスパートナーとなるような関係を築ける監理団体を探しましょう。
結果的には、それが外国人技能実習生が日本に来てよかったと思う結果につながり、自社で長く活躍してくれることになるからです。
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