事業再構築補助金の採択、なぜ第1回公募は「8割落第しそうな勢い」なのか
予算1兆1485億円の「事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)」の第1回公募の採択結果が2021年6月16~18日に順次発表されました。しかし、5月末の行政事業レビューで、中小企業庁の担当部長が「厳しく見ると8割落第しそうな勢い」と発言しました。申請内容の何が甘かったのでしょうか。第3回公募の申請以降の方針とあわせて紹介します。(6月18日更新)
予算1兆1485億円の「事業再構築補助金(中小企業等事業再構築促進事業)」の第1回公募の採択結果が2021年6月16~18日に順次発表されました。しかし、5月末の行政事業レビューで、中小企業庁の担当部長が「厳しく見ると8割落第しそうな勢い」と発言しました。申請内容の何が甘かったのでしょうか。第3回公募の申請以降の方針とあわせて紹介します。(6月18日更新)
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政府の行革推進本部事務局の公式サイトによると、行政事業レビューとは、各省庁が実施している政策の「自己点検」です。その過程で、外部の専門家と議論する様子がオンライン上で公開されています。今回、行政事業レビューの対象の一つが、事業再構築補助金でした。
事業再構築補助金とは、予算規模が1兆1485億円に上る2020年度第3次補正予算で注目されている事業の一つです。ウィズコロナ・ポストコロナの時代の経済社会の変化に対応するために、新分野展開、業態転換、事業・業種転換、事業再編などを通じて事業拡大などしようとする中小企業などに向けた補助金です。
新型コロナの影響で企業の業績にも大きな影響が出るなか、中小企業庁の担当部長は「給付金の財政出動の期待値が高い一方で、法人に対する給付金というのは、財政施策上から見るとほぼ禁じ手のような施策ですが、それでもなお求められていたという認識です」と振り返りました。
そのうえで「できるだけしっかりとした政策目的を確認できる補助金という制度にまずシフトするとということを、財政当局と調整して生まれたのが事業再構築補助金です」と説明しました。
事業再構築補助金の事務局サイトによると、第1回公募の採択数は次の通りです。採択率は、緊急事態宣言特別枠で約55%、通常枠で約30%でした。
採択後、補助事業実施期間が12~14カ月あり、目標の達成状況などの報告が毎年度求められるフォローアップ期間が5年間あります。第2回の公募の申請期間は5月20日~7月2日18時です。今後に向けて、申請書のなかでとくに注意したいポイントと対策を紹介します。
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それでは、具体的にどの部分が水準に達していなかったのでしょうか。中小企業庁の担当部長は次のように説明します。
ただ正直に申し上げますと、私も数百にわたって第1回公募の申請書を読ませていただきましたが、共通した特徴がありまして、顧客規模の想定の積算根拠が甘い。なぜそれだけのお客さんが取れるんですか?というところについては、厳しく見ると8割落第しそうな勢いであります。
私どもも勉強させていただきましたのが、経営指導するべき立場の人がついてもなおマーケティングに必要な基礎的情報が取れないということなのかなと。
ちょっとした工夫をすれば、それぞれの市場規模やラフなマーケティングの算定根拠って出しようがあると思うのですが、これだけそろいもそろって申請書の顧客規模の見積もりが甘いことをみると、マーケティングについての基礎的な情報やノウハウが日本中どれだけないのかということを実感しています。
令和3年度行政事業レビュ公開プロセス
事業再構築補助金の公募要領では、次のように求めています。
「本事業の成果が寄与すると想定している具体的なユーザー、マーケット及び市場規模等について、その成果の価格的・性能的な優位性・収益性や課題やリスクとその解決方法などを記載してください」
経済産業省は、市場動向を把握できる統計分析ツール「グラレスタ」を公開しています。鉱工業品約1600品目について、簡易な操作で生産動向等をグラフ化することができます。必要に応じて、自社の事業計画作成にご活用ください。
今回の中小企業庁の説明であらためてはっきりしたのは、事業再構築補助金に採択されるためには、申請書に再構築した事業が実現可能性のあることを数字で説明する必要があるということです。中小企業庁の担当部長の説明です。
審査員の先生方にはちゃんと事業化できそうな話になってるかどうかというところはよく見てくださいとお願いしています。再構築性がきちっとあるかどうかというところ、事業として実現可能で、夢物語ではないというところは、厳しく見ていただきます。
逆に言えば再構築というような状況でない企業の方のご提案は採択されないようになるように、引き続き審査の先生にもお願いをしていければと思っています。
令和3年度行政事業レビュ公開プロセス
行政事業レビューの専門家との議論では、合成の誤謬(個々の視点では合理的な行動でも、経済全体では好ましくない結果が生じてしまうこと)への懸念も出ました。そのため、第3回公募以降の事業再構築指針では、一部改訂される可能性が示されました。
中小企業庁の担当部長は、たとえ話を使いつつ、次のように説明しています。
今まで焼き肉屋していたが、周辺にラーメン店が少ないのでラーメン店にしますと前提に経営計画を書いている方がいます。でも同じ地域で4軒の焼き肉屋がおなじ事をすればどうするのかについて、調整しきれていないのが現状です。
同じ地域で共同申請にする必要はありませんが、束ねて考えてくださいと。たとえば同じデリバリーの仕組みを飲食店で共同して導入するなどこれを機会にいろんな業種と束ねて集団業転にすると加点になりますよと申し上げています。
3次申請以降は指針のなかに追加していけないか。どういう束ねを期待しているか、どういう事業転換をお勧めするか指針に追加できないかヒアリングしているところです。
令和3年度行政事業レビュ公開プロセス
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