目次

  1. 事業再構築補助金の事務局が公開した動画
  2. 事業再構築補助金とは
  3. 事業計画とは
  4. 事業計画の作成手順
    1. 今までどういう事業をやっていたのか、新事業で何をするのか
    2. 顧客規模はどれぐらいか
    3. どんな製品・サービスを展開し、なぜあなたの技術で提供できるのか
  5. 中小企業庁が紹介する事業計画の事例
    1. 補助金審査で加点ポイント「束ねた事業計画がほしい」

 事業再構築補助金事務局が2021年7月5日に「事業計画作成のアドバイス」と題した動画をYoutube上で公開しました。

 事業再構築補助金とは、予算規模が1兆1485億円に上る2020年度第3次補正予算で注目された事業の一つです。変化の激しいコロナ禍の経済社会に対応しようと、新規事業に取り組む中小企業などに向けた補助金です。2021年度に通常枠では5回程度予定されています。

 すでに第1回の採択結果は公表され、第2回の申請受付も終了しました。第3回の公募は7月下旬から始まる予定です。

 事業計画とは、事業継続計画の申請要件の一つで、認定経営革新等支援機関と作ることが求められています。具体的には、事業の再構築により事業終了後3~5年で、付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上、または従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上の増加を見込むことを求められています。

 しかし、第1回の公募の状況をもとに、中小企業庁から「顧客規模の想定の積算根拠が甘い。なぜそれだけのお客さんが取れるんですか?というところについては、厳しく見ると8割落第しそうな勢い」という意見が出ていました。

 そこで、補助金事務局は今後申請する事業者に向けて事業計画づくりをフォローアップする動画を作成しました。インタビュー動画で、村上前部長は、事業計画の中身について「たくさん書かなくていいっす」と話した上で、次の要素を端的に書いてほしいと求めました。

  • 今までどういう事業をやっていたのか、新事業で何をするのか
  • 顧客規模はどれぐらいか
  • どんな製品・サービスを展開し、なぜあなたの技術で提供できるのか

 たとえば、コロナ禍で売り上げの下がった飲食業を例に「まずデリバリー、セントラルキッチンなどたどり付きたい理想像を考えましょう。そんな理想像と現実の差が、(新事業の)顧客規模です。その差を埋めるのが、新たな製品・サービスと(自社の)たしかな技術です。これを言葉で書くのが事業計画」と説明しました。

 それぞれの項目についてポイントを整理します。

 補助金の採択を決める審査員は、今までどういう事業をやっていて、新事業で何をするのか事業計画のなかからキーワードを探している」として、端的にまとめることを求めました。

 逆に、今までの事業について、会社の歴史や現状の苦しい状況について延々と書いていると「下手すると(キーワードを)読み落としちゃう」と話しました。

 インタビュー動画で、村上前部長が強調したのが、顧客規模の推計でした。
顧客規模が必要な理由として「新事業で増える顧客に見合う投資額に押さえ込まないといけない」と話しました。採択されないNG事例として3000万円を投資し、新事業で300万円の売り上げしか上がらない事業計画を挙げました。

 しかし、顧客規模がわからないため、投資対効果が測れない事業計画が8割程度あったといいます。顧客規模の推定方法がわからないという意見が多かったというものの「これを超えていかないと事業再構築にならない」と答えています。

 最後に「従来と新事業の違いと、なぜそれを選んだのか」を説明した上で、大切なことは、新事業で挑戦する新製品や新サービスは、自社にどんな技術があるからできるのか、それは自社の強みを生かしているのかを整理できていることが必要だと説明しています。

 事業計画の事例として、村上前部長は新聞配送業を紹介しました。

 新聞配達事業は、コロナ禍で折り込みチラシが激減し、一時保管の中間配送施設の稼働率が落ちていました。そこで、その施設をデリバリーの拠点として活用してもらうという申請内容を紹介しました。

 なぜ、中間配送施設が地元密着の配送に役立つのか、という点について2つの強みを挙げていたといいます。

  1. 配達人が地域に詳しく物を届けきるノウハウと知見がある
  2. 中規模、小規模の倉庫がちょうどいい

 さらに、次で紹介するような商店街の複数の飲食店と協力してデリバリー網を構築できる可能性もあるとしています。

 第3回公募以降の審査について村上前部長は「束ねた事業計画がほしい」と考えていることを明らかにし、審査の上で加点要素になると説明しました。

 束ねた事業計画とは、工場同士が連携してEV事業へ新たに進出することや、商店街の飲食店が協力してデリバリー網を構築することなどを例に挙げ「コロナで様々な業種業態が同時に困っているいまがチャンス」と話しました。

 注意点として、事業計画を束ねるときに1つの申請として応募する必要はないことを挙げました。つまり、3事業者が最大6000万円の補助事業をそれぞれ申請すると、合計で最大1.8億円の事業ができることになるためです。

 申請書類には、どの事業者と共同でやるかを記入する欄があるので、その申請欄で加点の対象を見極めるといいます。

 今後、申請をサポートしている認定支援機関にもこうした事業計画を束ねるよう求めていく予定です。