目次

  1. 社会インフラの維持に貢献
  2. プロボクサーと二足のわらじに
  3. 公共事業にシフトし売り上げ増加
  4. 受け継がれる先代のポリシー
  5. 塗装業の地位向上を目指す

 拓磨工研は、拓馬さんの父で配管工だった純夫さん(72)が1992年に設立しました。古くなった橋などの古い塗装をはがして、新たに塗り直す工事が主な事業です。

 「現在、全国で約70万の橋があり、そのうちの4割が鉄でできていますが、メンテナンスが追い付いていません。長持ちさせるには、古い塗装をはがしてさびをとり、腐食を防ぐ必要があります。我々は主にサンドブラストという工法で、細かな砂を高圧で噴射し、劣化した塗膜とさびをはがします。インフラの安全を維持するために必要不可欠な事業です」

 建設から半世紀がたつ首都高をはじめ、全国の高速道路や橋が主な現場です。北海道から沖縄まで出張し、年間20~30件の工事を手がけます。数百メートル規模の大型の橋だと、作業が1年以上に及ぶことも。拓磨工研の現在の従業員は45人、協力会社を含めると約100人で、必要な人員を全国に送れる動員力が強みのひとつだといいます。

砂を吹き付けて塗装をはがすサンドブラスト工法(拓磨工研提供)

 拓磨工研という社名は、拓馬さんの「拓」と素地を磨くの「磨」からつけられました。拓馬さんは、父が自分の名前を社名につけたことが素直にうれしく、高校卒業後に迷いなく入社しました。

 当時の拓馬さんはプロボクサーを目指しており、20歳でプロテストに合格。試合が組まれると毎朝5時半に起きてランニング、日中は現場で仕事をこなし、夜はジムで練習という日々を送っていました。

 過酷な環境の中、ライト級のボクサーとしてより上を目指したい気持ちもありましたが、仕事の時間を削ることはありませんでした。「仕事はつねに1番で、手を抜きたくなかった。この会社を継ぐのは自分なんだという責任感が、どうしてもあったんだと思います」

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